濃厚接触

「ねぇ、リュー君は元気なんだよね?」


「え?まぁ、元気だけど」


「うん、わたしも元気。だから、ひっついても問題ないよね?」


 そう言った彼女は俺に抱きついてきた。


「いきなり、何?どうしたの?」


「え?だって、もし、感染してたら濃厚のーこー接触しちゃダメなんでしょ?だったら、今のうちにいっぱい、濃厚のーこー接触しておきたいな、って」


 いや、それ、何か、いやらしいから。こんな密着して、甘えるような表情で見られたら、抑えられなくなるよ?


「リュー君、大好き」


「俺もアキちゃんの事、好きだよ」


 彼女にそんなつもりはないことは分かっている。ただ、俺に甘えてじゃれつきたいだけだ、っていう事は。


「このまま、ずっと2人でいられたらいいよねー」


「それ、プロポーズ?さすがにまだ早いよ」


「えー、じゃー、そのときになったらリュー君からプロポーズしてね?わたしの返事は決まってるから」


 それは、つまり、俺と結婚したいってこと?でも、共にフリーターだし、さすがに今は無理だろうな。ちゃんと、定職に就かないと。

 部屋の中を見渡す。そうすると、この間までは自分の物しかなかったのに、今は彼女の私物も揃っている。だから、余計に考えてしまう。彼女との2人でずっと過ごす生活を。


「そうだね。もし、俺が結婚したいって思ったらちゃんと言うね」


「えー、今は思ってないの?」


「思ってるけど、そう言う意味じゃなくて、その、仕事とかもどうなるか分かんないし、だから、そういうの諸々ちゃんとしてからの方がいいかな、って」


「ちゃんと考えてるんだ。ありがとー」


 よし、こうなったらちゃんとした就職先を探そう。

 そんな決意をして、将来の事を考えていたら邪な気持ちはどこかへと行ってしまった。


「じゃー、さ。濃厚のーこー接触しよ?」


「は?」


「だから、エッチしよ、ってこと」


「…………はい」


 そういうこと、だったの?え?だったら、ちゃんと雰囲気とか作ってよ!単純にいちゃつきたいだけかと思ったじゃん!




 ……何か、結婚したら尻にしかれそうな気がしてきた。でも、ま、彼女と一緒にいられるなら、それでもいっか。

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