第264話 『召喚』スキル、徹底解説!


 チートルーレットで『召喚』スキル(+ミコト)を取得してから一週間が経った。


「というわけで、今から教会へ行ってくるよナナさん」


「もういいのですか? 何やら事情があって行きたくないとおっしゃっていましたが?」


「うん、もう大丈夫…………たぶん」


 まぁ、あんまり大丈夫ではないかもしれない。

 本当なら、もうちょっと時間を置いた方がいいような気がしないでもない……。


「そもそも、何故教会を避けていたのですか?」


「んー……。教会へ行ったら、鑑定することになるでしょ?」


「はい? えぇと、そうなのでしょうか?」


「そうなのよ」


 教会へ行ったら、お金を払って鑑定する。それがルールなのよ。


「それで鑑定したら、きっと僕には『召喚』スキルが付いていると思うんだ」


「まぁそうでしょうね」


「でね? 僕は一週間前にレベルが上がったばっかりでしょう? そのすぐ翌日に教会へ行って『召喚』スキルが付いていたりしたら……なんかちょっと疑わしくない?」


「疑わしい?」


「もしかしたらローデットさんに、『こいつ、レベル25に到達した瞬間に『召喚』スキルを手に入れたな?』とか思われそうじゃない?」


「ローデット様、だいぶ口が悪いですね……」


「いや、実際にはそんな口調じゃないと思うけど……」


 まぁとにかく、僕は今までチートルーレットによって――レベル5で『木工』スキル、レベル15で『ダンジョン』スキル、レベル20で『槌』スキル、レベル25で『召喚』スキルを手に入れてきた。


 つまり僕は――レベルが5の倍数に到達したところで、何かしらのスキルを取得することが多いのだ。

 もういい加減ローデットさんも、レベルとスキル取得の法則に気付いてしまうやもしれない。チートルーレットのことを隠したい僕からすると、それはあまりよろしくない事態だ。


「そんなわけで、せめて一週間は間を置きたかったんだ」


「はぁ……。でしたらいっそのこと、一ヶ月ほど置いたらどうです?」


「それはそれで不自然だよね……」


 特に理由もなく、いきなりそこまで間を空けたこともないしなぁ……。

 前回行ったときも、また二週間後に行きますって伝えちゃったし。


「まぁローデットさんに『召喚』スキルのことをいろいろ聞きたいしさ、とりあえず行ってくるよ」


「そうですか。では、いってらっしゃいませマスター」


「うん。いってきます」



 ◇



 というわけで教会へとやってきた。

 僕は扉を開け、元気よく挨拶しながら中へ入る。


「こんにちはー、アレクでーす」


「はーい、ローデットですー」


 おう、ノリがいいなローデットさん。

 とりあえず起きているようなので、僕はそのまま応接室へ向かう。


「入って大丈夫ですか?」


「ちょっと待ってくださいー。今着替えているところでしてー」


「あー。わかりましたー」


 ローデットさんは、今着替えているらしい。

 ……着替えているらしい!


 ……なんだろうね。もしもラブコメ主人公なら、ここでうっかり部屋へ入ってしまってラッキースケベでも起こすのだろうに、僕ときたら華麗に回避してしまった。


 ……いや、いいんだ。仮に今ので侵入していたら、普通にいけないことだ。

 普通にノゾキとかそういうやつだ。ノゾキにならなくて済んだんだ。だから悲しむこともないんだ。きっとそうだ。


「もう大丈夫ですー」


「はーい、失礼しますー」


 というわけで、応接室へ入る。


「では、こちらをどうぞ」


「ありがとうございますー。ではアレクさんもどうぞー」


「ありがとうございます」


 僕はローデットさんにお金を払ってから、ソファーへ座る。


「ところで、次に来るのは二週間後って話だったかと思いましたけど?」


「そのつもりだったんですが、ちょっと事情が変わりまして……とりあえず先に鑑定してもいいですか?」


「いいですよー?」


 軽く世間話をしてから鑑定しようかとも悩んだけれど、先に鑑定を済ませてしまおう。


「ではさっそく――」



 名前:アレクシス

 種族:エルフ 年齢:16 性別:男

 職業:木工師

 レベル:25


 筋力値 18

 魔力値 14

 生命力 8

 器用さ 33

 素早さ 6


 スキル

 剣Lv1 槌Lv1 弓Lv1 火魔法Lv1 木工Lv2 召喚Lv1(New) ダンジョンLv1


 スキルアーツ

 パワーアタック(槌Lv1) パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1) ヒカリゴケ(ダンジョンLv1)


 複合スキルアーツ

 光るパワーアタック(槌) 光るパラライズアロー(弓)


 称号

 剣聖と賢者の息子 ダンジョンマスター



「あ!」


「ふむ……」


 鑑定結果には『召喚』スキルの文字が載っていた。

 というか『召喚』スキルだけだ。ミコトさんの名前もないし、大ネズミのフリードリッヒ君の名前もなかった。


 召喚獣は載らないんだね。

 まぁそれは助かるかな。もしも『女神』とか書かれても困るし、フリードリッヒ君の長いフルネームを書かれても困る。


「アレクさん! スキルが増えていますよ!」


「えっと、そうなんですよ。何やらですね、そんな気配というか感覚がありまして……」


「なるほどー、スキルを覚えた感覚ですか?」


「ええまぁ、そんな感覚が……」


 ということにしてみた。鑑定結果から『召喚』スキルの取得を知ったフリをするよりも、そっちの方が自然に対応できるだろう。

 そんな考えもあって、今回はいつもの二週間後ではなく、一週間後の来店にしてみたわけだ。


「すごいですねアレクさん。なんだかアレクさんは、どんどんスキルを覚えていきますねー」


「ええまぁ、ええまぁ……」


「すごいですー」


「いやいや、そんなそんな……」


 ローデットさんが、僕をもてはやしてくれる。


 もちろん褒められて嬉しい気持ちもあるけれど……ちょっぴり気まずい気持ちもあるかな。実際にはルーレットでどんどん手に入れているだけだしさ。

 そりゃあ僕だってレベル上げを頑張ってはいるけど、そこまで苦労しているってわけでもないからなぁ……。


「『召喚』スキルですかー。なるほど、そうですかー」


「そうですねぇ。『召喚』スキルですねぇ」


「説明を聞きますか?」


「あ、お願いします」


 ローデットさんが解説モードに入った。拝聴はいちょうしよう。


「『召喚』スキル――簡単に言うと、自分が契約した召喚獣なんかを、呼び出したり引っ込めたりできるスキルですねー」


「ふんふん」


「召喚には魔力が必要で、召喚中も常に魔力を消費し続けると聞きますー」


「ほうほう」


「召喚獣は、それぞれ個別にレベルが設定され、最初はレベル1から始まるらしいですー」


「ふむ……」


「召喚者と召喚獣は、ある程度意思疎通いしそつうできるって話ですねー」


「…………」


 なるほど……。

 いや、なんというかその情報は……。


「どうかしましたか?」


「あ、いえ……」


 まいったな。どれもすでに判明している情報だ……。


 うっかり自分で検証したり、ユグドラシルさんやミコトさんに話を聞いてしまったばっかりに、解説キャラとしてのローデットさんの役目を奪ってしまっていた……。





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