12.リセットアウト・コルティジャーナ・オネスタ・I's/庄司陽子

 庄司陽子どす。

 ……最近の連載はもう絵も内容も「……あかん……」と見てられんです。デッサン……



となる前のなかなか強烈で印象残っていたので持ってる三作。



「リセットアウト」は全4巻の話なんだけど。


 1巻では髪が長いヒロイン。既婚者で堕胎した後に海に投身自殺をはかるのね。

 海辺の町で助けられたけど気が付いたら記憶喪失。

 ところがそこでエンパシーだか接触テレパシーだかの能力に目覚めてしまう。それで病院で痛みとか気持ちの落ち込みに苦しむ人々をひたすら「あなたのせいじゃない」的に赦していくんだな。

 その中に身よりの無い大金持ちの作家がいるんだな。作家が彼女に救われて、その場の「御神みかみきらら」という名と呼ぶようにして遺産を全部残すのね。

 その前後どっちだったか、ヒロインの家族がやってくるんだな。夫も。そこで何で堕胎したかも、自分が死んだ姉に擬態していたことも思い出して離婚するのだわ。見かけも髪を切って2巻以降のに。

 そこに二人の男がかかわってくるんだな。一人は彼女を物理的に救い出した青年、もう一人は野心を持つ青年ね。前者は性格が(家族から見たら)変わった彼女にひたすら献身的に尽くすんだな。漁師の仕事も捨てて彼女についていくんだわ。

 じゃあ何処に、といえば、残された遺産が大きな屋敷をはじめ莫大だったんだよな。

 で、後者の青年がヒロインが色んな人々の心を救うのを見て、教団を作ることを考えるわけだ。それは成功するんだわ。色んな人々が彼女に心を開け放って安らぎを得ると。

 ところがそれがどんどん大きくなって評判になっていく過程で、ヒロインの考えとずれたものになっていくわけだ。

 そんな中、付いてきた青年も次第に能力に目覚めたり、もともと女子アナだった女性もこの世界に入っていくと。

 そんな折、やっぱり野心家の女性が当初はジャーナリスト、その後は教団のアドバイザーになって行くんだけど、野心家同士が体を重ねるうちに子供ができるんだわ。

 二人はまあともかく結婚するんだけど、生まれた子が「教祖になる子だ」とヒロインが言って取り上げるんだな。実際子供は生まれつきテレパシー持ってて普通の母親では育てられないんだけど。ヒロインがしばらく落ち着くまで預かって、あくまで「世話する人」として母親は接することに。

 で、ヒロインはだんだん元女子アナ嬢に能力の使い方をどんどん伝えていき、自分の代わりに「二代目の御神きらら」になってもらうことにして、元々の自分に戻ると言い放って出ていくんだな。その時は無論献身的な青年も一緒に。

 でまあ、ヒロインはテレパシーで教祖になる子を教育し。やがて本当に教祖になってしまうんですね……小学生低学年くらいで……

 その時じゃあ何をしているかというと、素性を隠してホスピスで住み込みで働いているという。


 ……生徒諸君!完結編と似てるんですねー。後で出すけど。

 何が似てるかというと、

「持ってるもので築き上げるだけ築き上げたけど、いやここじゃない、とす他者に任せて自分(とその分身みたいな相手)は勝手にやりたい道に行く」

 ということかなあ。

 まあこの話は「教団のつくりかた」みたいな部分で面白かったんだけどね。

 構成だけ考えるとよく似てるよなあ、と思ったのだわ。


**


 別の部分で似ていると思ったのが「(毒)母親への憎悪」かな。

 「コルティジャーナ・オネスタ」は1巻もののルネサンス期の、高級娼婦コルティジャーナで「インペリア」とまで呼ばれた女性の話。

 元々は教皇にのちになるひとと母親との間に生まれた子。母親も出産すると下っ端に下げ渡されるわけだ。それを母親は悔しく思って自分の娘を自分の思うような素晴らしい女に育てようとする。

