第557話 ユグドラビーチ、リゾート化計画
※『第557話 世界樹様のビーチ、リゾート化計画』の予定でしたが、都合により予定を変更してお送りいたします。誠に申し訳ございません。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
――海岸エリアである。
今日も今日とて、海岸エリア。
僕としては、レベル40に向けてのレベリング目的でダンジョンへ通いたいところではあるのだが、海岸エリアが実装された今、自分のことばかりを優先するわけにもいかない。
海岸エリアが出来たのならば――海岸エリアの改装も行わなければならない。僕にはその義務がある。ダンジョンマスターとして、やらねばならぬ責務なのだ。
そんな使命感っぽいものを胸に抱きつつ、こうして海岸エリアへとやってきた僕だったが――
「今回もよろしくお願いします――フルールさん」
「よろしく!」
というわけでフルールさんである。いつものコンビで、海岸エリアをより充実したエリアに改装していこうではないか。
「ちなみに、フルールさんはこのエリアに来たことが?」
「何度かあるよ? すごいよねー。海だもんねー。海とか初めて見た」
「ほうほう」
森に住むエルフならそうかもね。特にメイユ村とか、海から離れた内陸部に位置しているため、フルールさんのように初見の人も多いようだ。
そういうこともあって、みんなこのエリアを楽しんでいるみたいだけど――
「とはいえ、改良できる部分はたくさんあると思うのです。僕達がいろんな施設を追加したら、もっと快適に楽しくこのエリアを活用できるはずです。僕達ならば、そんな改装ができると信じています」
「おお! そうだね、きっとそうだよ!」
「ですよね! なので、二人で頑張りましょう!」
「頑張ろー!」
うむうむ。なんだか良い感じで士気を高め合えた気がする。
では始めよう。イメージとしては、リゾートビーチだ。この海岸を、みんなに楽しんでもらえるリゾートビーチへと改装しよう。
「この海岸エリアを、立派なリゾートビーチに…………ふむ」
「ん?」
せっかくならビーチの名前とかもあった方がいいんじゃないかな? 海岸エリアじゃちょっと味気ない気もするし、何か他の名前が……。
「……セルジャンビーチ?」
「うん……?」
いや、でも今回父はあんまり関係ないしなぁ。
……ここにもセルジャンパネルとか置いたら、セルジャンビーチって命名しても許されるかな?
もしくは、やっぱり世界樹様の名前を借りようか。何せここは『世界樹様の迷宮』だ。であるならば、このビーチを『世界樹様のビーチ』と呼んでいいはず。
そして、さらにそこから名前を発展させるなら――
「……ユグドラビーチ?」
「え……?」
ユグドラビーチは良いな。語呂も良さげな感じがする。
……でもどうなんだろう。ユグドラシルさんに怒られるかな。『ユグドラビーチ』と書いた看板とかも置きたい気持ちなのだけど、やっぱり怒られてしまうのだろうか?
「アレク、どうかした?」
「あ、すみません、なんでもないです。どうもしてないです」
まぁいいや、看板のことは追々考えよう。
兎にも角にも――ユグドラビーチ、リゾート化計画スタートである!
「ではでは、改装計画を始めていきましょうか」
「あ、うん。それで、アレクはどんな設備の追加を考えているのかな?」
「そうですね、まずは――椅子ですかね」
「あー、いつものやつだねー」
「……ええまぁ」
……何やら微妙に出鼻をくじかれた感。んー、まぁ確かにいつものやつではあるかな。
こういった改装は他のエリアでもちょくちょくやっているが、あんまり良いアイデアが浮かばなかったときなんかもあり、そういう場合は申し訳程度にベンチだけ増やしてみる上辺だけの改装が、今までにも何度か行われた過去がある。
「ですがフルールさん、今回はちょっと違います。椅子と言っても今まで設置してきたベンチのような物ではなく、一人用の寝そべるタイプの椅子を予定しています」
「へぇ? 寝そべるタイプ?」
「そうです。浜辺でゆったりリラックスできる椅子を設置したいのです」
いわゆるビーチチェア。こいつを設置していきたい。
ただの椅子ではないのだ。――決して今までのような苦し紛れのベンチ案ではないのだ。
「ちょっと待ってください。言葉だけではわかりづらいかと思い、絵も描いてきました」
僕はマジックバッグから自作のイラストを取り出し、フルールさんに確認してもらう。
「こちらを御覧ください。こんな感じの椅子です」
「どれどれ? ――あ、可愛い」
ビーチチェアの上で、大シマリスのフルフル君が仰向けでお腹を見せて、ぐでっと寝そべっているイラストである。
うん、まぁ今重要なのはフルフル君のイラストではなく、椅子のイラストではあるのだが。
「この椅子――ビーチチェアですね。これを作ろうと思います」
「なるほど、ビーチチェアか。確かに気持ちよさそうだね。それで、これをどれくらい作る予定?」
「そうですね――五十個くらい作ってみましょうか」
「……え? 五十?」
「二つセットとして、浜辺に並べていきましょう」
「そうなんだ。ずいぶんたくさん作るんだね……」
とりあえず足りないよりはいいかなって。たくさん作って、完成した物から順に設置していこう。
ああ、あと湖エリアに置いてもいいかもしれないね。ユグドラビーチで余りそうなら、あっちにも置いてこよう。ビーチチェアではあるが、ビーチ以外に置いてはいけないという決まりもないだろう。
「あと、アレクの絵にはテーブルも描かれているけど」
「ああはい、これも作りたいです。小さめの丸テーブルですね」
たぶんあったら便利なはず。ビーチチェアは二つセットと言ったが、その間にでも設置するつもりだ。
だからテーブルは――二十五個か。
ビーチチェアが五十個に、テーブルが二十五個。
……確かに結構な数だ。もはや業者である。全部完成するまでにはしばらく掛かりそうね。
「んー、椅子とテーブルと――あと、これは?」
続いてフルールさんが指差したイラスト。
そこに描かれている物は――
「ビーチパラソル――日傘ですね」
「へー、日傘かぁ。なんか良いね。優雅な感じ」
やはりこれも欠かせない。ビーチである以上、ビーチパラソルを欠かすわけにはいかない。
「しかしこれは……どちらかというとジェレパパさんの担当分野かもしれませんね」
「そう?」
「なんとなくですが、そんな気がします。僕もまだ迷っているのですが、素材に魔物の皮とかを想定しているので……」
パラソルの生地の部分、傘布っていうのかな? そこの素材に、動物だか魔物だかの皮を使うことを考えていた。だったらこれはジェレパパさんかなって――
「あ、そうだ、カラートードの皮を使いますか。あれならいろんな
しかもトード皮は、ジェレパパさんのホムセンに大量に余っている。うんうん、ちょうどいいね。在庫整理にもなりそうだ。
我ながら素晴らしいアイデアだ。これはもう、ジェレパパさんに感謝されてしまう可能性すらあるのでは?
「でもジェレパパさん、今は熊手で忙しいみたいだけれど……」
「あー、みたいですねぇ。僕もそんな噂は聞きました……」
どうやら無限熊手地獄が開催中との噂で、悲鳴を上げているという噂も……。
「――でもまぁ大丈夫でしょう。ジェレパパさんならきっと大丈夫です」
何せジェレパパさんには経験がある。今までも数々の無限地獄を乗り越えてきた実績があるんだ。
だから大丈夫。きっとジェレパパさんならば――無限熊手地獄も、無限ビーチパラソル地獄も、無限サーフボード地獄も、無限ビーチサンダル地獄も、全部乗り越えてくれるはずだと僕は信じている。
next chapter:キャッキャウフフ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます