93.はみだしっ子/コミクス全13巻 文庫全6巻 三原順 その1

 これはですなー。分けなくちゃ語るのが無理。


 ともかく! ちょうど読んだ時期が12歳~中学生だったからもろシンクロしちまったんですよねえ……

 ちょうど花とゆめを買いだしたのが彼等の分岐点、養子に行く「クリスマスローズが咲く頃」が巻頭だった号からだったというのもあるんだよな。

 そこまでの四人が放浪しながらあれこれトラブルに対処して行くという話と違って、「定住」することと、「親」との問題、それにコミクス4巻で雪山で起こしてしまった事件をどう(彼等の中で)解決するのか、という問題というのを、コミクス9巻~13巻という中で全部何とかしようとしたのだから、まあ他のマンガと違っておっそろしく濃密で同時並行で行くんだからこりゃ当時の自分にがつんときた訳だ。

 頭でっかちの小学六年の自分がタバコ買って家の棚から酒くすねて「ばれないようにグレていた」り、「自傷癖がついてしまった」とかもろにスイッチ入ってしまったくらいですからー。


 で、現在フツーに売ってるのは白泉社文庫の別バージョン。2000年より前に出たバージョンとは違うのかな。ワタシが買い直したのは解説を市川ジュンや川原泉が書いてるものだけど。

 ということで文庫版収録で説明。



 文庫2巻までは年上組が10歳まで、年下組が8歳までの話。

 後に最初の話から養父が「5年間待った」ということで彼等がだいたい最初の話で年上組が8~9歳、年下組がその二歳下。

 出会ったのはその一年前くらいということだから、年下組なんてその時4~5歳だよな。

 まあ放浪の資金はグレアムの貰っているという感じですが……

 ここまでの話で彼等の過去が出てくるんだけど、今更にして! 酷いな。

 放浪するきっかけとなる過去の初出順だと、


・マックス

 父親から虐待されていた。

 最初の妻/マックスの母親に逃げられ、後妻からは事情は不明だけど軽蔑されていた思われる父親が、ある日酔って腹立ち紛れにマックスの首を絞めて殺そうとしたので逃走。三人に拾われる。

・アンジー

 私生児。

 母親が女優になる夢を持っていたので伯母夫婦の家で従兄も周囲の友達も居てそれなりに楽しくやっていたけど、小児マヒで片足が動かなくなる+母親が夢のために自分を捨てることを知った時家出。

 母親はその後有名女優に。

・サーニン

 祖父と父の狭間で精神を病んだ母親が死んだ後、しばらく失語症になって(記憶も胡乱)半地下に閉じ込められていた。可愛がっていた鳥が呼ぶ名で記憶を取り戻す。

 その後放浪してたアンジーが偶然出会って根性で彼を助け出した後、グレアムに拾われる。

・グレアム

 父親がパラノイア的な高名ピアニスト→彼にもなって欲しいと練習+指を傷つけると叱る。

 母親はそんな父親に耐えきれず、父の友人のもとに走ってしまう。

 優しい病弱な伯母(母親の兄の妻)が愛情を注いでくれるが、彼女のくれた犬で遊ぶことに父親が怒り、犬とグレアムの片目を壊してしまう。

 父親は伯父に「奥さんが死んだら角膜をくれ」と言う。それがきっかけで伯母が自殺。一方で放っておかれていた従姉エイダは屈折して「お前は泥棒で人殺し」とグレアムに言い立てる。

 ……以上のことでさすがに「家を出る」と伯父に言ったら伯父が資金援助をする、と申し出。彼等の生活費は基本的にそこから出ることに。


 とまずこの境遇ですよ! 親が信じられないのも当然な子供四人組!

 で、文庫1巻では発端と過去と、自分達を家族として迎えてくれる大人はいないのか、と彷徨う話。

 まあこの半ばで一応グレアムとエイダは和解したのが救い。ここで彼等の味方が一つできる。エイダがマックスを別ルートで好きになったというのもある。

 そんでアンジーもその話で何とか松葉杖無しで歩くことはできるようになっている。が、皆と同じ様に走り回ることはできない。その後も。



 2巻表紙は13歳くらいに育ったグレアムですね。ワタシが一番シンクロして引きずられたキャラ。

 この巻では彼が一旦父親と対峙することに。まあがんがんに杖で殴られたりしたけど何とかそっちの方からは一旦解放。

 その間に、前巻エピで母親から連絡を求められたアンジーも対面。だけどここでアンジーも母親を突き放す。


 ここで転機となる事件。ここから連載形式になる。


 出会ったひとの友人(このひとも親戚から「殺されるよりは幽霊扱いの方がましだろ?」と軟禁されていた)のとこに身を寄せてたんだけど、「山に登りたい」と雪山バスツアーに行く訳だ。

 それがまずかった。雪山遭難!


