第18話 ☆スキルは凄かった

 「シャーフさん! とうとう100レベルになった!」


 「はぁ?」


 数日後、ボアを手に冒険者協会に戻ったマイゼンドが言うと、シャーフは眉間にしわを寄せ返事を返した。レベル10になったら1に戻る彼が、突然100レベルになったと言ったからだ。


 「さっきね、レベル10になってレベル1に戻ったんだけど、通算100レベル達成したんだ」


 「……そうか。おめでとさん。で、ダブルでおめでとうだ。★1に昇格!」


 「え! そうなんだ……」


 「なんだ、嬉しくないのか?」


 「……うーん。最初は目指していたけど、僕一人だし。出て行かなくちゃ行けないし」


 しょんぼりするマイゼンドを見て、シャーフは溜息をついた。


 「あのな。別に出て行きたくなかったら出て行かなくてもいい。だがな、お前が冒険者リスキーウォークになぜなったか思い出せ。確かに攻撃力はないが、それ以外は凄いんだから。それに一人じゃないだろう。食いしん坊の相棒がいる。ソロでやっている奴らもいるし、群れるのが嫌ならそれでもいいだろう」


 「あ、ザラか……うん。寂しくはないね」


 そう言ってザラを手にマイゼンドは、イスに座った。ご飯を食べて帰るからだ。


 『聖獣ザラモリス:ザラ

  レベル:1

  HP:100

  MP:10

  魔法防御:10

  回復力:10

  素早さ:70

  適正属性:―

  不適正属性:―

  スキル「捕食:レベル2/ボア10体・一角兎の燻製20体分」

     「体色変化:パッシブ」

  必要なモノ

  レベルアップなら「食べ物」

  スキル習得なら「魔力」               』


 「あ、捕食がレベルアップしている! どれどれ」


 捕食レベル2――50個の食べ物を体内に保管しておける。


 たいして変わらないなと見つめていた。


 「ほらお祝いだ」


 「え? ステーキ?」


 「そうだ。ボアステーキ」


 「わぁ、おいしそう。って、ダメ!」


 マイゼンドは、皿を持ち上げた。ザラがボアステーキに向かってきたからだ。


 「やっぱり食べようとしているのか? ほらお前にはこっちだ」


 シャーフは、皿の上に、ボアの燻製がのっかたのをテーブルに置いた。

 ザラは、それに向かって行く。マイゼンドは、安堵して皿をテーブルの上に置いた。


 「面白いな」


 「面白い?」


 シャーフの言葉に、何がと思い視線の先を見た。ザラがバクバクと燻製を食べている。


 「俺には、ザラの姿が見えないからな。燻製が勝手に減って行くように見える」


 「あ、そっか。このお肉、うま」


 ボアのステーキを頬張ったマイゼンドは、美味しさに顔がほころぶ。


 「そう言えば、あれからスキル覚えたのか?」


 「それが……覚えなかったんだよね」


 「なるほど。思ったんだが、必要なスキルとかが手に入っている感じがするんだがどうだ?」


 「え? でも、50%の確率なんだよね?」


 「普通はな。マイゼンドの場合は、普通じゃなくなっているかもだ。お前のその据え置きリセットのスキルは、白星スキルといって、持っているのは一人だけなんだ。そういうスキルには、凄い効果が付いている事が多い。まあ、ステータス自体凄いからこれ以上あるのかって思うけど、育てるのスキルとかタイミングが良すぎる」


 「なるほど。役立つスキルが手に入るって事だよね」


 「まあ、そうだな」


 「すご~い」


 凄いがそういう時がこないと、スキルが増える事がない事にマイゼンドは気づいていない。

 ご飯を食べ終わり、ウキウキで部屋へと戻った。


 「さて、どうしようかな。旅に出てもいいけど……リトーンを訪ねてみるかな。って、どこにいるだろう?」


 寝転がりザラに魔力を送りながら独り言言うマイゼンド。

 旅に出て困るのは、マイゼンドの食事だ。持って歩いてもざらに食べられてしまう恐れがあるのだ。


 「僕も体内にしまえたらいいのに……」


 ザラに奪われなくて済むと思いながら眠りについた。



 ――転化空間を獲得しました。


 「あ! やったぁ!!」


 通算レベル100になって数日後、ボア狩りに精を出していたマイゼンドは、レベル10になりスキルを覚えた。


 (どんなスキルかな?)


 聞いた事がないスキル名にワクワクしながら確認する。


 ☆転化空間――HPを転化して物をしまう空間を作れる。消費HP10,000。空間容量5。時間経過2分の1。


 「これってもしかして、食べ物をしまうやつ?」


 嬉しくなったマイゼンドは、使ってみた。


 ――HP10,000消費して、転化空間が作成されました。


 「うん? 消費? あぁ!!」


 増えたばかりのHPの最大値が10,000減っていたのだ! それでもまだ100,000ちょっとのHPがあった。


 「まあ大したことないか。容量5じゃ少ないよね。20ぐらいにしよう!」


 今まで少なくても平気だったのからと、HPを転化して空間を作る事にする。


 ――HP10,000消費して、転化空間が作成されました。

 ――HP10,000消費して、転化空間が作成されました。

 ――HP10,000消費して、転化空間が作成されました。


 「じゃさっそくボアを……ザラ!!」


 倒したボアを空間にしまってみようと見ると、すでにザラがボアをしまっていた。残りあと一つ。


 「これは、僕の!」


 最後のボアは、マイゼンドが死守し空間にしまう事が出来た。ザラがしまった時の様に、目の前のボアが消えたのだった。

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