第150話 才能
名前:アレクシス
種族:エルフ 年齢:13(↑1) 性別:男
職業:木工師(New)
レベル:16(↑1)
筋力値 11(↑1)
魔力値 7
生命力 6
器用さ 23(↑2)
素早さ 4
スキル
弓Lv1 火魔法Lv1 木工Lv2(↑1) ダンジョンLv1
スキルアーツ
パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1)
称号
剣聖と賢者の息子 ダンジョンマスター
「あ」
「あ」
「お、おぉぉ……。ついに、『木工』スキルがレベル2に……」
「やりましたねーアレクさん」
「ありがとうございますローデットさん」
お祝いしてくれるローデットさんに感謝を伝えてから、改めて鑑定結果を確認する。
相変わらず
木工師と、『木工』スキルレベル2か……。
「そういえば昔、もっているスキルで職業欄は変わると聞きましたが……」
確か父だったかな? 『一番熟練度が高いスキルが、職業に影響する』とか、そんなことを言っていた気がする。
「そうですねー。アレクさんの『木工』スキルがレベル2になったので、職業が木工師になったんですねー」
「なるほどなるほど」
ようやくスキルのレベルが上がって、ようやく職業欄の『見習い』が取れたわけだ。
そして僕は、ついに
いやまぁ、それが嬉しいかと聞かれると、なんとも言えないけど。
木工師なぁ……。やっぱり弓士とか剣士とか魔法使いの方が、格好良いと思ってしまう僕がいる。
というか、できたら剣士か魔法使いになりたいんですけど? 僕は剣聖と賢者の息子なんですけど?
……とはいえ、所持スキルで職業が変わるということは、『木工』スキル以上に『剣』スキルか魔法系のスキルを伸ばさなければ、剣士にも魔法使いにもなれないということだ。
そう考えると、僕が剣士か魔法使いになる未来は、もはや絶望的かもしれない……。
未だ僕は『剣』スキルを手に入れることすら叶わないというのに、これからも『木工』スキルはにょきにょきと伸びていく予感がするのだ……。
「すごいですねーアレクさん。まだ十三歳になったばかりなのに、もうレベル2に到達ですかー」
「えぇと……すごいんですか?」
少し気になったのでストレートに尋ねてしまったが……よく考えると自分から『僕ってすごい?』などと尋ねてしまうのは、結構恥ずかしい行為な気もする。
……どうせ恥ずかしい思いをしながら尋ねるのなら、異世界転生者らしく『また俺何かやっちゃいました?』なんて聞けばよかったかな?
いやけど、たぶんそれほどは大したこともやってなさそうだし……。
「前に、アレクさんが木こりになるための話をしましたよね?」
「あー、そういえば聞きましたね。確か『伐採』スキルの取得やレベルアップのためには、毎日木を伐採しなければいけないとか」
僕は木こりにはならないけど、そんな話を聞かせてもらった気がする。
「そうですー。レベル1からレベル2に到達するためには、毎日木を切り続けて最低でも五年、長ければ数十年かかりますー」
「前にそう教えてもらいましたね。それでも才能がないと、レベルアップしないって話も……」
「なのにアレクさんは、十三歳でレベル2に到達したんですー。すごいですー」
「え? えー? いや、そんなことはないですけどー」
「すごいですー」
「いやー」
人気ナンバーワンキャバ嬢の話術によって、気を良くしてしまう僕。
しかしそう聞くと、実際に僕はなかなか大したものじゃないか?
六歳で木工の世界に飛び込み、七年間の修行を経て、十三歳で見習いを卒業して一人前の職人になったんだ。
それはなかなかすごいことで、僕は頑張ったんじゃないか……? そうだよね、自分の努力は認めてもいいよね。うん、僕は頑張った。
「あ、けど才能がないとレベル2になれないんですよね?」
「そうですねー」
「え、じゃあ職業欄から『見習い』が一生取れない人もいるんですか……?」
「才能のない人はそうですねー」
「うぁ……」
それは、なんだか切ない話だ……。
「才能がない――自分に合っていないスキルの練習ばかりしていて、どのスキルもレベル2に到達できなかったら、ずっと職業は見習いのままですー」
「そうですか……」
それは悲しいな……。どんだけ頑張っても報われないってのは、とても悲しい話だ……。
とすると、とりあえず僕は『木工』スキルの才能があったってことになるんだけど……どうなんだろうね?
