第3話 素顔
「ほら、急ぎの用事なんだろ?行くぞ!」
「ほら、早く助手席に乗って!まぁ、乗り心地は悪いけど」
「うっうん。分かった」
「ラリーカー初めて乗ったのか?まぁ、シートベルト付けてやるからバックを椅子の下に置いて、5点式だから少し特殊なんだよ」
言われるがままにバックを足元に置いた。
「自宅ってどの辺?」
「東丸小学校の近く。」
「なんだあの辺りに住んでるのか!大体分かったから近くになったら案内よろしく!」
エンジンの大きな音が車内に響き振動も物凄くシートに伝わった。そして車はゆっくりと出発した。少し走ってから先に
「あのさ、なんでこの車はパイプが張り巡らされてるの?」
「これはロールゲージって言って、車がぶつかっても中の人が安全にいられるように張り巡らされてるんだよ。」
「この車は2人乗りなの?」
「そうだよ!こいつは元々は5人乗りのヤリスって車なんだけど、ラリーでしか使わないから後ろの席は取っ払って、2人だけにしてるんだよ!」
「二人でラリーは戦うの?」
「そうだよ!ラリーはドライバーとコ・ドライバーの二人で戦うんだ」
「あっ、あのさ!そういや、その・・・朝は悪かったな!」
「えっ?いや、私こそ眠い中話し掛けてごめんなさい。」
「いや、あれはなんていうか寝てた訳じゃなくてその恥ずかしくてさ・・その、照れ隠しっていうか。なんていうか」
恥ずかしいそうに話す
「
「
車内は一気に和やかな空気になり信号が青に変わった。しばらくすると、東丸小学校が見えてきた。
「2つ目の信号を右に曲がってしばらくまっすぐ行ったら、左側に私の家があるから今日は送ってくれてありがとう!」
「OK!でも、ラリー仕様だからうるさいよな。そろそろ違う車にするからさ」
笑いなら話す
「え?売っちゃうの?ラリーはやらないの?」
「去年の夏にコ・ドライバーが居なくなったからさ」
どこか悲しそうな表情で
「そうなんだ。でも、またコ・ドライバー見つければ出来るじゃん。」
「いや、もう良いんだ・・・」
車内はこれ以上聞いては行けない空気になった。そして、目的地の家に近づいた。
「この辺でいいか?」
「ありがとう!すごく助かったよ」
「明日からよろしくな!」
数十秒沈黙の時間が続いた。そして、
「・・・あっ、あのさぁ~。どうやってシートベルト外すの?」
「ごめんごめん!そうだよな!初めてだもんな。真ん中を回すんだよ」
真ん中の金属を回してみると、キレイにシートベルトは外れてくれた。そして、
家に帰ると、リビングに今日の朝ご飯がラップがして置いてあった。そして、電子レンジで温めながら、スマホを充電した。しばらく充電をすると、スマホが起動し、たくさんの通知が鳴り始めた。
(うわ、
その中には母親からもメールが来ていた。内容は、今日帰りが遅いので自分でご飯を作りなさいとの内容だった。スマホに向かって独り言をぶつけた。
「もー、早く言ってよね。そしたらもっと長くいたのに・・・」
そして、同時に頭の中で悪知恵も働いた。
(よし!今日はすき焼きにするもんね!)
帰りが遅いのを逆に利用してやった気持ちが高まり、ニヤニヤが止まらなかった。そして、日が暮れる前に買い物袋を持って出掛けた。少し距離は離れているが、値段が安くて品質が良い肉が揃ってる肉のハナマルに向かった。肉のハナマルは地元じゃ有名な精肉店で、店主がとても明るいのだ。店の扉が開くと店主が満点の笑顔と大声で話し掛けてくれた。
「おぉ、
「おっちゃん久しぶり!今日はすき焼きにするから、すき焼きに合うお肉下さい!」
「ヘイヘイ、毎度!そういや瑠衣ちゃんは今日から高校3年生かい?」
「そーです!」
「そうかいそうかい。そういや、
まさかの質問に驚きが隠せなかった。
「え?おっちゃん
店主はどや顔で答えた。
「知ってるも何もこっちはスポンサーだぞ!ほら、壁にポスターが張ってあるだろ!」
「スポンサ-?」
店の壁を見てみると、
「あっ、だからあの車に見覚えあったのか!」
「
優勝した時の写真を瑠衣に見せた。そこには笑顔の
「この人はコ・ドライバーの人?」
「おっ、詳しいね!そうだよ!コ・ドライバーの
少年に戻ったように話す店主に、
「でっでも、ヤリスは売っちゃうみたいですよ!その、コ・ドライバーが居ないとかで・・・」
店主はさっきの笑顔が嘘みたいに急に真顔になり少し落ち込んだ表情で話した。
「あゝ、そうか仕方ないか・・あんなことが起きたら、
「あんな事?」
「そうか・・・
そう言うと店主は去年の夏の出来事を話してくれた。外は夕日に染まって気分が少し落ち込む時間帯になっていた。
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