第17話 結ばれた結人

「いきなりですが、ビスムに質問~!」

「まあ、本当に急ね」


 親友同士、二人きりの自由な今。イユの大きな声に対し、ビスムは微笑みながら落ち着いて言葉を返す。しかし、


「ズバリ! ビスム、あたしに大切な何かを隠しているでしょ?」

「えっ……!」


 まさかの質問に、ビスムは驚いてしまった。

 これって、まさか……!

 ふっふっふ……!

 戸惑っている親友の様子を見て、したり顔を決めるイユ。


「あー、やっぱりそうなんだ~」

「親友に隠し事って……なっ、なっ、何のことかしらぁ~?」


 イユもビスムも、おちゃらけた振る舞いをしているが、お互い心の中は正反対。楽しそうなイユと焦らされているビスム。


「ねぇねぇ。もう隠していないで、はっきり言っちゃってよぉ、ビスム~」

「あっ……あーらあらっ……。何かしら、イユ~?」


 言わせたいイユと、とぼけるビスム。

 そして彼女たちの攻防戦が始まった。


「言っちゃえ言っちゃえ~」

「やだやだ、なーんにもないわよぉー?」


 そんなやり取りが長く続いていた。

 ……ビスム、手強い……!

 ……イユ、諦めて……!

 端から見たら(今は二人きりのイユとビスムだが)、おもしろそうに感じられる掛け合い。だが当人たちは、しんどかった。


「……あー、もうっ! こうなったら……」

「きゃっ!」


 そのときイユは、ぐいっとビスムの腕を引っ張った。そして自分の体の元に、親友の体を寄せたイユは……。


「っ……!」

「……へへっ!」


 ビスムの頬に、イユはキスをした。ビスムは真っ赤な顔で、じっとイユの笑顔を見つめている。


「あたしが分かっていないとでも思った? いつもめっちゃ近くにいるんだから、気付かない方が不自然だよ!」

「イユ……」


 もう分かっていたのね……。

 ますます恥ずかしくなって、ビスムは顔を下に向けてしまった。


「……あたし、あのとき心配だったんだからね! ほら! ビスムが愛の神様と、二人きりになったとき……」

「……あ!」


 イユが暗い顔をしていたのは、そういうことでもあったのね。

 ビスムはパッと顔を上げて、親友の顔を確認した。あれだけ笑っていたイユが、ちょっぴり頬を膨らましている。


「イユ……好きっ!」

「ひゃあっ!」


 ビスムはイユに抱き着いた。イユは驚いたが、すぐに嬉しくなってビスムの腰に手を回した。


「あたしも好き!」


 イユとビスムは結ばれた喜びを、共に強く感じていた。


「……片想いよりも、こっちの方が幸せでしょ?」

「……そうね……」

「あたし、ずっとビスムが好きだから! ビスムがどんなことしたって、この気持ちは変わらない! だから余計なことは絶対、考えないでね! 自分は好きな相手にふさわしくないなんて、一生考えなくて良いんだからね!」

「イユ……」

「それじゃあ、もう隠し事なしね!」

「……はい!」


 幸せな彼女たちは、唇と唇を重ね合わせた。


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結人たちの事情 卯野ましろ @unm46

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