第74話
歩美のアルバイト先であるカワジでは、たまにだが様々な試供品がもらえる。
それも、シャンプー、入浴剤、ハンドソープ、洗濯用洗剤など、どれも日常的に使える物ばかりだ。
「あーちゃんにもらったタイツさっそく履いてみたよ。どうかな?」
「どうもなにも、タイツを履いている女子高生にしか見えないが」
最近もらった試供品の中にタイツがあったのを思い出したらしく、それを歩美が杉並へ譲った。
わざわざ俺が買い与えてやるまでもなかったな。
「これで関ちゃん対策は万全だね! 」
「まあ、履いてないよりかはいいかもな」
タイツだしそれでも完全では無さそうだが、何もやらないよりかは効果があると思う。
問題は、関さんがどんな反応をするかだな。杉並の服装の変化を知ってすんなり諦めるのか、あるいはタイツを履いていようが履いていまいが変わらず実行するのか。
「このタイツね全然透けてなくてね、捲られても下着が見えないんだー」
「そうなのか? ならもう何も心配する必要ないじゃねぇか。よかったな」
「うんっ! あーちゃんありがとう!」
「貰い物だからどうかと思ったんだけど、藍莉ちゃんがよろこんでくれたならよかった」
貰い物とは言っても未使用の新品だし、これといった支障は無い。
とっておいても自分で使わなそうな試供品なら、誰かそれを欲している人に譲渡するのが正解だ。
タイツなら歩美が使うことも出来たのだろうけれど。
「あ、藍莉……それ……」
「せ、関ちゃん……」
いつも遅刻ギリギリに登校してくる関さんが、教室の中に入って目敏く杉並の様相に気付いた。
やるのか……?
今日も今日とて挨拶がわりと称して犯行に及ぶのか?
女同士なら笑い話で済むが、男の俺がやったら変態確定の行為だからな。
「黒タイツってのも、見ようによっては黒ニーソに見えるし、なんかエロいね」
「いや、多分そう思ってるの関さんだけだぞ」
こいつやべぇ。変態だ。
そう女に対して思ったのは初めてかもしれない。
まあ、何度も何度も痴漢紛いなスキンシップしてる時点で変態なのはわかってたけど。
「色男はニーソ派?タイツ派?」
「そんなことよりも、その呼び方が定着されると非常に困るんだが。周りからはそれに反応してる俺がそれを認めてるみたいに映るだろ」
色男とはつまり、簡単に言うとイケメンの意。
俺は自分の顔がそこまで優れているとは思っちゃいないんだ。
「関さんは事実を言ってるだけだけどね。現に坂本さんと降旗さん、藍莉と大築さんに囲まれてるし。美少女四人と戯れる歴としたハーレム野郎でしょ」
——……え? なに? なんだって?
世間的には在処って「美少女」の枠に入るの?
たしかに「ハーレム野郎」ってのと「ちゃっかり在処が美少女に含まれている」この二点を否定すれば大方事実だけども。
「……あー、なんだ。いくつか物申したくて仕方ないが」
「なにさ?」
面と向かって「杉並にいたずらすんのやめてやってくれねぇか?」とは言いづらい。
俺は別に関さんと喧嘩がしたいわけじゃないからな。穏便に済む方法があるならそっちを選択したい。
「いや、やっぱいいわ」
できる限りの対策はしたが、それでも関さんがいたずらを続行すればこれまでと何も変わらない。
さっきの変態発言からして再犯の可能性は高そうだし、杉並が心から嫌がってるならなんとかして助けてやりたいな。
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