第17話 解決?

 「ねえ、その一角兎の燻製って出せないの?」


 マイゼンドは、アパートに帰って来て、早速ザラのステータスをチェックした。

 今日倒したボアが、また体内にしまわれている。7体倒したうち、5体が体内にしまわれた。今回、どうやってしまうのか観察していたらザラが触れたボアがシュッと消えたのだ。

 マイゼンドは、凄いと拍手を送って喜んで見ていた。なので必要なボア以外は、ザラの体内の中。


 今朝チェックした時には、ボアが3体あったので合せて8体ないとおかしいが、7体しかなかった。食べたらしい。一角兎の燻製はそのまま20体のままだ。奪われなかったその燻製の残りはない。明日の朝の分がないのだ。


 「はぁ……。言葉が通じればなぁ」


 仕方がないので、明日の朝、ボアの燻製を貰えたら貰う事にした。



 「お腹空いた~」


 結局ボアの燻製は完成していなかった。なので朝食抜きだ。それでも叫んでボアを呼ぶ。倒したボアを持って、冒険者協会へ持って行った。


 「出来たぞ!」


 「食べる!」


 「ここでか?」


 うんうんとマイゼンドは頷く。お腹空いたのもあるが、食べてみたかったボアだ。


 「ほれ」


 「ありがとう!」


 マイゼンドは、ボアの肉にかぶりついた。思ったよりジューシーだ。


 「おいしい!」


 「断然、こっちの方がおいしいだろう?」


 そう言いながら、持ち帰りの燻製をテーブルに置き、シャーフは美味しそうに食べるマイゼンドの前の席に座った。

 うんうんと頷いでマイゼンドは、ばくばくと食べる。


 「なあ提案なんだけど、早く★1になってこの街を出た方がいいと思う」


 そうシャーフが言うと、ピタッとマイゼンドの動きが止まった。


 「な、なんで?」


 「モーアンドさんも言っていただろう? お前の数値は凄いって。あと数回で★1だ。お前なら★がつけば、引く手あまただ。ただちょっと、常識はずれだから誤解されやすいが」


 マイゼンドは、ザラの事がばれたのかと思ったので、違う理由でホッとする。


 「うん」


 素直に返事を返した時だった――


 「はぁ?」


 突然、持ち帰り用のボアが消え、シャーフが驚きの声を上げた。


 「あ~! また!」


 マイゼンドもテーブルの上にいるザラを見て、声を上げる。


 「また? こういう事が前にもあったのか?」


 「………」


 マイゼンドは、シャーフの質問にザラが見えてないのかと、ザラとシャーフを交互に見た。


 「な、なんだ? テーブルがどうかしたか?」


 「み、見えてないの?」


 「何が見えているんだ?」


 「あ……」


 「あって、お前、このごろ何か変だと思っていたが、何を隠している!」


 「ご、ごめんなさい」


 目の前で怒鳴られたマイゼンドは、縮こまって謝った。そして、ザラの出会いから今までの事を全部、洗いざらい話した。


 「お前、ダメだと思っているのに、ザラを街に入れていたのか」


 「ごめんなさい。街を出て行くからザラを殺さないで!」


 「待て待て! 勘違いするな。落ちつけ」


 マイゼンドは、俯いたまま頷いた。


 「おい。食べ掛けの肉、食べられてないか?」


 「あ!」


 マイゼンドの食べ掛けの燻製をザラは直接ばくばくと食べていた!


 「もう僕もお腹ペコペコなのに~」


 燻製を持ち上げると、ザラも持ち上がった。食いついてブラブラとしている。


 「……楽しそうだな」


 呆れたようにシャーフが言った。


 「僕の食料がもうないんです……」


 「一ついいか? たぶんモンスターじゃないと思う」


 「うん? もしかしてザラが?」


 シャーフが頷いた。


 「世の中には、見た目がモンスターの様な聖獣とか神獣などがいて、それらは我々に力を貸してくれるらしい。だいたい、モンスターを見えなくできるならそういう被害があってもおかしくないだろう」


 なるほどと頷いていたマイゼンドは、はっとする。


 「聖獣だ! ステータスにそう書いてあった!」


 「書いてあったなら気づけよ!」


 「だって、モンスターの種類だと思っていたから」


 「ザラの事は誰にも言うなよ。まあ見えないから信じて貰えないとは思うけど。あと他の人の食べ物を消さないように気を付けろ。お前が泥棒扱いをうけるかもしれないからな」


 「……頑張って阻止します」


 「それにしても、手の平サイズなんだろう? よく腹に入るよな」


 「食べずにキープしているみたいなんです。僕もそれ取りだせればいいんだけど」


 「腹の中にあるのを出して食べる気なのか? お前のそういう感覚が今一わからん」


 「え~。さっき食べたのじゃなくて消したのだよ」


 「はいはい。とりあえず、持って帰っても食われるんだろう? だったらここで食事をすればいい」


 「あ、なるほど! 名案」


 「ただあんまりジャンジャン取って来ても取り置きスペースはないからな。食べる分だけだ」


 「うん。ありがとう。シャーフさん」


 マイゼンドの食事の確保は出来たのだった。

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