第34話
俺が小一から知り合った親友。
現在は眼鏡をかけているが、小一から小二まではかけていなかった。
眼鏡をしていてもしていなくても、十分にイケメンと呼べる顔が整っている美男子。
俺にできた初めての友達と言っても過言ではない。
友達思いの優しいやつで、頭も良く喧嘩がやたら強い。
小四までは同じクラスだったんだけど、小五からのクラス替えで別のクラスになっちまったんだよな。
「同じクラスだし知ってるだろうけど、高橋諒。俺の友達第一号」
「さ、坂本歩美です……よろしくお願いします」
昼休み、別の児童達が校庭に出て思い思いに遊ぶ中、俺と歩美と諒は人気の少ない図書室に来ていた。
歩美が他のクラスメイトのことを気にせず、気兼ねなく話せるように最大限の配慮をしたつもりだ。
「同い年なんだし敬語とか使わなくていいよ。実はさ、歩美ちゃん全然誰とも関わろうとしないから心配してたんだ。俺から話しかけようかそれともそっとしておいた方がいいのかずっと迷ってた。正直、博也が話すきっかけを作ってくれてほっとしてる。ジャングルジムでの件を聞いて、もっと早く話しかけるべきだったなって反省したんだ」
なんかよくわからかいが、この時の諒は随分とイケメンな言葉を並べ立てていたな。
俺が女だったら即惚れるような、正にそんな感じのやつだ。
とても俺に真似できるとは思えない。
「そんな、反省だなんて……別に高橋君が悪いわけじゃないのに。悪いのは全部私だから……私が危ないことしなければ博也も痛い思いしなくて済んだんだし」
「あまり自分を責めちゃダメだ。心が不安定になるときくらい誰にだってあるよ。なにか困ったことがあったら遠慮なく言って。俺も今日から歩美ちゃんの友達だ。それから俺のことは気軽に諒って呼んでくれ。博也みたいな感じでさ」
「うん。わかった。ありがとう、諒君」
「ああ。これからよろしくな。——ところで」
二人の自己紹介が一通り終わったようで、諒が俺の読んでいる漫画本に気付く。
図書室で以前借りた本をついでに持ってきていて、暇つぶしにパラパラめくってた。
題名はよく覚えていないが、確か花子さんが正義の味方として活躍する、ちょっと小学生には刺激が強すぎる怖いマンガだったかなと。
「博也、お前ってほんと自由気ままなやつだよな。俺はお前に歩美ちゃんを一緒に守ってくれって依頼されたから図書室まで来たんだぞ。ふつう、話の途中でマンガ読み始めるか?」
あきれた表情で諒がそう言うが、俺は特に気にしたようすもなくマンガを読み進めていた。
「悪い諒。今いいとこなんだ。お説教ならあと三分待って」
「まったく、おまえみたいないいかげんなやつがよく歩美ちゃんを思いとどまらせられたもんだ」
「博也、なんのマンガ読んでるの?」
隣の席に座っている歩美が、俺の読んでいる漫画本に興味を示す。
横から覗き込んでくるから、本を見やすいように歩美の近くに寄せてやる。
本の右側を歩美が持って本の左側を俺が持った。
歩美との距離の近さにドキドキした思い出が懐かしい。
「花子さんが妖怪と戦って人を守るんだ。図書室にはつまんない本しかないと思ってたけど、これはみんなに人気があって面白い。そうだよな。諒」
「いや、俺は読んだことないから。聞かれてもわからないな」
「博也、次のページめくって」
「お、おう」
歩美はこの漫画にすっかりハマってしまったみたいで、俺が続きを借りてくる日を心待ちにしていたっけ。
貸出中だったと伝えたときは見て分かるくらいにしょんぼりしてた。
運良く借りてこられたときは明るい笑顔を見せてくれたなー。
ほんと歩美は可愛い。この一言に尽きる。
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