第5話 棚の上の悪魔.1


続けていくつか屋台をまわった後、次に僕達が足を止めたのは射的屋だった。


台の前に立ち、コルクの銃を構えた僕を、舞葉が後ろで見ている。


僕が狙ったお菓子やキーホルダーは、銃を撃つたびに次々と棚から落ちた。

取りやすそうな物ばかり狙っているとはいえ、僕は優越感を感じてしたり顔を浮かべる。


「景太君、相変わらず上手いね!」


舞葉は手を叩きながら僕を褒め称える。


「まあ、毎年やってるからね。実はコツがあるんだよ」


そのコツというものは、昔に舞葉の父親から教えてもらったものだった。


「…ねえ覚えてる? 中学生くらいの頃に、射的屋さんでしたやりとり」


黙って僕を見ていた舞葉は、そう問いかけてくる。

僕はその言葉を聞いてドキリとした。


「や、やめてくれよ。その時の事は恥ずかしいから思い出したく無い! 忘れてくれ!」


「えー、なんでよ! 私はあの時の事、絶対忘れたく無いんですけど!」


舞葉は焦る僕を見て、意地悪い顔をして笑う。


「あの時の景太君、格好よかったんだから」


彼女がそんな話をし始めるものだから、僕の脳裏には昔の記憶が鮮明に蘇ってしまう。

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