 実際それに応えてきたけど、義理の兄との間に愛情が生まれて、彼が修道院に入る前に一度関係をもってしまったのだわ。で子供が生まれてしまう。

 するとヒロインは母親によって娘を遠くにやられてしまい、「お前は高級娼婦になるしかない」といわれるわけだ。それに必要な教育は自分によって既にできている、そして男に復讐するのだ、と。

 それで実際素晴らしいパトロンも得てそれこそ本名のルクレッツィアでなく「インペリア」とまで呼ばれるようになった彼女なんだけど、そこに父親・教皇からスパイになる様に言われるんだよな。

 自分のもとにやってくる男はすべて愛してあげている彼女にとって、それは辛いのだけど、命令には逆らえない。だけどとうとうパトロンにばれてしまう。

 すると教皇からは毒が送られてくるわけだ。そして使いは沈黙を続けていたけど実は義兄だったと。

 さてそこで病床についてしまうんだけど、その時財産のほとんどは娘に、母親には少しだけということがわかるのね。

 「今までどれだけお前のために」という意味のことを言う母親に苦しい息の中、ヒロインは言うんだよ。「あなたが私のためにしたことで感謝したことなど一度もない」と。

 彼女は亡くなり、みな悲しむ、という話なんだけど、この最後の最後に母親に逆襲するあたりがすごい。

 そもそもヒロインは義兄と結婚して子供と普通の家庭をつくりたかった。それが様々な形で、母親に動かされてできなくなったということを心底恨んでいたというのがなあ。


**


 もういっちょ。「I's」という作品。

 これは淫蕩な母親の再婚した相手によって小学生高学年のあたり性的暴行を受けてしまったことで多重人格になってしまうヒロインの話。

 基本の子がまず居るとして、その中にどんどん出てくるのが。


・延々少女である子→父親との行為の間を忘れるために居た

・防御のための18歳の青年→父親との子供を流産した後代わりに出てきてヒロインは隠れてしまう

・大学生の女性→男では対応できなくなったことで出てきた

・淫蕩な女性→母親の写し鏡


 最終的には父親が再び別の幼女を犯そうとした現場で少女の人格が出てきて殺してしまう。

 そのプロセスと多重人格であることをずっと義兄が見てきて、当初は妹は可哀相だが近くには住めない、と離れてしまうけど、事件の後は彼女の治療と裁判にもずっとつきそって自分の人生をささげる、という感じ。

 ちなみに母親は父親の行為のせいでどちらも全寮制に入ったことで金が必要になり、夫の許可つきで主婦売春をするようになる…… んだけど、もともと夫に肉体的に顧みられてなかった彼女は喜んでやっていたという。そして娘が捕まった際には見放してしまう。というか、そもそも娘を守ろうという気はなさげ。


 じゃあこの「母親憎悪」がどうつながってるかというと、一応この母親たち美人なんですよ。

 そう、生徒諸君のナッキーのおかーさんも年齢不詳美人でしたな。

 これが「いかにもおっかさん」であった場合こういう対象には絶対ならない(「リセットアウト」ではなっていない)んだけど、美人で「女」が前に出た母親の場合、毒母になるんだよな……


 ……あとまあ、この三作品全部に共通するのが、「自分の子供と幸せにはなれない」だな。

 堕胎・名乗れない・流産ときたら何というかまあ。

 ナッキーは「あなたの娘だから自分には母親になれない」とまで言うんだよな、おかーさんに。「愛情が多すぎる」という意味のこと言ってるけどいや違うだろ、と思ってしまったワシがいたことよ。


**


 ちなみに今「生徒諸君kids」っていつの間にか生まれてた双子が日本にやってきて~という話なんですが…… 確認のために読むのも何というかやっぱり自分マゾではないか? という絵の崩れ…… ナッキーマンセー……

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