外出自粛から始まる同棲生活

星成和貴

外出自粛

 突然の店長からの連絡でゴールデンウィークまで店が休むことを知った。フリーターで、掛け持ちなんかしていない俺にはかなり衝撃だった。

 ……約一月、どうしたらいいんだ?と言うか、その間の給料は?あれ、今って貯金、いくらあったっけ?その間、どっかで臨時でバイトするか?いや、そんな短期間で雇ってくれるところなんてあるのか?

 突然のことで俺は頭がパンクしそうになる。少し前までは、いっそのこと休みになれよ、だなんて思っていたはずなのに……。

 全て、コロナが悪いんだ。なんて考えていると、スマホが鳴った。画面を見ると、愛しの彼女の名前。俺は急いで電話に出た。


『リュー君、元気?』


「元気元気。アキちゃんこそ、大丈夫?声、元気ないように聞こえるけど」


『え?うん、大丈夫だよ。その、ちょっと、荷物が重くって、それで……』


「え?荷物が重いって、どうかしたの?」


『別に、大したことじゃないんだけどね、リュー君、部屋の扉、開けてくれないかな?』


 俺は訳も分からず、彼女の言う通り、扉を開けた。そうしたら、そこにスーツケースを持った彼女が照れ笑いを浮かべながら立っていた。


「え?何で?」


「リュー君に会いたくなって」


「そう、なんだ」


 突然の来訪と少し甘えた様子の彼女に俺は何も言えなくなってしまう。彼女はそんな俺を気にせず、いつものように部屋へと上がっていった。


「実はね、わたし、バイト先が閉店することになって、無職になっちゃうんだ」


 彼女もフリーターで、1つのところで働いていた。元々、売上も落ちていたところにコロナの影響が重なって、閉店が決まったそうだ。

 俺も似たような状況だと話したら、何故か彼女は嬉しそうだった。


「イエーイ!二人とも無職だ」


「いや、俺は一月だけだし」


「わたしだって、コロナが収まったらすぐに次のところ、探すよーだ」


 なんて、バカな話をしているけれど、彼女がそれを報告に来たわけではないことはすでに分かっていた。なぜなら、彼女はスーツケースを開けて、中に入っていた着替えや私物を俺の部屋へと整理してしまっていた。


「あの、アキちゃん?ところで今、何をしてるの?」


「え?だって、しばらく無職だし、どうせ今探したってまともに働けないでしょ?それに、外出自粛とか言われて暇だから、リュー君と一緒に住もうと思って。ダメ?」


「え?ダメ、じゃないけど……」


「けど?」


「……」


「何?」


「ううん。嬉しい」


「だよねー。これからよろしくお願いします」


 冗談っぽく、頭を下げる彼女に俺も「こちらこそよろしくお願いします」だなんて頭を下げてみた。


「それにしても、リュー君も無職とは、わたしたち、運命かもね?」


「そうだね。でも、俺は無職じゃないからね?」


「えー?そこ、こだわるー?」


「あー、でも、アキちゃんと一緒にいられるなら、無職でもなんでもいっか」


「そうそう、わたしもリュー君と一緒にいられるなら、無職でもなんでもいい。あ、でも、お金がないのは困るから、貯金なくなる前には働こうね?」


「はは、そうだね」


 そんな感じで彼女との同棲が始まった。外出自粛を口実に、ずっと、部屋の中で。

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