不要不急

「はい、じゃー、一緒に住むから、ルールを決めます」


「あの、ここ、俺の部屋なんだけど、ルールはアキちゃんが決めるの?」


「え?二人の部屋だよね?」


 そんな嬉しいことを当たり前のように言ってくる彼女に俺は、ただうなずくことしかできなかった。


「えーと、わたしも決めるけど、リュー君も決めていいからね」


「了解」


「まず、不要不急ふよーふきゅーの外出はしないこと!って、不要不急ふよーふきゅーって何?」


「アキちゃん、小学校からやり直す?」


「ひどい!そんなバカじゃないよ!ちゃんと高校も四年で卒業したもん」


「普通は三年で卒業だけどね」


「リュー君がいじめる。DVで訴えてやる」


「ごめんごめん。不要不急って言うのは、簡単に言うと、必要のないことで、って感じかな」


「へー、そーなんだ。さっすが、リュー君!物知りだね」


 誰でも知っているようなことだけれど、それでも、彼女に誉められると嬉しくなる。何か、自分がすごい存在だ、って思えてくる。どうしてだろう?愛の力、かな?


「それで、他のルールは?」


「え?んー、部屋にいるときはわたしと一緒にいること」


「でも、さ、密接するのはよくないってニュースで言ってるよ?」


「でも!寂しいじゃん……」


「でも、この部屋、そんなに広くないよ?」


「それでもなの!」


「……分かったよ。俺もアキちゃんも元気だしね。その代わり、体調が悪くなったら必ず言うこと、いい?」


「うん」


 これから先、彼女とずっと一緒か……。大丈夫、かな?色々不安だけれど、彼女と一緒ならなんとかなりそうな気がする。

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