第265話 『召喚』スキル、完全解説!


 ローデットさんが、すでに僕が知っている『召喚』スキルの情報を開示してくれた。


 ……いや、それに文句を言うのもおかしいだろう。ローデットさんは、良かれと思って教えてくれたんだ。すでに知っていたからって、文句を言うのはおかしい。

 そもそもスキルの解説なんて、修道女さんの仕事でもないはずだ。だからまぁ仕方ない、仕方ないのだ。


「ところでアレクさんは、もう何か召喚できるんですか? モンスターとか、アイテムとか、装備とか」


「アイテム……? え、そんなのも召喚できるんですか!?」


「そういうこともありますー」


 そうなのか! それは知らない情報だ! 新情報だ!


「さすがですローデットさん……!」


「はい? はぁ、ありがとうございますー」


 いやいや、さすがである。さすがローデットさん。

 僕ときたら、うっかり早合点はやがてんしてしまった。危うくローデットさんの解説力に疑問をもちそうになってしまった。反省せねば。


「そうですか、そういうのもあるんですね……。あ、僕の場合はモンスターです。モンスターを召喚できます」


「モンスターですかー」


「はい。今のところ――モンスターだけです」


 ミコトさんが召喚獣だということは、他の人には知らせないつもりだ。普通にユグドラシルさんの友人という扱いにする。

 正体不明の美人さんを召喚できるとか、わけわかんないしね……。


「今、召喚できたりしますか? なんでも死んじゃった場合は、しばらく召喚できなくなると聞きましたが?」


「へ? あ、いえ、召喚はできますけど……そうなんですか? 死んでも復活できるんですか?」


「そうらしいですよー? 死んじゃったり、アイテムとかなら破損はそんした場合は丸一日召喚できなくなるそうですが、一日経てば再び召喚できるようになるとか」


「はー、そうなんですか……」


 それも新情報だ……。


「さすがですローデットさん……」


「ありがとうございますー」


 なるほどなぁ、一日待てば召喚可能なのか。

 要はあれだ、デスペナってやつだ。デスペナとして、二十四時間召喚不可なわけだ。


 いやー、やっぱり今日来てよかったな。ローデットさんのおかげで、いろいろ知ることができた。


「それで、見せてもらってもいいですかー?」


「ええ、それは構いませんが……いいんですかね? 一応はモンスターですよ?」


「大丈夫ですー。お願いしますー」


「そうですか。では呼びますね――『召喚:大ネズミ』」


 ローデットさんが大丈夫と言うので、僕はフリードリッヒ君を召喚した。かれこれ一週間ぶりの召喚だ。


「キー」


「おー。こんな感じなんですねー。大ネズミですかー」


「そうです、大ネズミの――ヘズラト・モモ・ラタトスク・トラウィスティア・フリードリッヒ・ヴァインシュタイン二世です」


「……はい?」


 ……まぁそうなるわな。こんな呪文みたいな名前を聞かされたら、そりゃあこんな反応になるわ。


「大ネズミ君の名前です」


「長いですね……」


「えぇと、他の人にも見せたら、みんな名前を付けたがりまして……」


「へー、じゃあ私も付けていいですか?」


「え? ええ、そうですね……。フリードリッヒ君も喜ぶ……のかな?」


「キー」


「『是非よろしくお願いします』と、言っています」


 さすがだフリードリッヒ君。なんとも空気が読める大ネズミである。


「じゃあですねー――『リンゴ』で」


「リンゴ?」


「さっき食べたんです」


「……そうですか」


 わりと雑なネーミングだな……。いやまぁいいんだけど。


「これでさっきの名前に、リンゴが加わるんですか?」


「そうですね、では新たな名前は――『ヘズラト・リンゴ・モモ・ラタトスク・トラウィスティア・フリードリッヒ・ヴァインシュタイン二世』ということで」


 なんか知らんが、名前の中で果実が二つ実ったな。


「キー」


「『良い名をありがとうございます』と言っています」


「そうですかー。リンゴちゃんが喜んでくれてよかったですー」


 さすがだフリードリッヒ君。社交性がある。

 ……それにしても、本当にみんな好き勝手に名前を呼ぶな。


「ところでですね、ちょっとローデットさんに伺いたいことがあるのですが」


「なんでしょう?」


「僕はなんというか……ふと気が付いたらフリードリッヒ君を召喚できるようになっていたんですけど、召喚獣や召喚アイテムというのは、どうやったら増やせるのでしょうか?」


 いろいろ召喚できるのなら、召喚してみたい。

 召喚獣も増やしたいし、アイテム召喚もしてみたい。一瞬で変身するかのように武器や防具を装着できたら、格好良い気がする。


 というわけでローデットさんに質問を投げかけたところ――何やらフリードリッヒ君が、ほんの少しだけそわそわし始めたのを感じた。

 どうやら、自分に不満があって、捨てられてしまうのではないかと不安になったようだ。


 ふふふ……ういやつよ。


「いえ、もちろんフリードリッヒ君に不満はないのですが、少し気になりまして」


「そうですねぇ、召喚獣の増やし方ですかー。そこはあんまり決まっていないみたいですねー」


「そうなんですか?」


「例えばリンゴちゃんは大ネズミですけど――アレクさんは、どうやったら大ネズミを召喚獣として契約できると思いますか?」


「む?」


 逆に質問されてしまった。どうやったら大ネズミを召喚獣にできるかだって?


 普通に考えたら、仲良くなったりお願いしたりって感じなんだろうけど……なにせモンスターだしな。

 モンスターである普通の大ネズミを相手に、好感度を上げていくっていうのは難しいだろう。


 となると――


「やっぱり戦うんですかね?」


「そうですねー。大ネズミと何度も戦闘を重ねたり、大ネズミに詳しくなったり、たくさん食べたりしたら、召喚獣として呼び出せるようになるらしいですー」


「へぇ……」


 たくさん食べても召喚獣になるのか……。それで召喚獣になってくれる仕組みがわからんな……。


 んー。あるいはスキルとかと似た感じなのかな?

 スキルも訓練したり知識を深めたりすると覚えることができる。それと似た感じで、『詳しくなれば召喚獣を覚える』って感じなのだろうか?


「相性が重要だったりするらしいですねー」


「なるほど。相性ですか」


 それもスキルと似ているな。スキルも自身のもつ相性や才能によっては、取得できないことがあると聞く。

 ということはつまり、僕は大ネズミと相性が良かったのか……。


「アレクさんも、大ネズミ以外に相性が良いモンスターがいたら、召喚獣にできるかもしれないですねー」


「ふむ……」


 相性が良いモンスターか……。

 なんだろう……。なんとなくだけど、そのうち歩きキノコが召喚獣になる未来しか見えない……。





 next chapter:ヘズラト・ヘズラト・ヘズラト・リンゴ・モモ・イチゴ・モモ・レモン・アレアリ・ダモクレス・ラタトスク・トラウィスティア・フルフル・フリードリッヒ・ヴァインシュタイン二世

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