僕の『木工』スキルは、チートルーレットで手に入れたスキルだ。果たして僕には元々『木工』スキルの才能があったのか、それともスキルを獲得した時点で、あとから才能を植え付けられたものなのか……。
どちらかといえば、後者の方が望ましいかもしれない。
神様に与えられた才能と考えれば、なんとなくレベル3以降にも到達できそうな気がする。そこまで保証された才能な気がする。
「それにしても、スキルレベルが上がって職業も変わったわけですけど、まったく気が付きませんでした」
「そうですか?」
「はい。木工は毎日やっているんですけどね」
毎日何かしらの木工作業をしている僕だけど、全然気が付かなかった。
「うーん……。まぁスキルの方は、気付かなくてもしかたないですー」
「そうなんですか?」
「レベルが上がったからと言って、突然技量が上がるわけでもないですからねー。むしろスキルレベルって、技量が上がったことでレベルが上がる印象を受けますー」
「あー。確かに僕もレベル1から今までで、だんだん木工技術が上がっているのは感じていましたね」
自室のフィギュアラックを見ると顕著だ。あれを見れば、だんだん僕の腕前が上がっているのを確認することができる。
なるほど。『レベルが上がれば技術が上がる』わけではなく、『技術が上がれば、その技術に見合ったレベルが設定される』――そういう感じなのかな?
「けど、職業が変わりましたからねー。そこでは差が出てもおかしくないんですけど」
「職業ですか?」
「『木工師見習い』の時点で、木工作業をするには好影響があったはずなんですー。そこから『木工師』に進化したわけで、さらに良い影響があるはずなんですー」
なんらかの補正が――より強い補正が働いているはずなのか。……気付かなかったけどなぁ。
「うーん。気が付かなかっただけで、何か変わったんですかね?」
「そうだと思いますけどー」
「意識しながらやったら、少しはわかりますかね?」
「試しに何かやってみたらどうですかー?」
「そうですねぇ」
「じゃあどうぞー」
「……え? 今?」
「はい」
え、今やれと言うの? 自宅に戻ってから軽く確認してみようかと思ったんだけど……今ここでやるの?
「完成した人形とかおもちゃとかを見せてもらったことはありますけどー、私はアレクさんが木工をしているところは見たことがないので、見てみたいですー」
「え? そうですか? いやー、ちょっと照れますね?」
そんなふうに言われると、僕としても悪い気はしない。
なんだかローデットさんは、瞬く間に僕の気分を良くしてくれる。瞬く間に僕は、満ち足りた気持ちになってしまう……。
これは
「えぇと、じゃあ軽くやってみますね?」
「お願いしますー」
ローデットさんの言葉を受け、とりあえずマジックバッグから木工道具を取り出した。
さて、それじゃあ何を作ろうか――
少し悩んだが、彫刻画を彫ることにした。ローデットさんをモデルに、木の板で彫刻画だ。
基本的にモデルを木で再現することしかできない僕は、口を半開きにして寝ているローデットさんしか、昔は彫ることができなかった。
しかし、そこそこ付き合いも長くなって、のんびりと二人で雑談する機会も多い。今では穏やかに
そんなわけで、木の板に笑顔のローデットさんでも彫ろうと思う。
……なんだか懐かしいね。思えば彫刻画は、一番最初に僕が作った木工作品だ。木工シリーズの第一弾は、『彫刻画』だったのだ。
とりあえず省略できるところは省略しつつ、十分か二十分程度でささっと仕上げたい。
そんな計画を立てつつガリガリと板を削り、僕は木の板にローデットさんを描いていく。
途中ローデットさんに、「すごいですー」「あ、これは私ですか? 私ですね?」「完成したら欲しいですー」なんて言われて、僕はまたしても気持ちよくなってしまう。
そうしてローデットさんに気持ちよくされてしまいながら彫刻画を彫り進めていたのだけど……ふと、ローデットさんの声が聞こえなくなったことに僕は気が付いた。
どうしたのかと僕が視線を
いつの間にかローデットさんはソファーで寝ていた。――寝るんかい。
……いや、まぁいいんだけどさ。
元々は職業欄の違いによる木工技術の変化を調べるためだったのだから、別にローデットさんが寝ててもいいんだけどさ……。
とはいえ、ローデットさんが見たいと言ったから始めたのに。……というかね、なんとなく落ち着かないんだよね。
すぐ側で
「これも、敏腕キャバ嬢の妙技なんだろうか……」
あえて
今日はローデットさんから『才能』の話をいろいろ聞かせてもらったけど、やっぱりローデットさんには、キャバ嬢としての才能があるんじゃないだろうか……。そんなことを思う一日だった。
next chapter:女の子の髪の毛を収集する変態
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