第10話 鎖鎌の威力はバッチリ

 バキ!


 「あれ? うそ……」


 次の日に早速鎖鎌で移動の練習をしようと、木に向かって投げて上手く木に引っ掛けたマイゼンドだったが、思わぬハプニングが起きた。木の幹が割れたのだ。

 鎖鎌は、一応武器なので威力がある。幹を攻撃した事になり破壊したらしい。


 「危なかった」


 木の幹に何とか抱き着いた。痛いものの止まったのだ。


 「うーん。どうするかな」


 ふんわりと地面に降りたマイゼンドは、ハッとある事に気がついた。昨日レア一角兎を倒すときは、幹を蹴って進んだ。そうやって移動しようと。

 それから試行錯誤の結果、浮いた状態で木を蹴って横に進む事にする。途中で手や足を使い向きを変えたり、枝につかまって止まったりと出来るようになった。スピードさえついていなければ、それで止まれたのだ。


 「後は、途中で3分過ぎて落ちないようにしないとね」


 一角兎の狩場に来たマイゼンドは、地面に降り立った。

 武器の鎖鎌を手に持ち一角兎を探す。


 「居た!」


 ぴょんぴょんと跳ねて目の前を横切ろうとする一角兎に狙いを定め、鎖鎌を投げつけるも相手は動いているので、当たらなかった! しかもマイゼンドに気がついた一角兎は、攻撃を仕掛けて来る。それをひょいとどけ、カウンターをくり出した。

 カウンターは、一角兎に当たり吹き飛ばす。一撃で倒したようだ。


 「当たれば一発なんだ……」


 投げて当てるというのは、的が動かなければ当てられるが、思っていたより難しかった。

 倒した一角兎を袋に入れ回収し、次の獲物を探す。


 10体ぐらい倒す頃には、当てられる様になっていた。移動している軌道上に鎖鎌をスライドさせる方法を考え付いた。要は、横に鎖鎌を振って攻撃する方法だ。しかも後ろから攻撃を食わらせる。スピードがあるので、気づいても一角兎は逃げきれないのだ。

 ただこれは、横に吹っ飛んでいくので、飛んで行った一角兎を探さなくてはいけなかった。茂みに入ると結構探すのが大変だ。


 ザザザ。


 吹き飛んだ一角兎が茂みの中へと入って行った。


 「確かあっちって……」


 木の上に浮遊して登ったマイゼンドは、吹っ飛んで行った方向を確認した。思った通り川辺だ。昨日の場所も確認出来た。赤黒くなっているのですぐにわかる。


 タンっと、木を蹴り森から川辺へと出た。そしてゆっくりと下へ降りる。斜めに下りて行く感じで移動した。地面の近くで、浮遊を解除すると、ストンと真下へ落ちるも着地に成功。


 昨日亀と出会った場所へと行ってみた。


 「いないか。そう言えば、あのまま忘れていた。うーん。あの亀は、冒険者だったのか……」


 普通は、あまりそういう発想はしないと思うが、マイゼンドの中ではモンスターを食べる=冒険者となっているのだ。


 「うん? あれって……」


 崖に小さな穴を見つけた。そこにマイゼンドは近づく。

 穴は、四つん這いになれば入っていけそうな大きさだが、屈んで覗くとずっと奥へと続いている様だ。明かりがないと奥に入っても見えないだろう。


 じゃりじゃり。


 穴を覗いていると、這う様な音が聞こえハッとして振り向いた。もしかして穴の中にいるのかと思っていた亀が目の前にいたのだ。


 「うわぁ」


 驚いてマイゼンドは立ち上がった。

 なぜか亀は大きな口を開く。その口には、立派な牙が見えた。


 (食べられる!)


 マイゼンドは、走って逃げだした。


 じゃりじゃり。


 這う音は、マイゼンドを追って来る。振り向けば、恐ろしい程の速さで追いかけて来ていた。


 「亀ってあんなに速かったっけ!?」


 マイゼンドの素早さについてきているのだ。ただの亀ではないだろう。


 「っぶ」


 後ろを振り向きながら走っていたマイゼンドは、石につまずき思いっきり転んだ。


 「うわぁ」


 突然、一角兎が入った袋が引っ張られる。見れば亀ががぶっとかぶりつき引っ張っていた。


 「これはだめ~!」


 引っ張り合いをしていると、びりっと袋が破けた。


 「あ~!!!!」


 その袋の中に、亀が入って行く。


 「………」


 どうしたらいいんだろうかと途方に暮れる。あの速さならずっと追いかけて来るだろう。


 「そうだ!」


 亀が入ったままの袋ごと鎖鎌の鎖でグルグル巻きにした。

 それを冒険者協会へと持って行く事にしたのだ。

 マイゼンドにしてみれば、亀の冒険者を捕獲したつもりだった。


 亀は思ったより重かったので、浮遊を掛け走って持ち帰ったのだった。

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