第578話 神鑑定2


「さて、それじゃあ今日はディースさんの鑑定をしてみるということで」


「そうね、楽しみだわ」


 村の案内や村人への紹介がある程度終わったところで、いよいよディースさんも、下界での本格的な活動が始まろうとしていた。

 しかしその前に、まずは自分のステータスをしっかり確認しておこうというのが本日の主旨なのである。


「『敵を知り、己を知れば、百戦危うからず』ってやつね?」


「え? あぁはい、そうですね」


「アレクちゃんの名言ね」


「あ、いや、それは……」


 確かにこの世界ではその名言を僕がパクってしまっているけど……。

 うぅむ。過去に僕が話した適当な妄言をすべて知られていると思うと、何かとやりづらいな……。


「それにしても、こうしてディースさんと一緒に村の中を歩くというのも、なんだか不思議な気持ちです」


「そうね。私もアレクちゃんと同じ気持ちよ? すごく幸せを感じているわ」


「ええはい、そうですねぇ」


 不思議な気持ちと言っただけで、別に幸せを感じているとは言っていないけど……。いや、でも新鮮で楽しい気持ちなのは間違いない。そこは僕も同意しますとも。


「そうだ、せっかくなら手をつなぎましょうか?」


「……手を?」


「仲良く手をつないで歩きましょう? 親子らしく、親子なのだし」


「親子らしく……」


 僕とディースさんが親子だという部分には、まだまだ議論の余地があると思われるが……。


 ……というか、前にもあったぞこんなこと。

 あれは確かナナさんのときだ。ナナさんが誕生して、親子だし手をつなごうと言われ、実際につないで歩き始めたんだ。

 そしてその直後に――レリーナちゃんと出会った。


 あれは怖かったなぁ。ナナさんとか削ぎ落とされそうになっていたものなぁ……。

 ……ここで手をつないだら、あの悪夢が再びやってきそうだ。なので今回ばかりは少し慎重にいきたい。せっかくレリーナノートでも三角判定をいただいたのだから、わざわざ刺激することはないと思う。


「やめておきましょうディースさん。世間的には、僕達はほぼ初対面ということになっています。いきなり手をつないで歩いていたら不自然ですよ」


「そう……。でも親子なのに……」


「そもそも十九歳の息子は、もうあんまり親と手をつなぐことはないのでは?」


「ん、そう言われると確かにそうかも……。なるほど、アレクちゃんもそういうお年頃なのね? 思春期とか反抗期とか、そういう時期なのね?」


 思春期はどうだろう……。さすがにもう思春期では――というか僕に思春期ってあったのかね?

 なにせ転生者だし、普通の人とは違うと思うのだけど……でも、どうなんだろう? 歳を重ねるにつれて体自体は変わっていったわけだし、自分が気付いていないだけで、やっぱりあったのかな?


 ……ふむ。なんだかんだでディースさんと親子の会話をしてしまっているような気がしないでもない?


「さておき、それよりも鑑定です。あくまで今回の目的は仲良くお散歩ではなく、ディースさんの鑑定ですからね」


「そうねぇ。まぁおそらくミコトと変わらないようなステータスになると思うけど」


「ほう?」


 そうなのか。まぁ同じ神だし同じ召喚獣だし、であれば似たものになるのかな?


「ということは、やはりレベル1で、種族神で、職業神で、称号神だったりの神づくしで?」


「そうだと思うわ」


「ふむふむ。となると――残りの問題は継承スキルですね」


 召喚獣は、召喚主の所持しているスキルをひとつだけ継承する。それが継承スキル。

 果たしてディースさんは、どのスキルを継承するのか。


「現在僕が所持しているスキルが――剣、槌、弓、火魔法、木工、召喚、ダンジョンですか」


「まぁ私はどれでもいいのだけどね。アレクちゃんからの贈り物なのだし、どれを貰っても嬉しいわ」


「いやいや、そう言ってくれるのは僕としても助かりますが、やはりここがエルフの森である以上、『火魔法』スキルは避けたいところです」


 火気厳禁だからねぇ。如何に創造神様といえど、火はあかんのだよ。


「別に私は『火魔法』でもいいのだけれど……まぁそうねぇ、あえて挙げるとすれば、個人的には『剣』スキルとかが結構気になるかしら」


「ほうほう、剣ですか」


「剣を使って体を動かすのも楽しそうだと思ったの。そういうのは今まであまりやってこなかったから」


「なるほど」


「それに、ちゃんと運動や食事にも気を付けないと、女神は太るということもわかったしね……」


「…………」


 まぁミコトさんの場合、僕から『槌』スキルを継承し、日々槌をぶん回しているにも関わらず、あの現状があるわけですが……。



 ◇



 というわけで、教会までやってきた僕とディースさんだったが――


「あー」


 ディースさんが挨拶代わりにローデットさんを抱きしめている。

 そしてディースさんの胸に埋もれながら、ローデットさんは気の抜けた声を上げている。


「胸がすごいですねー」


「ふふふ、ありがとうローデットちゃん」


 あまりにも率直すぎるローデットさんの感想と、これまた素直に感謝の言葉を述べるディースさん。なんとも言えないやり取りである。ほのぼのなのかな? 一応はほのぼのなやり取りと言っていいのかな?


「えぇと……そんなわけで今回は、ディースさんの鑑定をお願いしたいのです」


「そうですかー、わかりましたー」


「では料金は、僕の方から」


 僕はマジックバッグから硬貨を取り出し、いつものようにこれでもかといろんな料金を納めていく。……いつもニコニコのディースさんも、このときばかりはちょっと渋い顔。

 そういえば昔、教会をキャバクラ扱いしていることに苦言を呈されたこともあったっけか……。


「……いろいろと言いたいことはあるけれど、ありがとうねアレクちゃん」


「いえ……」


 苦言を飲み込んだディースさんから、支払いについて感謝の言葉をいただいた。

 というか、今のディースさんは一文無しだったか。これからはミコトさん同様、僕の方から毎月お小遣いを渡さねばいかんな。


「それじゃあ鑑定してもいいかしら?」


「どうぞー」


「ありがとう。さてさて、どんな結果が出るのか……少し緊張するわね。久々の感覚だわ」


 そうつぶやいてから、鑑定用水晶に手を置いたディースさん。

 さぁ結果はどうなのか。問題は継承スキルだ。果たしてディースさんが継承したスキルとはなんなのか。僕はディースさんに良い継承スキルをプレゼントできたのか。


 剣か、槌か、弓か、火魔法か、木工か、召喚か、ダンジョンか、果たしてディースさんの継承スキルは――



 名前:ディース

 種族:神 年齢:0 性別:女

 職業:神

 レベル:1


 筋力値 1

 魔力値 2

 生命力 1

 器用さ 1

 素早さ 1


 スキル

 神Lv2 水魔法Lv1


 称号

 神





 next chapter:精神と時の会議室

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