第23話 最愛の妹に告白するために……

<前回のあらすじ>

 

 わたしシスコンの自覚ありありの[もみじ]です。

 なんと昨晩、寝ている最愛の妹[ちいゆ]と偶然キスしちゃったんです!


 偶然だし、寝ているし、ここは無かったことにしようとしたんだけど、朝になったらちいゆの様子がおかしいの。


 いつもはスルーしてる裸扇風機にさわいだり、手が触れただけでピクリとされたり。

 こ、これってもしやキスした時、起きてたー!? とドギマギしてたら、ちいゆが「実はあの時、眠ってなかったんだよぅ」と言った……うん、確かに言ったの! 


 口の中がわなわな震えちゃう、これって姉妹の縁切るって流れじゃないよね? だって顔赤くしてモジモジしてるもんね? オッケーってことだよねー?

 

 ピンポーン!

 

 玄関のチャイムゥ!? 誰よー! っと思ったら百合親友の[いぶき]さんとその妹[いり子]ちゃんじゃない。

 こっちのラーメン試作の手伝いに来てくれたんだけど、何でこのタイミング!?


 そうだ、百合親友のいぶちゃんになら相談できるかな……。



 

 ♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀+♀



「そんなラッキースケベあるんな?」


 いつもの精悍な顔を崩して仰け反るいぶちゃん。


「ラッキースケベ言わないでよー!」

「すみんすみん、しかし……」


 いぶちゃんが、いり子ちゃんと笑い合うちいゆをちらりと見た。


「うーん……」


 何故か腕を組んで目を閉じてしまう。


「もみちゃん」

「え? はい」


 急に開いた右目がわたしを捉える。


「女になる時がきたで」

「おんなって、わたし元々おんな……」

「ほんじゃあない!」


 ひゃっ、残った左目も開けて、小麦色の精悍な顔近づけてきたー!


「あの天真爛漫で真面目なちいゆちゃんがそうしてきたんだで! どんだけの覚悟でやった思うんや!」


 息が止まる。

 

 性欲どころか、色恋にも興味なさそうなちいゆが、あんなアプローチをしてきた。

 わたしは――――そう、シスコンを自覚するわたしは、いつしか幻想に逃げていたのかもしれない。

 性欲も色恋もないちいゆと何の進展もなく、ずうっとただ一緒に暮らしていくだけの幻想に。

 わたしってバカだな、ちいゆだって性欲も色恋もある女の子なのに。


 鋭い顔のいぶちゃんを見ながら自分の愚かさを嘆いた。


「もみちゃん」


 いぶちゃんがカウンター席のティッシュを数枚取ってわたしに渡す。


「あ、ありがと」


 溢れてきた涙を拭いた。


「鼻水も出てるで」


 鼻も拭いた。


「涎も垂れてるで」


 口元も拭い――。


「いぶちゃん!」

「でへへ、こういう雰囲気苦手なんや……で、ちいゆちゃんに告白する気ぃなった?」

「うん!」

「ええで、もみちゃん! とはいえ……」


 耳元に口を近づけてきた。


「何かのプラスアルファでやった方がええんやない?」


 それはいえるかも! あんな覚悟をして来たちいゆに、サプライズ込みの告白で返さなきゃお姉ちゃんとしてカッコ悪い! でも、どうすれば……。


「もみちゃん、ええ考えがあるで」

「え? 何なに?」

「今度の屋台勝負、金銀銅のメダル出すんやで。そのメダル取るんや」

「ええ?! 試作ラーメンも出来てないのにメダルなんて、運動音痴がオリンピックに出ようとする位無理がありますよー!」

「しーっ」


 いぶちゃんが横目でちいゆといり子ちゃんを見ながら人差し指を口に当てた。


「だからこうして協力するんや。私といり子が手伝えば百人力やで」

「いぶちゃん……」


 思わずいぶちゃんの手を握ってしまう。


「ちょ……困るわ」


 照れくさそうに鼻の頭を掻くのを見て手を引っ込めた。


「けどこれだけは覚えといて、私もこの屋台勝負で一番取ったらいり子に告白する気や。全力でラーメン試作手伝うけど、一番は譲らないで」


 口元に笑みを浮かべてるけど目は真剣そのものだ。


「勝負は別物、ですね」

「そうや」


 こうして四人でのラーメン試作が始まった。

 結局、その日も深夜まで試作は続いて、またもカウンターで眠るちいゆを布団まで運ぶことになっちゃった。

 でも今回は本当に寝入ってたので何も無し。


 そして翌日、いぶちゃん、いり子ちゃんとの試作作業で、ちいゆがいつもの調子を取り戻したのは嬉しい!

 

 試作三日目、遂にお父さんとお母さんのスープに近いものが出来ました!

 お父さんから教えて貰ってた醤油ダレを加え、いぶちゃんが作ってくれた麺を畳入れ、ちいゆと一緒に食べる。


「わおぅ! お父さんとお母さんのラーメンそっくり!」

「うん、いぶちゃんの麺も相性ばっちりだねー!」

「ね~、お姉ちゃん、もしかしてこっちの方が美味しいんじゃない~?」

「ちいゆももう思うー?」

「やったよ~! 屋台でこの島のみんなに食べて貰えるんだね~!」


 うふ、勝負よりみんなに食べて貰う方が大事なんて、ちいゆらしいなー。

 確かにそれも大事だけど、わたしには勝負も凄く大事なの!

 

 完成したスープを屋台勝負に向けて冷凍庫に入れた。


 そして遂に島祭り当日がやってきた。











 

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