第16話 人間の言葉はわかりませんので
「形跡がない?」
モーアンドが、マイゼンドを睨む。
「浮かせたか?」
「だから違うって。あ、お花を育てたの!」
マイゼンドは、適当に嘘を返す。
「スキルがそんな物に反応するか!」
「え? しないの? 拾うは、ゴミ拾いでも上がったのに?」
つい驚いてマイゼンドが返すが、彼の台詞にモーアンド達も驚く。
「ゴミ拾いだと……拾うがあのレベルになったのは、ゴミ拾いでなのか?」
「はい。ほぼゴミ拾いといも拾いです。凄いサクサク上がるんです!」
パッとモーアンドが手を放した。
「すまない。亀のモンスターは見つからないし、君に育てるスキルがあってレベルが上がっていたからつい……君が逃がしたのだとばかり」
モーアンドは、軽く頭を下げる。
シャーフから、よく★なしのクエストをこなしていたと聞いていたのだ。
「……ごめんなさい。もしかしたら討伐隊が来るから嫌なら逃げてって言ったから逃げたのかも!」
「君は面白いな。モンスターが、人間の言葉を理解出来る訳ないだろう? 俺達だってモンスターの言葉を理解できないだろう?」
モーアンドが言った。
「え! わからないの?」
本気で驚いているマイゼンドを見て、討伐隊のパーティー全員が大笑いを始めた。
「………」
「いやすまない。シャーフさんから聞いたまま、本当に天然なんだな。怪しんで悪かったよ。でも気を付けな。間違ってモンスターを街に入れてしまって、それで被害が出れば君が責任を取らされる」
「あ、はい……すみません」
亀のモンスターを街へ連れ込んだ事を言われ、素直にマイゼンドは謝る。
「しかしなぁ。ボアは、どこに行ったんだろうな」
と、モーアンドは考え込むが、それはザラの体内にある。
今更だが、左手に持っているザラの事に誰も触れないのはなぜだろうと思うマイゼンドだが、ザラがモンスターだとばれたら殺されるので黙っていた。
「レベルは上げられないかもしれないが、早めに★1ランクになった方がいい。君の場合、武器の性能で強さが変わる。よい武器を手に入れれば、レベルが低くてもトップクラスのパーティーに入る事が出来るだろう。勿論、我がパーティーでも構わないぞ」
「え? でもレベルが低いとパーティーランク下がらないですか?」
「知らないのか、フリーパティーといってパーティーの功績でランクがつく仕組みもあるんだ。そのパーティーは、★1以上のメンバーで構成されていれば問題ない。中には君の様にレベルが低くても、やり方次第では強くなる者もいるからな。俺達のパーティーは主に、レアモンスター狩りをしている」
パーティーのランクの付け方に二種類あった。
一つはレベル制。リトーンが入っているのがそれだ。メンバーのレベルによって、ランクが決まる。二人以上であれば結成出来る。
もう一つは、モーアンドがリーダーのパーティー。レベル制限がないが、実績が伴わないとランクが上がって行かない。こちらも二人以上で結成出来るが、メンバーが減ると、ランクが下がる場合がある。
「はぁ……」
「狩りの邪魔して悪かったな。ご協力ありがとう。もう一度川を探してみるよ」
モーアンド達は、引き上げて行った。
それを見えなくなるまで、マイゼンドは茫然と見つめ見送った。
「うん? 僕疑われていて、疑いが晴れたって事?」
今度は左手にいるザラを見つめる。
「僕の言葉、理解してなかったの? わかっている感じだったのに。あ、でも、ダメって言っても食べちゃうからわかってないのか……」
一人ブツブツ言うマイゼンドの背中に衝撃が走った!
「うわぁ!」
気づけばいつの間にか、ボアがいた。攻撃を食らったのだ。しかも次々と現れ突進してくる。さっきまで騒いでいたので、現れたのだ。
「えー。ちょっと待ってよ」
立ち上がったマイゼンドは、向かって来るボアに次々と攻撃をくりだす。倒しきり疲れたマイゼンドは、座り込んだ。
「あー! ダメだってば! それクエストにいるやつで、僕のごはんだから!」
スキル獲得で、会話が出来るようにならないかと思うマイゼンドだった。
□
「お前、背中大丈夫なのか?」
ボアを持って冒険者協会に行くと、マイゼンドの背中を見てシャーフが言った。
「あ、背中どつかれちゃって……。それよりボアの燻製作って下さい!」
「いいが、一角兎の燻製も大量にあるだろう。食べきれるのか?」
一人で食べるならボア一匹分も相当な量になる。
「あ、うん。それは大丈夫」
「すまなかったな」
「え?」
「話を聞いたんだ。俺がちゃんと説明すればよかったんだが、君の性格を……」
通常じゃ考えられない行動を取っている事からモーアンドがマイゼンドを怪しんでいた事を言っていた。
「大丈夫です。誤解は解けたみたいなので」
「そうか。まあ俺もちょっともしかしてとか思ったが、さすがにモンスターを飼うなんてないよな」
「………」
シャーフの言葉に、うんうんと頷くマイゼンドだが、心臓はバクバクとなっていた。
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