第79話 チートルーレット Lv10
「はいこれ」
「ありがとうございます」
僕はディースさんからダーツを受け取った。
天界へ来て、いきなりの神様同士のバトルがあったり、穏やかに歓談したり、ひどい辱めを受けたりと――いろいろあったが、ついにレベル10のチートルーレットが始まる。
……ちなみにダーツには、デフォルメされた笑顔の僕とディースさんが描かれていた。芸が細かいね。
「いよいよだね、頑張れアレク君」
「ありがとうございますミコトさん。是非とも今回は、戦闘用のチートが欲しいところですが……」
「ああ、そういえばアレク君は、ずいぶん初狩りを気にしていたね」
「ええ、まぁ……」
なにせ僕の初戦闘――異世界転生者である僕の初戦闘だ。そりゃあまぁ、普通は何かあるよね……。
「みんなも危険はないと言っていたし、そこまで心配しなくてもいいんじゃないかな?」
「ダメよミコト。そうはいってもアレクちゃんは初めてモンスターと戦うのよ? 何が起こるかなんてわからないでしょう? いくら警戒しても、警戒し過ぎなんてことはないと思うわ」
「それもそうか……じゃあ、何か戦いに役立つものが手に入るといいね」
「はい」
……ミコトさんもみんなと同じように、『大丈夫だ、問題ない』と言ったが――ディースさんは『何が起こるかわからない』と言った。
一番あの世界のことを知っているディースさんがだ……。
これはやはり、何かしらのピンチやアクシデントが訪れるのでは? そう考えるのは
……まぁ、ただの過保護な母親ムーブってだけな気もする。
「じゃあ、行くわよアレクちゃん?」
「お願いします」
「チートルーレット――スタート!!」
こうしてチートルーレットが――運命の歯車が回り始めた。
この結果で僕の運命が決まる。狙うは戦闘用チート! 是が非でも、何が何でも手に入れるんだ!
そんな決意を胸に、僕は――
「パー◯ェーロ! パー◯ェーロ!」
……シリアスな空気が台無しなんですけど?
「あ、あの」
「パージェー……え? 何かしらアレクちゃん?」
「いえ、ちょっとコールが気になるのですが?」
「コール?」
「はい」
「あ……もしかしてアレクちゃんは、もう日本でパ◯ェロを販売していないことを気にしているのかしら?」
「え?」
いや、そんなことは別に……というか売ってないんだ、知らなかった。
「安心してアレクちゃん。海外ではまだ売っているわ」
ディースさんが良い笑顔をしながら、僕に向かって親指を立てた。
いや、意味がわからない。ちなみに日本も海外も、すでに僕からしたら異世界だ。
……そもそもの話、僕はパ◯ェロが当たったら困るんだ。
実は今後もチートルーレットで何か当たったら、ユグドラシルさんに貰ったことにしてしまおうと考えているんだけど……さすがのユグドラシルさんも自動車は無理じゃないか?
それに、初狩りで自動車が活躍するとも思えないし――いや、どうだろう、案外いけるのか?
十歳の少年が自動車でモンスターに突撃するシーンは、なかなかシュールな絵だと思うけど……。
車の運転はかなり久々なんだけど、大丈夫だろうか? ペダルに足が届くかも不安だ。今世では無免許だけど、それは仕方ないよね?
「パー◯ェーロ! パー◯ェーロ!」
僕が自動車の活用法に悩んでいると、いつの間にかコールも再開していた。
……うん。なんとなく自動車でも大丈夫な気がしてきた。
よし行くぞ、狙うはパ◯ェロか戦闘用チートだ! いざ――!
「やー」
いつもの掛け声とともに投擲された僕のダーツは、『トスッ』という心地よい音を響かせながらボードに突き刺さった。まずは一安心。
僕はダーツがボードにしっかりと刺さっているのを確認するやいなや、視線をボードからディースさんに移した。どうせこの真っ黒なボードを見ても、何もわかりはしない。
「ふむふむ……なるほど」
ディースさんはルーレットの回転を止めて、ダーツの刺さった場所を確認している。
――そして確認が終わり、こちらへ向き直った。
……さぁ頼むぞ、パ◯ェロか戦闘用のチートだ。戦闘用の……今更だけど具体的な希望とか考えていなかったな。
もう初狩りは今日なので、簡単で強くて便利なやつ、お願いします。
「アイテムね――」
アイテム!
「戦闘用といってもいいわね――」
戦闘用!
「おめでとうございます――――『回復薬セット』獲得です!」
回復薬セット!! 回復薬セット? 回復薬セット…………?
え、ちょっと微妙じゃない?
next chapter:
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます