第254話 もしもしの人


 種族:エルフ 年齢:16(↑1) 性別:男

 職業:木工師

 レベル:25(↑1)


 筋力値 18(↑1)

 魔力値 14

 生命力 8

 器用さ 33(↑1)

 素早さ 6(↑1)


 スキル

 剣Lv1 槌Lv1 弓Lv1 火魔法Lv1 木工Lv2 ダンジョンLv1


 スキルアーツ

 パワーアタック(槌Lv1) パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1) ヒカリゴケ(ダンジョンLv1)


 複合スキルアーツ

 光るパワーアタック(槌) 光るパラライズアロー(弓)


 称号

 剣聖と賢者の息子 ダンジョンマスター



 というわけでレベルが上っていた。無事にレベル25に到達だ。


「おめでとうございますー」


「ありがとうございます」


 レベルアップともなれば、今日はちょっとソファーに腰を下ろしてお話させてもらおうかな。


 さすがに毎日来て長時間話すのは悪いと思い、最近は鑑定だけしてすぐに帰っていたのだ。

 ……まぁ、そのせいか今日もうっかり帰りかけてしまったわけだが。


「いやーようやくですね、ようやくレベル25です。上がったのは『筋力値』と『器用さ』と『素早さ』で――『素早さ』!?」


 なんと、『素早さ』が上がっているじゃないか……。


「あー、アレクさんの『素早さ』が上がるのは珍しいですねー」


「ですねぇ……」


 ずいぶん長いこと『素早さ』たったの5で止まっていたが、ようやく6に上ってくれたか……。


 というか、ひょっとしてこれは……タイムアタックを頑張った成果が出たのかな?

 どうなんだろう。そんな気がしないでもない。


 まぁあの矢切りマラソンはもうしないけど、普通のタイムアタックは続けてもいいかもしれない。

 そうしたらいつの日か、クソザコナメクジから脱却できる日が来るかもしれない。


「僕としてはこの調子で『素早さ』や『生命力』を上げていき、バランスのいい能力値にしたいところですねぇ」


「バランスですか?」


「できたら均等にしたいんですよ」


 そういうステ振りが好きなのだ。


「『素早さ』と『器用さ』、6と33ですよ……?」


「…………」


 いや、うん。確かに今は相当な開きがあるけれど、いずれはならしていきたい、いずれは。


「あ、それで電話を――じゃなくて、通話の魔道具をお借りしたいのですが」


「いいですよー?」


 無事にレベル25に到達したので、世界樹教会本部に電話しよう。このことを早くユグドラシルさんに伝えねば。


 何故だか知らないけど、僕がルーレットのために天界へ転送される瞬間を、ユグドラシルさんは非常に見たがっている。『今回こそは、是非とも頼むぞ』との言葉も受けている。


 日頃からお世話になっているユグドラシルさんだ。是非ともその期待に応えたい。そろそろいい加減応えたい。

 実はそんな理由から、僕はここ数週間で集中的に鍛えて、毎日鑑定に通っていたわけだ。


「ん? あの……?」


「はい」


「えっと……あぁ」


 そうか、お布施ふせを忘れていた。

 ローデットさんがまったく動こうとしないので何かと思ったけど、そういえば通話の魔道具を借りるのにもお布施がいるんだった。

 確か電話の使用料は、鑑定料の三倍だったかな?


「では、こちらをどうぞ」


「ありがとうございますー。じゃあ、ちょっと待っていてくださいねー」


「はい。お願いします」


 僕が硬貨を手渡すと、ローデットさんが立ち上がり、移動を始めて……部屋の棚に置いてあった通話の魔道具を手に取り、戻ってきた。

 ……すぐそこにあったのか。


「どうぞー」


「ありがとうございます。確か箱を開けたら通話できるんですよね?」


 宝石箱の形をした通話の魔道具。上蓋を開けると、そのまますぐに通話できたと思った。


「そうですー。魔力を補充してから箱を開けると、本部と通話できますー」


「……魔力を補充?」


「はい。補充しないと通話できないですー」


 ……どうやら通話の魔道具は、現在魔力切れ状態らしい。

 前回はローデットさんが魔力を補充しておいてくれたと思ったけど、今回はしていないらしい。


 これはひょっとすると、自分で魔力を補充しろということか?

 いや、別にいいけどさ……。でも確かこれは、そもそも毎朝ローデットさんが補充する決まりって話だと思ったけどなぁ……。



 ◇



「そうなんですよ、ユグドラシルさんがどうしても知らせるようにと」


「なんででしょうねぇ?」


「なんでですかねぇ。なにせ神様の言うことですから、僕にはちょっと」


 魔道具の魔石に手を置き、魔力を補充する僕。

 その間、ローデットさんと世間話をしていた。話題はレベル25をユグドラシルさんに知らせなければいけない件についてだ。


 その理由をローデットさんに教えることもできないので、適当にユグドラシルさんのせいにした。

 というか僕だって、ユグドラシルさんが何故そこまで僕の昇天シーンを見たいのか理由がわからない。


「そんなわけで、ここ最近は毎日教会へ寄っていたんです。すみません、毎日毎日お邪魔しちゃって」


「いえいえ、私も暇ですからねー。……でもそうなると、明日はもう来られないんですか?」


「あぁ、そうなりますね。次に来るのは、また二週間後になるかと思います」


「そうですかー。待ってますねー」


「へ? ……あ、はい」


 待っててくれるのか……。二週間後を、そんなにも心待ちにしてくれるのか……。

 そこまで言われたら、是が非でも来るしかないな。


「ん、そろそろいいですかね?」


「はい。大丈夫だと思いますー」


 そこそこ長い時間魔力を込めていた通話の魔道具。もう十分だろう。


「では、始めますね」


「どうぞー」


 僕はローデットさんに確認をとってから、魔道具の蓋を開け、通話を開始した。

 そうしてしばらく待っていると――


『はい。森と世界樹教会本部です』


 箱から声が聞こえた。どうやら無事に繋がったらしい。


「もしもし、メイユ村のアレクと申しますが――」


『もしもし!? 今、もしもしって言いましたか!?』


「おう……」


 そうだった、この世界には『もしもし』がないんだった。またしてもうっかり使ってしまった。


 そして『もしもし』に対し、妙に強い関心を抱く教会本部の人。

 この人、前回話したのと同じ人かな……。





 next chapter:僕はもう疲れたよ。なんだか、とても眠いんだ

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