第9話 新しい武器
ずぶ濡れで大きな一角兎を持って帰って来たマイゼンドに驚いたシャーフだが、亀の話を聞き更に驚いた。
「お前、本当はレベルいくつだ!」
そうシャーフは聞いた。明らかに変なのだ。亀の事は置いておいて、まずはそれを聞きたかった。
マイゼンドが持って帰って来た一角兎は、レアになっていたのだ。レベルが10以上上がるとレア扱いとなる。見た目も変わる。大抵は、この一角兎の様に大きくなるのだ。
当然本当に8レベルならマイゼンドが一人で倒せるわけがない。
「え? うーん」
なぜかマイゼンドが、指折り数えている。
「な、何を数えているんだ?」
「え? 本当のレベル? たぶん36?」
昨日一角兎を倒した時に1レベル上がっていた。それも足して36レベルと答えたのだ。
「ま、まて。意味がわからないのだが?」
「あ、そっか。実は10レベルになったんだけど、据え置きリセットというスキルのせいで、10レベルになったら1レベルに戻されちゃうんだよね」
「………」
目をぱちくりとするシャーフが、いやいやいやと手を振る。
「それだと強くならないだろうが」
「10レベルの数値が初期値になるらしくて、毎回リセットされるたびに初期値の数値が上がってるんだ。経験値も今の表示されているレベルで計算されるから普通に36レベルになるより早いみたい」
「なんだそのスキルは!」
聞いた事がないスキル名にシャーフは、今までで一番驚いた。だが、納得はした。実際は8レベルではなく、36レベルだったのだ。
ならボアよりは、素早さがある。ボアの攻撃を交わせる。そして、今回の一角兎も倒せるかもしれない。ただ攻撃力がないから簡単ではないだろう。
「その話が本当なら武器を新調した方がいいだろうな。素早さがあっても攻撃力がなければ倒せないモンスターもいる」
防御力もあるモンスターもいるのだ。それが相手だと今の武器ならダメージを与えられない。
それもそうだと、マイゼンドは頷いた。猛スピードで刺したけど死ななかったのだ。武器の攻撃力があれば、あれで死んでいたかもしれない。
「あ!」
「どうした?」
「かぎ縄おいてきちゃった」
攻撃を仕掛ける時に、木の枝に置いて来たのを思い出した。まさか崖から落ちると思っていなかったし、すっかり忘れてしまっていた。探すにしても初めていった場所なので、探し出すのは無理かもしれないと諦める事にする。
「大失敗」
「なるほど。そういう武器もいいかもな」
「え? 武器? かぎ縄が?」
「武器屋にそう言う感じのがあるかもしれない。見てみてはどうだ? しかしそんなのを持って歩いているなんてな。何に使うつもりで持って行ったんだ?」
「うん? 木から木に移る練習の為」
「お前は、どんな練習をしてるんだ……」
浮遊の練習だとは知らないシャーフは、呆れていた。ちょっとずれた子だとは思ったが、人が思いつかないような事をしていた。
「あと、服も買っておけ」
汚れて濡れている服を見てシャーフは言った。
レアモンスターの心臓は、コアと言われ魔力が含まれており魔導具を動かす原動力になるのだ。だから一角兎とはいえ、買取価格は高い。
貰ったお金を持って言われた通り、マイゼンドは武器屋に向かった。
店に入ると、ジドーっと見られた。
やっぱり服を着替えてから来ればよかったと思うマイゼンドだったが、面倒なのでそのまま買って帰る事にして、かぎ縄みたいな武器を探した。
ムチの武器のところに、ムチの先に刃がついたのがあった。でも何か違う。これでは、自分が移動できないのだ。
鎖鎌があって、鎌がくるんと三日月形のを発見。これが一番先がイメージと近い。これなら引っかかると思われる。
縄ではなく鎖になったから重くはなるが、攻撃力は凄く上がった。10倍の50だ。
この武器は、専用のケースが付いていて、普段はその中に入れておく。だから移動中に自分や何かに刺さる事もないのだ。
満足してマイゼンドは、これを買って帰った。
明日はこれを使って森で移動の練習をしようとウキウキだ。
新しい服も買いに行って、自宅へと帰った。
今日も疲れたと、燻製を食べてあっという間に眠りに落ちるマイゼンドだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます