第6話 手を繋ぐ結人

「それにしてもさ、頭を冷やすって言われても……。あたしたち……これから、どうすれば良いの?」


 イユはビスムに聞いた。


「うーん。愛の神様から、特に何かしろとは言われていないけど……」


 ビスムも困っていた。


「何か不安なんだけど」

「大丈夫だよ。ずっと人間界にいるわけではないと思うし……」

「そっか……」

「でもせっかく異世界にいるのだから……もっと明るくならない? 異世界を満喫しましょうよ、イユ」

「それもそうだね」

「とりあえず、散歩でもしようか」

「うん」


 イユの暗かった表情が明るくなり、ビスムは安心した。


「さー、行ってみようよぉーっ!」


 イユは元気な声を出した。


「ねぇ、イユ」

「なーに?」


 そのときビスムが、イユに右手を差し出した。


「へ?」

「手、繋ごうよ」

「うん!」

「ありがとう」


 彼女たちの手と手が繋がれた。


「これで安心。ビスムとあたしは、ずーっと……一緒だよ!」

「ふふっ、頼もしいわ」

「ビスムは、あたしが絶対に守るから!」

「わたしも、イユに何かあったら……必ず助けるわ」

「ありがとうっ!」

「こちらこそ、ありがとう」

「さあ、出発!」

「はい、行きましょう」


 二人は仲良く歩き出した。

 アイジンの攻撃を受けて、体を痛めていたイユであったが、もうすっかり元気な体になっている。しかしイユに限らず、結人は強い体を持っている。これも人間と結人の違いだ。もしアイジンからのあの攻撃を人間が受けていたら、イユよりも大変なことになっていたのである。


「あれ?」

「どうしたの、ビスム」

「ねぇ、イユ。あの子……」

「ん?」


 イユは、ビスムが指差す方向を見た。そこにいたのは……。


「あの子、どうしたんだろう」

「泣いているね」


 一人淋しく涙を流している、人間の少年だった。


「行ってみようか」

「うん」


 二人は顔を見合わせると、すぐに泣いている少年の元へと進んだ。

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