91.大和真也の80年代SFシリーズ1/ジュゼ
80年代に中高生だったSFスキー女子! だったらこの名前は聞いたことがあると思うんですが!
新井素子とデビュー同期なんだけど、SF色が強くて……
……ではなく、二十年くらい後になって、小説として新井素子より「人に読ませる意識」が弱いということに気付いたんですがね。
だけど中高校生だった自分には「?」と思いつつも何か揃えてしまうというものがあったんですよねー。
後で入手した「奇想天外」には単行本未収録系短編もあるんですが、正直読みづらすぎて。
で、おそらくはコバルトではそれなりにブラッシュアップされたんだと思いますわ。
*ジュゼシリーズ
1.フォックスさんにウインクを
2.眠り姫にキス!
3.回らない風車
4.水曜日には雨が降る
5.アダ
6.黄昏時には夢を見る
7.坂の向こうの茜空
http://mapu.raindrop.jp/j/jguide.html
このサイトが実によくまとめてらっさる。
コバルト第一作はまあ異世界に「連れて行かれて」という、当時よく見たパタン。
そう、今「異世界転生」だけど、当時のジュブナイルでは「連れて行かれた」「巻き込まれた」というパタンだったんだよなあ。巻き込まれ型。だから「必要としている先導役」が居る場合が多かった。新井素子はそれが多かった……
ただこのひとの場合はミクロコスモスが舞台で。
その中の一つが「ジュゼ」。そこのネイティブ住人はお菓子の材料になるし、死ぬ? とド・ラ・ルゥという何かヨーグルトの様な味のキノコのようなにょろにょろの様なものになってしまうというんだよな。
個人的には5までは何とか記憶に残ってるんだけど、6.7.はどうも印象に残ってない。
作者的こだわりとしては、人物名が回文。
1.2.は一応全体の主役「らしい」いづみちゃんで、一人称は「あたし」。この当時「あたし」を持ってきて口語に近い口調で16歳でSFを書いたっーんで新井素子はがっと注目されたんだけど、このひとも17歳で「カッチン」という、やっぱりこのミクロコスモス系の話を書いて一緒に佳作だったらしい。んだけど未読。おそらくこの設定でもっとわかりやすく、と求められたんじゃないかと思うんだけど……
ただ1.は「何をしたかったのか」が当時わかんなかったし、後で読み返しても主人公がそこに行く必然性とかがよくわかんなかったこと(大局的にはあったのかもしれないけど、その解答が結局示されていないから判らないままなんだよな)、「暇を持て余した理系大学生おたく」世界のまんまというところ、そんで当時のSFやアニメ・マンガ好きにおける二人称「お宅」が無闇に使われている辺りがやっぱり後で「ああ……」となったんだと思う。
3.はジュゼ出身で地球で育てられた「ちひろ」視点。で、腎臓の一つをクッキーにされている、というんだけど。ただ実際には地球で育ったジュゼ人の身体は既に毒になっているということで。まあその複雑な生まれと育ち(地球人の金持ちの養女になっていて、この全体のキーパーソンの親友)でうだうだした後ジュゼに行ってジュゼ人のなれの果てが何なのかというの見るという感じの。
4.は1.で出てきた「狐」君がどうやってこの世界に巻き込まれたか、という顛末。ナヴィと名乗る少女の動きに巻き込まれて~とやっているうちに彼の住んでたミクロコスモス世界が消されてしまったという。ちなみに彼が「狐」なのはロンメルらしい。
5.はミクロコスモスの応用で、剣と魔法の世界。―――に、1.からよく出ているイリヤという「僕」呼びの女性視点。彼女もどっかのミクロコスモス出身。
……1.で自分で「ブラッディ・リィと呼ばれている」は、まあ若さですな……
あと、作者のそのテの世界が好きなんだなきっと、というのはある。
この時代にSFとかにはまった人々にとっては割とゲームではなくおおもとのそういう「剣と魔法」話を読んでいることがある。特にSF研に居た場合!(いやこれは偏見だけど。ちなみにワタシはあかん。グイン・サーガでも1~5は基本飛ばして読んでた)
で話の展開中に急に元の地球に戻されて、これこれこうなった、と彼女を送り込んだか何かの、彼女を「お気に入り」にしている一人が言ってその世界は消滅させられ、彼女は落ち込み髪を切る、という流れだったと思う。
6.7.は研究所系SFで、まあ作者の馴染みの深い世界を使っているなあ、という感じはした。つかこの作者は名古屋系でしたから。
……なのだが本当にこの2作は記憶に無いんだよ!
たぶん今家の中探せば当時買ったものか、あとで買ったものか判らないか出てくるとは思うんだけど、……おそらくこの2冊は5.までに比べてカバー題字も地味になっていたこと、挿絵の色の付け方とかが変わったこととかあって、印象が薄くなってしまったのかもしれない……
番外編も、まとめサイトによると確実に韻を踏んだタイトルの短編なんだよな。
コバルトで見たことがある「かもしれない」。
ただやっぱり全体的に「何の話かわからない」という印象があった。
ただ何度も読んだのは事実なんですぜ? 80年代前半も前半だから、7㎞先の高校よりもっと遠い本屋まで探しにチャリ走らすことも度々だったし。
だから当時よーっく読んだんだけど、どうにも首を傾げることが往々にしてあった訳よ。
それは二十年くらい後になって読み返した時に、「あ、このひと読み手のことさして考えていないわ」と思った訳だ。いや、当人はそのつもりだったとしてもだよ。言いたいことが先に立ちすぎているというか。
発想は面白いし、世界観はあるんだけど、如何せん「結局どうしたいのか」が見えないまま打ち切られか、お休みにしてしまってそのまま、という感じで。
続きはもう絶対書かれないと思う。
だって考えてみようぜ。二十代の頃に書いた話の続きを五十代になって書いてくれと言われて書けるか? ということだわ。
書くなら全部再構成せんといかん。
ジュゼ/ミクロコスモスシリーズの世界全体を見回して、結局何が書きたかったのか明確にしてからのち完結させないと。
でもなー。
これはある程度長い期間書き続けたひとなら覚えのあることだと思うが、二十代前半に書いた話は基本黒歴史だと思うんだが!
その意味で書けないと思うんだよなあ……
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