第372話 チートルーレット Lv35
レベル35のチートルーレットを行うため、天界へ転送された僕であったが――またしてもディースさんに勧められ、天界にて一泊することとなった。
そして、その翌日――
「クロワッサンですか?」
「コルネットよ?」
「え?」
今日も女神様二人と朝食をとっていたのだけど、ディースさんの朝食はパンとコーヒーだった。
てっきりクロワッサンかと思いきや、そうではなくコルネットらしい。
「まぁ似たようなものね」
「はぁ……。えぇと、コルネット?」
「そう。コルネットとカプチーノ。今日はそんな朝食なの」
「なるほど……」
結局コルネットがなんなのかわからなかったけれど、とりあえずディースさんの朝食はコルネットとカプチーノらしい。
ちなみに僕の朝食は、前回同様パンとスープとサラダ。ミコトさんの朝食はピザとコーラだった。
「さてアレク君。朝食後には、いよいよレベル35のチートルーレットだ」
「そうですね。昨日に引き続きルーレットですね」
時間の流れ的に昨日と言っていいかは謎だが、とりあえず体感では一日ぶり。下界の時間だと五分ぶりとなるルーレットだ。
なんだか不思議な感覚だね。いつもは二年も間が空くのに、今回は翌日にルーレット開催とは。
とはいえ、ルーレットなんて何回やってもいいものだ。何回やってもわくわくするし、ドキドキする。
こうしてレベル5アップボーナスにより、二日連続で引けることになったわけだが、僕としては三日連続だろうが四日連続だろうが、引けるなら引けるだけありがたい。
「……うん?」
「どうかしたアレクちゃん?」
「ふと思ったのですが、前回当てたレベル5アップボーナスよりも――もっと大きくレベルアップするものとかもあるんですかね?」
レベル5アップ以上――例えばレベル10アップとかレベル20アップとか、そんな景品もあるのかね?
そんなものがあったなら、三日連続だったり五日連続のルーレットとなるわけだが。
「そうねぇ。残念ながらルーレットにどんな景品が含まれているかは教えてあげられないけれど――もしかしたら、あるかもしれないわね」
「ほうほう」
「ひょっとしたらレベル5アップどころか――レベル50アップボーナスなんてものもあったりね」
「レベル50!」
すごいな! それはすごい!
そんなものを引けたら、僕のレベルも今の倍以上になって、ルーレットも十回引ける。十連チャンでルーレットだ!
あー、いいなぁそれ。前回もそれが良かった。
もしも前回レベル5アップボーナスじゃなくて、レベル50アップボーナスを獲得できていれば――
…………。
僕は5リットルの薬を抱えて、飲みながら反復横跳びすることになっていたのかな?
◇
「それじゃあ行くわよー、チートルーレット――スタート!!」
「頑張れアレク君!」
「はい、ありがとうございます!」
というわけで、さっそくチートルーレットの開始である。
ディースさんがルーレットを回し、ミコトさんの声援を背に受けつつ、僕はダーツを構える。
一日ぶりということで、なんとなくダーツ
決して油断はしない。ここで油断したら、たぶん僕は外す。おそらく僕とか、こういう大事な場面でうっかり痛恨のミスをしでかすタイプの人間だ。
なので油断せず、慎重に丁寧にダーツに挑む。
「パー◯ェーロ! パー◯ェーロ!」
「パー◯ェーロ! パー◯ェーロ!」
「やー」
女神ズのコールを浴びながら、油断せずに投擲した僕のダーツは――見事にボードのど真ん中へ突き刺さった。
よしよし。今回も無事に成功だ。
チートルーレットは真ん中にタワシゾーンなんてものもないわけで、本家よりもずいぶん難易度が下がっているよね。
「お疲れ様アレクちゃん」
「ありがとうございます」
「じゃあ確認するわね」
「お願いします」
ディースさんがボードの確認に行き、僕はドキドキしながら結果を待つ。
毎度のことながら、緊張する瞬間だ。
「さて、今回当たったのは…………へぇ?」
へぇ? ……えっと、それはどうなの? 『へぇ』ってのは、どういうやつなの? どういう『へぇ』なの?
「なんだか前回今回と、変わり種の景品が続くわね」
「変わり種……?」
「――発表します」
「あ、はい」
景品の確認を終えたディースさんが、くるりとこちらへ振り返り、結果発表に移った。
さぁ結果はなんなのか。ディースさんが『へぇ』ってつぶやくような景品とは? 変わり種の景品とは?
