第12話
小学校で遠足に行くってなると、班決めが当然のようについてくるよな。
先生が児童に丸投げして「自分等で決めろ」ってな具合で。
そんな中、当時から女性恐怖症に悩まされていた歩美は、誰とも一緒になろうとしないで、ずうっと自分の席に着席したままぴくりとも動こうとしなかった。
小3の頃だったかな。
初めて同じクラスになって、歩美に最速で一目惚れしていた俺は、自分の班に入らないかと然りげ無く手を差し伸べたんだ。
「ステキな話だね。その頃から坂本さんのことが大好きだったんだ」
「まあな。隠す気は毛頭無い。てか、いつも一緒にいるところ見てりゃ嫌でもわかるだろ」
別に告白をしたわけではないから彼氏彼女という関係ではないが、その些細なきっかけ+あることで段々と俺を頼りにしてくれるようになったんだよな。
今んとこ、小3からずっと一緒にいる。
「まあねー。こういうの一心同体って言うのかな? この前の数学の授業のとき博也君が先生に名指しされたでしょ」
「ああ、されたな。マジで当てられたくなかったから焦ったわ」
「博也君がどうしようかもたついてたら、坂本さんが「先生、博也のかわりに私が答えます」だもんね。博也君のためなら坂本さんなんでもしてくれるんじゃないかな」
実際、課題かわりに終わらせてくれたり、日々の食事を作ってくれたりしてるから、杉並の予想は何も間違っちゃいない。
「ところでさ……どうして坂本さんは一緒に食べないの? 博也君と坂本さんはいつも一緒にお昼食べてるよね? もしかしなくても僕、避けられてるっ?嫌われてるっ?」
俺と杉並は、歩美の作ったサンドイッチに舌鼓を打っている。
今は昼休みだが、教室に歩美の姿はない。
杉並は嫌われていると心配しているが、嫌っているやつに弁当など作ってやろうと思うものだろうか?
「あんまり詮索しないでやってくれよ。他意は無いんだ。ただ慣れるまで多少の時間がかかるってだけで。歩美だって全く他の女子と話せないわけじゃないんだぞ。徐々に距離を縮めてちょっとずつ親しくなっていけば、いつのまにか普通に会話できるようになる」
「そっかぁ……ちゃんとした友達になりたかったのになぁ……先はまだまだ長そうだね」
「気を落とすなよ。大丈夫だ。歩美にはな、俺と同じように話せる同い年の女子が二人いる。アイツと本当の友達になれるよう尽力した前例が二人もいるんだ。だからお前もアイツ等に続け。歩美にとっての三人目になれ」
「うん。そうだね。頑張ってみるよ。坂本さん可愛いし器用だし僕なんかにおいしいごはん作ってくれるし、博也君だけに独り占めさせておいちゃ勿体ないもんね!」
歩美と気兼ねなく話せる同性が一人でも増えるのはとてもいいことだ。
人生で一度しかない高校生活だもんな。
青春を共に謳歌する友達は多いに越したことはない。
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