第444話 総集編8 ――便利なスキル


 名前:アレクシス

 種族:エルフ 年齢:18 性別:男

 職業:木工師

 レベル:35(↑5)


 筋力値 24(↑3)

 魔力値 20(↑3)

 生命力 13(↑2)

 器用さ 45(↑6)

 素早さ 7(↑1)


 スキル

 剣Lv1 槌Lv1 弓Lv1 火魔法Lv1 木工Lv2 召喚Lv1 ダンジョンLv1


 スキルアーツ

 パリイ(剣Lv1) パワーアタック(槌Lv1) パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1) レンタルスキル(召喚Lv1) ヒカリゴケ(ダンジョンLv1)


 複合スキルアーツ

 光るパリイ(剣) 光るパワーアタック(槌) 光るパラライズアロー(弓)


 称号

 剣聖と賢者の息子 ダンジョンマスター エルフの至宝 ポケットティッシュ(New)



「――スキルはすごいわね」


「ありがとうございます」


 というわけで、引き続きエルザちゃんと一緒に鑑定結果の確認中である。

 僕の所持するスキルがすごいと、エルザちゃんからお褒めの言葉をいただいた。


「方向性の定まってなさがすごいわ。どれだけ迷走しているの?」


 ……あれ? あんまり褒められてない?


「戦闘系のスキルだけでも『剣』、『槌』、『弓』、『火魔法』……ちょっと手を広げすぎじゃない?」


「やっぱりそうですかねぇ……」


「いったいアレクは何を目指しているの? これじゃあまるっきり器用貧乏ってやつになってしまうでしょう?」


「むぅ……。ですが、いろいろと用途に応じて武器を使い分ける感じで……」


「使い分けているの?」


「いえ、あんまり……。なんとなく気分で変えるくらいで……」


「ダメじゃない……。じゃあもう意味ないでしょ。せめて二つくらいに絞りなさいよ」


「ぐう……」


 エルザちゃんの言う通りである。ぐうの音も出ない。

 正論でなじられ、ついでに尻尾でツンツンされてしまった。


 とはいえ、諸々仕方のない事情もあったんだ。

 『弓』と『火魔法』は初期スキルだし、『槌』はルーレット産である。この三つは僕に選択の自由なんてなかった。


 唯一僕が自発的に取得したスキルは、『剣』スキルのみ。

 これだって取得しないという選択肢はなかった。なにせ僕の父は剣聖なのだ。であるならば、そりゃあ僕だって『剣』スキルのひとつも覚えないとダメだろう。


 そんな感じで、わらわらとスキルが増えてしまったわけだが―― 


「ちなみにですが、現在は『水魔法』の訓練中だったりします」


「器用貧乏まっしぐらね……」


 でも『水魔法』は便利そうだったから……。

 それに僕の母は賢者だし、賢者の息子たるもの、せめて魔法も二種類くらいは使えなきゃダメかなって……。


「非戦闘系のスキルも、なんとも多種多様な……」


「ええまぁ……」


 こっちの方も、だいぶバラエティに富んでいる感じよねぇ……。


「とりあえず『木工』スキルはレベル2なのね。すごいじゃない」


「あ、はい。ありがとうございます。――なにせ僕は木工エルフなので」


「木工エルフ……」


 やっぱり木工エルフを名乗るからには、レベル2くらいはないといかんよね。

 まぁできたらそろそろ他のスキルもレベル2に上がってほしい気持ちもあるけれど。


「『召喚』スキルもすごいわね。そんなの持っていたんだ」


「ふふふ。実はそうなんです。サモナーです。サモナーエルフでもあったんです」


 結構なレアスキルだと噂の『召喚』スキル。これにはエルザちゃんもビックリだ。

 そのうちエルザちゃんにも自慢の召喚獣ヘズラト君をお披露目することがあるかもね。


「そして何より――『ダンジョン』スキル」


「ええはい。地元でダンジョンやってます」


「……ダンジョンって、そんな軽いノリでできるものなの?」


「まぁいろいろと事情がありまして」


 レアな『召喚』スキルよりも、さらにレアであろう『ダンジョン』スキル。

 これとかもう説明のしようがない。なんと言えばいいのかわからない。いろいろと事情があって取得することになったので、もうそのまま『いろいろと事情がありまして』と言う他ない。


「あ、そういえば、この町の近くにも――ダンジョンがあるらしいですね」


「そうね。この町から少し歩いた先にあるわ」


「確か名前が――」


「ラフトダンジョン」


 ラフトダンジョン――ラフトの町の近くのダンジョンなので、ラフトダンジョン。

 そんな名前のダンジョンがあるらしい。どうにも語感が『ラストダンジョン』っぽい響きのダンジョンである。


 語感こそ少し怯んでしまうものがあるけれど、浅い階層はあんまり強いモンスターも出ないとのことなので、そのうち僕も寄ってみようかと思う。

 せっかくだし、そこでダンジョン作りの勉強をさせてもらおうじゃあないか。


「それで、アレクもダンジョンを作っているってことよね?」


「そうですね」


「やっぱり名前とかあるの?」


「名前ですか? 名前は――世界樹様の迷宮です」


「うん?」


「世界樹様の迷宮です」


「アレクの迷宮なんでしょ?」


「……いろいろと事情がありまして」


 これまた深い事情があるので、あんまり深く突っ込まないでいただきたい……。


「……まぁいいわ。それにしても、本当にいろんなスキルを持っているわね」


「そうですねぇ」


 やっぱりほとんどはルーレットのせいなんだけど、改めて眺めてみると、器用貧乏と言われるのも納得だ。いったい何を目指しているのかと聞かれてしまうのも納得である。


「そのせいで、アーツも様々ね」


「ええまぁ」


 スキルの項目がようやく終わり、続いてスキルアーツの項目に移るらしい。


「まず最初のアーツが――『パリイ』」


「相手の攻撃を受け流すアーツですね」


「そこそこ目にするアーツね。アレクは『剣』スキルの『パリイ』だけど、『パリイ』自体はいろんなスキルで出現するアーツだし」


「そのようですね」


 最近は、よくこれで遊んでいたりする。


「次に――『パワーアタック』」


「そのまま思いっきりぶん殴るアーツですね。……そういえば昔、突進してきたワイルドボアに思いっきりブチかましたことがあります。両肩を脱臼しました」


「……危ないことをするわね」


 この当時は、まだ『パリイ』未取得だったんだよね。あの場面で『パリイ』があったらよかったのにねぇ。

 ……まぁでも、さすがにワイルドボアの突進は受け流せなくて、やっぱり脱臼していたような気がしないでもない。


「次に――『パラライズアロー』」


「僕の主力アーツです。超強いです」


「へぇ?」


 文句なしのメインアーツ。もうこれだけ使っていればいいってレベルだ。

 基本的に僕の攻撃は『パラライズアロー』に始まり、『パラライズアロー』に終わる。基本にして奥義。それが『パラライズアロー』である。

 ちなみに僕の『素早さ』が低い原因の大半は、このアーツにあるんじゃないかと疑っている。


「次に――『ニス塗布』」


「これもすごいですよ? なんでもできます」


「なんでも?」


あめとか作れます。今度プレゼントしますね? 是非ご賞味ください」


「……え、飴?」


「飴っぽいニスです」


「じゃあニスじゃない……」


 その辺り、未だに議論が残る部分ではある。


「えぇと、次に――『レンタルスキル』


「召喚獣のアーツを使うことができるんです」


「へぇ? じゃあアレクは、この鑑定に載っているもの以外にもアーツが使えるってこと?」


「そうなります」


 まぁ現状はヘズラト君の『エアスラッシュ』だけだったりもするが。

 でも楽しみだよね。ヘズラト君やミコトさんがこれからどんなアーツを取得するのか、僕も使えるってなると、それはとても楽しみ。


「最後に――『ヒカリゴケ』」


「…………」


「ん?」


 『ヒカリゴケ』は、なんとも形容しがたいアーツなのよねぇ……。


「……試しに使ってみますか」


「あら、見せてくれるのね」


「ええ。では――『ヒカリゴケ』」


 呪文を唱え、僕はヒカリゴケを生やした。

 とりあえず――僕の全身に生やしてみた。


「こんな感じです」


「うわぁ……」


 淡く輝くヒカリゴケを全身にまとった僕を見て、エルザちゃんが引いている。

 ……ちょっと失敗したかもしれない。テーブルとかにちょこっと生やせばよかった。


「あ、消えた」


「自由自在です」


 引かれてしまったので、慌てて消した。

 もちろん光だけではなく、こけごとだ。全部消したので、応接室に苔をばら撒く心配もない。

 その部分では、わりと便利なスキルアーツだ。


 ……うん? 便利? 便利とは?

 別に便利ではないな。例え苔が残ろうが消えようが、どっちにしろ、このアーツが便利だったことなんてない。


「とりあえず僕のスキルアーツはこんなところですかね」


「『ヒカリゴケ』の詳細がちょっと気になったのだけど……」


 ……ないんだエルザちゃん。今のが『ヒカリゴケ』のすべてで、詳細なんてないんだ。

 詳細もないし、便利でもなくて、なんの意味があるのかも定かじゃない。それが『ヒカリゴケ』というスキルアーツなんだ。


「もしかして、複合スキルアーツもこれなの?」


「はい? これとは?」


「『ヒカリゴケ』が融合したアーツなの?」


「あー、まぁそうですね……」


 エルザちゃんの言う通りで、僕の複合スキルアーツは全部『ヒカリゴケ』と他のアーツが融合したものである。


「なんか複合スキルアーツのらんはインパクトがすごいんだけど……なんで全部『ヒカリゴケ』との複合スキルアーツなの?」


「わかりません……。僕が知りたいくらいです」


 僕だって謎なんだ。エルザちゃんの疑問は、当然僕も浮かんだ疑問だ。

 でも答えは出ない。本当にいったい何故なのか。


「それで、この複合スキルアーツはどんな効果なの?」


「効果ですか……?」


「使うとどうなるの?」


「えぇと……『パリイ』した相手にヒカリゴケが生えたり、『パワーアタック』を当てた相手にヒカリゴケが生えたり、『パラライズアロー』を当てた相手にヒカリゴケが生えたりします」


「……どれだけ相手にヒカリゴケを生やしたいのよ」


 別に僕が生やしたいと願ったわけではないのだけど……。


「それで、ヒカリゴケが生えた相手はどうなるの?」


「別にどうにもならないです」


「じゃあなんなのよ……」


「なんなんでしょうねぇ……」


 本当になんなんだろうねぇ、この複合スキルアーツは……。

 いったいなんの意味があるのか。そして何故『ヒカリゴケ』以外は融合してくれんのか。僕だって『パラライズパリイ』とか『パラライズパワーアロー』とか、そういうのが使いたいんだ。それが何故『ヒカリゴケ』ばかりなのか。


 ……あるいは、『ヒカリゴケ』がなんか邪魔しているんじゃあなかろうか。

 これがあるせいで他のアーツが融合できないんじゃないかって、そんな心配をしてしまう僕がいたりする。





 next chapter:総集編9 ――すごい称号

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