緊急事態
「リュー君!緊急事態宣言です!」
突然、彼女がそう言った。
俺たちの住んでいる県には緊急事態宣言は出ていなかったけれど、とうとう、出てしまったか、そう思った。けれど、次に続いた彼女の言葉は全く違っていた。
「ご飯作ろーと思ったのに、冷蔵庫に何も入ってないよ」
思えば、今までは俺一人分の食料でよかった。けれど、今は彼女と二人分だ。だから、当然、減るのは今までの二倍の速度だ。
そして、彼女がこの部屋に来てから買い物には出ていない。つまり、食料のストックがとうとうなくなってしまった。
「じゃぁさ、二人で買い物に行く?」
「あ!久しぶりのデート?」
「そんなんじゃないよ。単なる買い物」
「えー、デートしよーよ」
「外出自粛だからって俺の部屋に住み始めたのは誰?」
「はい、わたし!」
「だから、デートはなし。買い物だけ」
「ちぇっ、残念。でも、リュー君とお出掛けするの久しぶりだし、今日は諦めるね」
そんな会話をして、二人で買い物へ行く準備を始めた。そして、準備が終わって外へ出ようとした時、彼女が俺を引き留めた。
「マスクしないと危ないよー」
「いや、でも、売ってないからないし」
「だと思って、作ってきました」
彼女がどや顔で見せてきたのは、本当に彼女の手作りであろう布マスク。
彼女らしい、可愛らしいマスクだったけれども、俺たちはそのマスクをつけて買い物へと向かった。
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