果たしてそれは、一体どんな景品なのか――!
「おめでとうございます! ――――『
「再抽選権!」
……うん?
いや、よくわからない。再抽選? それは何?
「説明するわ」
「ん? 説明していいのか?」
「ええ、これはそういう景品なの」
「ほう?」
ミコトさんが口にした疑問は、僕も感じた疑問だった。いつもは『
よくわからないが、説明してくれるのならそれに越したことはない。ありがたく聞かせてもらおう。
「これからアレクちゃんには、もう一度ダーツをルーレットに投げてもらうわ」
そう言ってディースさんは、ボードに刺さっていたダーツを回収し、再び僕に渡してきた。
「もう一度ですか?」
「もう一度投げて――そこで当たった景品。それがアレクちゃんの欲しい景品ならば、それで景品は確定」
「ふむ」
「だけど、その景品が『あまり必要ではない』『もっと良い景品が欲しい』と思ったならば――再抽選することができるの」
「それで、再抽選権ですか……」
なるほど……。確かに少し変わり種の景品だ。
「もう少し具体的に説明すると――例えばアレクちゃんが次に『召喚』スキル(+ディース)を当てたとしましょう。その景品は、絶対必要よね?」
「絶対必要です」
「それならば、景品は『召喚』スキル(+ディース)で確定」
なんだか圧がすごくて、とてもじゃないが否定できなかった。『絶対必要です』と言わざるをえなかった。
もし実際に当たったとしても、そんな感じになりそうね……。
「逆にいらない景品なら……アレクちゃん的に、いらない景品って何かしら?」
「……タワシでしょうね」
「……まぁそうね。それじゃあ次にタワシが当たったら、再抽選権を行使したらいいわ」
「なるほど……」
ふーむ。いいね。悪くない。
この再抽選権自体はそこまでチートって感じもしないし、そもそも景品って感じすらしないけれど、決して悪くはない。レベル5アップボーナスと同じで、デメリットはない感じだ。
「再抽選権については理解できたかしら? 何か質問はある?」
「その権利は、使わなかった場合持ち越せるのか?」
「いい質問ね、ミコト」
僕が質問を考えていると、横からミコトさんが質問してくれた。いい質問だ。
持ち越しか。確かにそれができたらありがたい。今回使わなかったとして、レベル40や45のチートルーレットでも、その権利を使えたら――
「残念ながら、それはできないわ。『すぐにダーツを再投擲して、当たった景品を取得するか再抽選する』――その一連の行為までが、今回の『再抽選権』だから」
「そうか。それは残念だな……」
「他に質問はない?」
「ああ、大丈夫だ」
「それじゃあ改めて始めましょうか。チートルーレット――スタート!!」
……僕はまだ質問していないのだけど?
何やらいつの間にか質問の受付が打ち切られて、チートルーレットがスタートしてしまった……。
まぁいいけどさ、僕はあんまりいい質問が思い浮かばなかったし……。
「パー◯ェーロ! パー◯ェーロ!」
「パー◯ェーロ! パー◯ェーロ!」
というわけで、会議室に響く本日二回目のパ◯ェロコール。
『本当にパ◯ェロが当たったらどうしよう? 再抽選するのかな……?』――なんてことを一瞬考えたりもしたけれど、とりあえず気持ちを切り替え、僕はダーツを投擲する。
「やー」
再抽選の権利があるということで、もしかしたら唯一外しても大丈夫なチートルーレットだったかもしれない。
そんな余裕もあり、リラックスして投げた僕のダーツは、無事にルーレットボードに命中した。
「確認するわね」
「お願いします」
さてさて、一体何が当たったのか。
再抽選のこともあって、いろいろと考えてしまうね。
まぁそうだな――もしもとんでもないチートが当たったとしたら、それはもう悩む必要もなく、それで確定すればいい。
逆に、もしもとんでもなくダメな景品が当たったとしたら、それもまた悩む必要がなく、再抽選すればいい。
悩むのは――普通のやつだ。
普通のスキルとかが当たった場合、それはかなり悩みそう。
普通のスキルで我慢するか、それともさらに上を目指して再抽選するか……悩んで悶えることになりそう。
そういう普通のスキル。いたって平凡なスキルとかが当たったら――
「おめでとうございます! ――――『
そういうやつだよ……。
そういう普通のスキルだと、悩むのよ……。
next chapter:天界長期滞在プラン2
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます