第579話 三者二様の鑑定結果

※『第579話 精神と時の会議室』の予定でしたが、都合により予定を変更してお送りいたします。誠に申し訳ございません。

―――――――――――――――――――――――――――――――――


 名前:ディース

 種族:神 年齢:0 性別:女

 職業:神

 レベル:1


 筋力値 1

 魔力値 2

 生命力 1

 器用さ 1

 素早さ 1


 スキル

 神Lv2 水魔法Lv1


 称号

 神



「なるほど」


「なるほどー」


「ええ!?」


 水晶に映し出されたディースさんのステータスを確認し、納得の声を上げるディースさん本人とローデットさん。そして驚きの声を上げる僕。三者三様の反応である。

 ……あ、違うか。僕だけ驚いているな。三者二様の反応だ。


 やはりディースさんはレベル1で、なかなかに残念なステータスとなってしまっているが――それよりなにより、気になるのはディースさんのスキル欄だ。


「『水魔法』スキルが……」


「そうねぇ。『水魔法』みたいね」


 てっきり僕が所持しているスキルのどれかが継承されると思ったら、何故かディースさんは『水魔法』を取得していた。

 どういうことなのか。この『水魔法』は、いったいどこから湧いてきたのか……。


 ――いや待て、もしかして、この『水魔法』がそうなのか? この『水魔法』こそ、僕がディースさんに継承したスキル!?


「あの、僕もいいですか? 僕も鑑定させていただいても?」


「え? あ、はい、いいですよー」


「ありがとうございます」


 僕は急いでマジックバッグからお財布を取り出し、鑑定代として適当にジャラジャラと硬貨を積み上げていく。

 その様子にローデットさんはニッコリし、ディースさんは渋い顔をしていたりもするが――それはさておき、僕は確認せねばならん。


 ディースさんの『水魔法』が継承スキルだとするならば――それすなわち、僕はすでに『水魔法』スキルを取得していたということ!

 そう考え、僕が水晶に手を置き、魔力を流すと――



 名前:アレクシス

 種族:エルフ 年齢:19 性別:男

 職業:木工師

 レベル:42(↑2)


 筋力値 26

 魔力値 21

 生命力 18

 器用さ 59(↑6)

 素早さ 7


 スキル

 剣Lv1 槌Lv1 弓Lv1 火魔法Lv1 水魔法Lv1(New) 木工Lv2 召喚Lv2(↑1) ダンジョンLv1


 スキルアーツ

 パリイ(剣Lv1) パワーアタック(槌Lv1) パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1) レンタルスキル(召喚Lv1) ヒカリゴケ(ダンジョンLv1)


 複合スキルアーツ

 光るパリイ(剣) 光るパワーパリイ(剣) 光るパワーアタック(槌) 光るパラライズアロー(弓)


 称号

 剣聖と賢者の息子 ダンジョンマスター エルフの至宝 ポケットティッシュ



「え!?」


「ええ……?」


「なるほど」


 驚きの声を上げる僕とローデットさんと、納得の声を上げるディースさん。……これまた三者二様の反応である。

 というか、これは……。この鑑定結果は……。


「あの、アレクさん……?」


「……はい」


「前回の鑑定から、たった数日でとんでもない成長を遂げているんですが……」


「…………」


 ……そらまぁ驚くよね。ローデットさんの認識だと、僕はここ一ヶ月ほど毎日ダンジョンマラソンに励んでいて、その後に鑑定に訪れては『上がんないなー、上がんないなー』とボヤいていたはずだ。

 そうして、ほんの数日前にようやくレベル40に上がったと思ったら――今はレベル42まで上昇している。そりゃあ驚く。わけがわからんだろう。しかもレベルだけではなく、スキルなんかもいろいろ変わっていて……。


 いやー、そうなのか。僕としては『水魔法』を確認するだけのつもりが、それ以外も変化があったか。

 おそらくは――一年間の天界滞在の影響だろう。一年の滞在で、レベルアップしたりスキルを得たりしたのだろう。


 僕としては喜びしかない状況だが……だがしかし、この現状をローデットさんになんと説明したらいいのか困っているのもまた事実。

 はてさて、どうしたものか。なんと説明したらいいのだろう。


 というか、普通に考えて無理なのだけど……。こんなのどうやったって説明のしようがないのだけれど……。

 それでもなんとか上手い言い訳を考えて、ローデットさんに納得してもらわないと……。


「あー、これはですね、なんと言いますか、いろいろと事情がありまして……」


「どういうことなのでしょう……?」


「えっと、その、つまりですね……」


「つまり……?」


「――ユグドラシルさんのおかげです」


 困ったときのユグドラシルさん! お願いユグドラシルさん! 助けてユグドラシルさん!



 ◇



 ――なんとか誤魔化せた。

 さすがはユグドラシルさんだ。ありがとうユグドラシルさん。ごめんなさいユグドラシルさん。


 レベル40記念に、ユグドラシルさんから特別なレッスンを受けて、その結果成長しました――とかなんとか伝えて、どうにかこうにかローデットさんを丸め込むことに成功した。

 そして、『詳しいことはユグドラシルさんに聞いて下さい』と伝え、僕とディースさんは逃げるように教会を後にした。


「なんだかすみません。ディースさんの鑑定が目的で来たのに、慌ただしく撤退することになってしまいました」


「いいのよ別に、私も鑑定はしっかり済ませることができたし。……まぁ、私の方のステータスはかなり悲惨なものになっていたけれど」


「あー、それは……」


 そうね、僕としては驚きと喜びしかない鑑定結果だったけど、ディースさんの方はというと、なんとも言えない結果であり……。

 なにせレベル1で、能力値も軒並み1だ。『素早さ』も1しかない。――うむ。『素早さ』1なのだ。なんと僕の七分の一しか『素早さ』がない。衝撃の『素早さ』である。


「わかってはいたけれど、ひどいナーフをくらったわね……。ええまぁ、それも私がそう設定したのだけれど……」


「そうですか……」


 そういえば、このスーパー弱体化にはミコトさんも憤慨ふんがいしていたな……。

 このせいで、ミコトさんは召喚直後に歩きキノコと壮絶な泥仕合を演じることになってしまった。自信満々に『光よ』とかなんとか言って、何も起きなかったあのときの光景が蘇る。


 そしてディースさんも、ミコトさんと同じようにナーフされていて……うむ、自分自身をナーフするというのも、なんだかすごい話だ。

 そう考えると、なんかちょっとえらいね。自分にも厳しく厳格にルールを適用するディースさん。立派である。


「まぁこの現状をむしろ楽しんでいくことにするわ。これから成長していくから、アレクちゃんも期待していてね?」


「あ、はい、僕も協力しますので、何か手伝えることがあったら遠慮なく言ってください」


「ありがとうアレクちゃん」


 はてさて、ディースさんはどんなふうに成長していくのかねぇ。

 とりあえず現状としては、能力値はほとんどまっさらの状態で、所持スキルが『神』スキルと『水魔法』スキルで……。

 ……わからんな。これからディースさんがどう成長していくのか、まったくもって予想できん。


 でもまぁ、ディースさんならちゃんとしっかり成長していきそうな気がするね。そこは信頼していいような気がする。

 ……いや、別に誰かと比べているわけではないのだけどね? 何故かハンマーをぶん回すだけになってしまったミコトさんと比べているわけではないのだけれど、なんとなくディースさんはちゃんと真っ当に成長して……ついでに太ることもないんじゃないかなって……。





 next chapter:神のルール

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