 グレアムはまだ父親に殴られた傷が癒えていない。更に事故で胸を打って悪化。呼吸が…… ということから父親の打撃であばらやってたんじゃないかと推定。

 サーニンもマックスもそれぞれ雪には決していい記憶が無い。

 サーニンはある程度もう克服してるけど、マックスはかつて父親が持っていた拳銃のせいで猫が死んだ時が雪だったということがまだ心にある。


 バスに乗り込んでいたのは拳銃を持った銀行強盗・ヘロインづけの歌手とマネージャー・かつて出会った友人とその他もろもろ。

 このかつて出会っている友人というのがありがたい存在。

 銀行強盗は遊びで計画したのが拳銃も用意して引っ込みが付かなくなって逃走。そして動けないグレアム以外の前で自殺。

 一方動けないグレアムは痛み止めで歌手のヘロインを貰ってる。この時点では彼等は知らない。ただこれでだんだんグレアムがどんどんダウナーになってく(たぶん薬のせいは大きい+自分が三人のために何もできないのが重い)。

 その後サーニンが助けを求めに~と一人スキーで下りてく。彼は一応人里に戻れるが、ここで別行動に。一旦退場。

 他のもろもろの人々も下りる、と移動。彼等は後に死亡が確認。

 その後歌手がマネージャとケンカ。何処かに行ってしまう。

 彼女を待つ彼に、子供の慰めはしんどかったのか、突き飛ばしてマックスが手を火傷。ここでまた痛み止め。マックスは夢うつつ。なおここで銀行強盗の銃があることに注意。

 そんな中で口論になったマネージャと残りの二人。グレアムが首を絞められそうになったことで、マックスの過去がオーバーラップして「やめてパパ!」と拳銃を撃ってマネージャの頭にヒット。

 アンジーが林に火を付けたことで送り出してくれた居候先の男が見つけてくれたけど、ここからもう色々狂い出す。


 「マックスが」男を殺してしまった、という事実がこの先の彼等にどーんと重くのしかかる訳だ。


 アンジーは死体を隠すのに「幽霊」な友人の手を借りて何とかなるんだけど、ここで「グレアムが狂ってしまった」こと+歌手のヘロインが見つかり、一方では銀行強盗の拳銃が見つからない(アンジーが持ってる)で事件性があると考え警察は捜査を続けると宣言。


 ちなみにこのグレアムの「狂ってる」は、


・マックスに話しかけられても反応できない

・片腕がちぎれてしまう妄想

・一睡もできなかったと思うけど実際には寝ていた

・望遠鏡を逆さまに覗いているような現実感

・のちに少し回復した時に唐突に行方不明のマックスの声の幻聴


ということで、何となくイメージとしては鬱の滅茶苦茶酷い奴になっていたと思われるんだな。父親のパラノイア気質もあるから、どっちかというと統合失調かとも思ったんだど、反応の無さ加減から鬱の酷い奴かな、と思ったざんす。

 回復に二年近くかかってる。

 が、あくまで静養してよくなっただけで、気質が変わっている訳ではないのが後々延々彼が自分で自分を追い詰めて行くことになるんだな…… はう。


 ところがこの「自分に反応してくれないグレアム」に「嫌われた!」と思ったマックス。

 病院を飛び出し迷子→列車に乗り込んでしまった→遠くの施設に収容という流れ。

 グレアムはエイダの友人の住んでる別荘に匿われる。

 ここまでがこの小さい頃のはなし。



 3巻表紙は初期マックス。

 まあイメージというものはずっとつきまとうということですな。

 2巻最後の辺りからしばらく彼がその後どうしたか、という話になる訳だ。

 施設に引き取られ、皆だったらどういうか? と考えつつも、何とか一人で施設+学校生活をこなしているマックス。

 で、一年半~二年後くらいに、やっと回復したグレアムと、この時点では既にサーニンを探し出してはいたアンジー、それにエイダとその友人で彼等の家主のオフェーリアが一緒に探しに行くという話。

 彼等に限って言えばそういうことなんだけど、そこで「施設の子」と「普通の子」の違いに悩む子とか、それを管理する側の悩みとか、色々ありつつ。

 まあ何とかマックスが復帰。


 そんで時間的には前後して、少し前にアンジーがサーニンを見つけ出しているのだけど。彼は彼で最初に転がりこんだ人の父親がやってる馬の牧場でしばらく過ごすことに。

 ここは野生児な彼に合ってたようで、「おじいちゃん」と呼ぶ家主から、誰にも懐かない馬を攻略したことで「馬主にならないか?」ということに。

 その馬が「おじいちゃん」の娘によって詐欺に使われそうになったことで、少し前に合流できた彼等が組んでいろいろ。


 正直サーニンが他の子より安定した部分が多いと思うのは、この牧場の日々が大きいと思う。「おじいちゃん」は信用できる大人だったし、周囲の大人達もまずまず。何より彼と馬の相性が非常に良かったという。言葉下手の彼には合っていた場所だった。だからこそ後々もこの牧場とはつながりができる。

 マックスの場合は、子供の群れの中に放り出された甘えん坊気質の奴がどうやっていくか、ということだったんだけど。こことは別れた後は縁が切れる。彼は養子に行った後でも子供達の中で友達を作る問題とかが大きいのはこの流れか。


 そんでまた四人になるんだけど、今度は基本的にはオフェーリアの家に馬を置くということもあって、ベースにし出すわけだ。

 で「馬のエサ代くらい稼いでこい」と放り出されたバイト先での事件でもやっぱり父と子の諍いがあったり。

 あとは何と言ってもグレアムの父が亡くなるエピですな。ここでも平行線変わらず。グレアムは悲しまないし、せいぜいレクイエムを弾いてやるくらい。むしろ自分の気持ちのために。

 そんで父親の方か遺言でグレアムを眠らせてまで角膜提供するという。当人は「いらない」とがんとつっばねていたけど。そこで両目見える様になるという。


つづくっ。

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