第2話 最も恐るべきコロナのインフル化とは

この話を執筆中の現在、まだコロナの終息は見えていない。でもいつかは終息するだろうし、終息してもらわないと困る。問題はその終わり方である。

専門家の多くは、コロナは「インフル化」して終息(この場合「収束」が正しい)すると予想している。つまり感染者数は減るが、完全にゼロになることはなく世の中に定着する、つまり、今のインフルエンザと同じようになって終わるというのである。専門的には「集団免疫」と言われているもので、80%以上の人が免疫を持てばトータルで感染を抑えられるというものである。


しかし、実はこれでは困るのである。

① 生涯免疫は獲得できず、一生のうちに何度でもかかり、毎年流行もする。

② ワクチンを開発しても、ウイルスの変異が速いと、インフルのように毎年打たないと効かない。また打っても100%かからないという保証はない。

③ 特効薬も早く飲まないと効かない可能性がある。潜伏期間が長く、発症するとわずか数時間で重篤化するようでは、投薬のタイミングが難しい。

④ 致死率はインフルの10倍程度と高い(現時点での推計)。


ご存知のように、日本では現在インフルで毎年約3千人が亡くなっている。しかもこれはワクチンやタミフルなどの特効薬があっての数字である。なければこの何倍にも高くなる。

もしコロナの致死率がインフルの10倍で、毎年流行するとしたら、たとえワクチンや治療薬が開発されたとしても、毎年約3万人程度もの人がコロナで命を落とすことになる。ガン、心臓病に次いで、日本人の死因の第3位に並ぶかもしれない。「終息後の形」が大事と書いたのはそういう意味である。


しかし、だからと言って、一生家に引きこもって生活することも出来ないので、政府はいずれかの時点で「自粛・封鎖解除」に踏み切ることになる。これは、ある意味「命の選別」が必要になることを意味する。高齢者の致死率が圧倒的に高いということは自明の通りだが、最近、男性の致死率が女性よりも高いという研究報告が出された。このことは先に述べた「自然淘汰説」が正しいことの証左となる。つまり、「子孫を残す可能性が高い」という観点から考えると、「若→女→男→老」という順になる。そしてコロナの致死率もこの通りに並んでいる。


言い換えれば、コロナ封鎖を解除する場合、高齢者や男性に多数の犠牲者が出ることを覚悟のうえで実行しなければならないということになる。現実にインフルの場合、「毎年3千人の犠牲者」を許容することで、国民はフツーの日常生活を送ることができている。これを否定してしまうと日本社会が崩壊してしまう。では「毎年3万人の犠牲者」が許容範囲かというと、これは国民のコンセンサスが必要になろう。政府は非常に難しい判断を迫られることになる。


さらに人類全体のことを考えると、70億という数が多すぎるかどうかという、これまでタブーとされてきた議論にまで踏み込まなくてはならなくなるかもしれない。いまWHOがもっとも恐れるのがアフリカ等の途上国で感染が蔓延することである。これらの地域の医療体制は脆弱でいったんパンデミックが起きると収拾がつかなくなる恐れがあるという。その場合、先進国はどこまで救済するかという別のジレンマも発生する。


さらに困ったことが、このコロナは人だけではなくペットや家畜など他の動物にも感染するという点である。実際、動物園のトラに感染したという報告もなされている。人には医療という救済があるが、動物にはない。人間だけが「ノアの箱舟」に乗っていいのかという議論も必要になる。


どうやらコロナの完全解決までに超えなければならないハードルはいっぱいありそうだ。


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