第77話
「……ぼ、僕はそのダックス君がTVを楽しんでたんだと思いたいな〜。そうでなきゃ、霊的な何かの仕業だって確定しちゃうし」
「犬ってTV観て内容理解できるのかな?」
犬がTVを楽しんでいる光景ってのも中々珍しい気もするが、実際に洋画を好んで観てたのだからかなり人間に近しい犬だ。
チャンネルポチって観たい番組をセレクトするくらいだし、賢いとかの次元を超えてる。
ニュース番組は退屈だと思ってたみたいだけど、サメとか恐竜が主役の映画は意外と好きらしい。
「どうだろうな……? その犬によるんじゃないか」
歩美の疑問に曖昧に答えておく。
「少なくともダックスは理解できてたみたいだぞ」とは軽がるしく言えないしな。
「うちのダックスはあたしと一緒によく観てたよ。興味深そうにじぃーっと眺めてた。ゾンビ映画みたいなスプラッター観ても物怖じしなかったな」
「ふつーは画面に向かって吠えたりしそうだけどね。「箱の中に人がいるっ!?」みたいな可愛らしい反応は無かったのかな?」
「無かったと思う。ダックスって元は捨て犬だったから、前の飼い主の家で色々と経験済みだったのかも」
雨の中、ダンボール箱に入った捨て犬に傘を差してあげる少女。
降旗とダックスの出会いの場面が鮮明に思い出された。
……勝手に起動するTVの件だが、そこまでは話して無かったな。
あまり重要とも思わなかったが、この瑣末なエピソードは追加で知らせるべきだろうか?
話すか話さないかちょっと迷う。
まず「あれの犯人ダックスだぞ」と教えたところで、ダックスに多大な信頼を寄せる降旗がそれを信じるかどうか。
俺とダックスが体を共有していた関係であることはあの日話したし、すぐさま虚言だとは決めつけられないと思うけど。
「……なに博也。あたしの顔になんかついてる?」
降旗のことを考えていたら、自然に目線が実物の方へ向いていたらしい。
打ち明けるにしても、歩美や杉並がいるところで話し始めたらややこしくなりそうだ。
「いや……何もついてないぞ。おまえの整い過ぎな顔面に見惚れてただけだ」
「嘘っぽ。絶対なんかごまかしたでしょ?」
「ごまかしたはごまかしたかもだが、全然大した内容じゃないんだよな。おまえの恐怖体験を聞いて、ちょっと思い出したことがあるってだけで……気になるか?」
「何を思い出したのかは知らないけど、少しだけ気になる」
「そっか。ならちょっと耳を——」
——「耳を拝借」と言おうとしたところで、授業終了のチャイムがタイミング悪く鳴った。
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