第4話 分岐点.3


思えばその時が、僕にとって人生の分岐点だったのだろう。

僕は回想から意識を戻して、そんなことを考える。


「舞葉、金魚持って帰るか?」


僕は取り終えた金魚を見て、後ろの舞葉に問いかけた。


「ううん。景太君がすくってるところを見たかっただけなんだ」


「そっか」


器の中にいる金魚を、僕は水槽の中にはなしてやる。

自由になった金魚達は、散り散りになって僕の前から離れていった。


「あの時私にくれた金魚、まだウチで飼ってるしね」


「それ、すごい長生きだね…」


彼女の言葉に、僕は驚きを口から漏らした。


僕と舞葉はそんな何気ない会話をしながら、金魚すくいの屋台を離れる。


背を向けた僕達を見て、店のおじさんは安心したように胸を撫で下ろすのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る