新型コロナ発現の理由と最終形

ツジセイゴウ

第1話 ウイルスは人類の自然淘汰のために発現した

いま人々が最も知りたいことの一つは、コロナウイルスの発現が偶然か必然かという点である。もし「偶然」ならば、たまたまこの時代に住んでいた我々の運が悪かったということになる。そしてウイルスが克服されたら、何事もなかったかのように元通りの生活が戻り、人類の繁栄は続いて行くことになる。一方で、もし発現が「必然」ならば、その原因が解明されに限り、ウイルスは繰り返し発現し、人類の存続にとって大きな脅威となろう。


これまでのところ、ウイルスは中国の野生動物市場から人に感染して広まったという説が有力である。中国では、コウモリやヘビ、センザンコウなどの野生動物を珍味として食する文化があり、その動物を介して人にウイルスが伝染したという説である。ウイルスのDNA型の調査から、いま世界で流行しているコロナのDNA型が一致したという研究報告もなされており、最も有力視されている。これに対し、中国政府は「中国起源説」を否定するなど政治問題化している。


人類の歴史は病原体との戦いの歴史でもあった。古くは中世のペスト、近世のスペイン風邪、そして現代のコロナ、いずれにも共通することは人口が爆発的に増加した後に発生しているという点である。

ペストが流行したのは14~15世紀、イタリアに始まったルネサンスによる文明が開化し、世界人口も3億から4億に増えたと推計されている。そしてペストによる死者数は約1億、致死率は25%程度に及んだとされる。

スペイン風邪が流行したのは1918年、やはり産業革命後の人口爆発で世界人口はそれ以前の9億程度から18億まで一気に増加した。感染者数は約5億、死者数は数千万に上ったと言われているが、正確な統計はない。

そしてコロナが発現した現代の世界人口は70億で、やはり2回の世界大戦後の平和な時代に急増している。今回のパンデミックがどの程度で終息するかはまだ見えないため、単純比較は困難だが、世界人口の増加と何らかの関係がありそうだ。


では、なぜ世界人口が増加すると感染症が発生するのか。有力な説は人口過密による人々の往来や接触の増加が原因とする説である。確かに「3密」と言われるように、人口が増えると「密集」「密閉」「密接」のリスクは高くなる。あるいは人口が増えれば、野生動物と接遇する機会も増えるかもしれない。

ただ、それは単に感染症の「伝播」の可能性が高くなると言っているだけで、感染症自体の「発現」とは関係のない話である。仮に、この説が正しいとすれば、感染症は絶えず日常的に発生しているが、たまたま蔓延していないだけということになる。


では、有史以前には感染症はなかったのか。これは、確たる証拠がないため証明のしようがないが、「血液型」がその名残とする説がある。人の血液型にはABО、МN、Rhなどいろいろな分類方法があるが、もっとも身近なABО式については改めて説明の要もなかろう。


問題は、なぜこうした血液型があるのかという疑問である。そもそも血液型とは、赤血球の表面にある糖鎖というものの型によって決まる。糖鎖とは、さまざまな糖が鎖状に連なったもので、細胞の表面にあって主に免疫機能をつかさどっている。細胞は、この糖鎖を使って外から入ってきた異物を感知し、この異物を排除するための抗体を形成する。例えば、A型の赤血球には、A型の抗原を持つ糖鎖がくっついており、B型の血液が入ってくると抗体を形成して、血液を凝固させてしまう。だから血液型の違う血液を輸血することはできないのである。


では、なぜこうしたややこしい仕組みができたのか。その原因として、何らかの病原菌が関与したのではないかとの可能性が指摘されている。インフルエンザウイルスにもA香港型だのB型だのといった具合にいくつかの種類がある。そして、これらのウイルスに対して免疫を持つためには、その型にあった抗体を作らなければならない。同様に、ヒトがまだ類人猿だった頃よりももっと昔に、赤血球に感染する病気が流行し、その病原菌に対抗するため、O型の糖鎖しかなかった赤血球にA型とB型の新たな糖鎖がくっついたのではないかと考えられる。その後、この病原菌が絶滅してしまい、ABOという血液型だけが残ることになったのである。

他の型式についても、有史以前の大昔に繰り返し病原菌に感染した証拠なのかもしれない。


この「血液型病原菌説」の有力な証拠がある。詳しくは省略するが、ネットで「血液型、感染症」と入れて検索すると、血液型と感染症への罹りやすさについての研究論文が数多く出てくる。つまり、血液型と感染症には密接な関係があるのである。


医療が発達した現代社会においては、ワクチンだの治療薬だのいろいろな救命の手段があるが、まったく医療のなかった「類人猿」のころの人類にとっては、まさに自然に免疫ができるのを待つしかなかったと考えられる。その結果、特定の血液型を持った祖先だけが生き残り、現代社会まで脈々と血液型とともに受け継がれてきたというわけである。


では有史以前にも感染症はあったとして、なぜ感染症は発現するのか。

人間のような高度な哺乳類については不明だが、魚類や昆虫の中には「個体数」が増え過ぎると、エサ不足による種の全滅を回避するため自然淘汰の摂理が働く種がある。驚くべき話だが、個体数が一定数以上になると「性転換」が自動的に起きる種がある(オスがメス化する)。無尽蔵に精子をばらまくオスの数が減り、卵子を作るメスの数が増えることで、増え過ぎを回避するのである。


さらに性転換でも追いつかない場合には、病原菌に対する免疫力が低下するという。詳しいメカニズムは分かっていないが、エサの獲得競争が激化することでストレスホルモンの分泌が増え、免疫力の低下を招くというのである。このことは、哺乳類であるマウスの実験で確認されている。巣箱の中で、いわゆる「3密」状態にしたマウスは、普通のスペースを与えたマウスより明らかに免疫機能の低下が認められたという。


つまり人口の増え過ぎが免疫力の低下を招き、感染症の発現に結び付いたのである。こう考えてくると、新型コロナウイルスがこのタイミングで発現したのも、増えすぎた世界人口を減らすためだったという「自然淘汰説」が説得力を持つ。これは自然から人類に対する大きな警告であるかもしれない。そして、このことは次に述べる、コロナ終息後の人類のあるべき「形」にも影響してくることになる。


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