第49話 悲痛の叫び
そもそもの前提的な話として、是清には男女の仲を取り持つ良い方法は思いつけない。
だから今のこの状況をどうにかするにしても良い方向に持っていけるとは思わない。
是清が何もできずにいると、舞花から視線をずらした篝と目が合った。
「で、君は確か高坂くんだったね」
「あ、ひゃ、ひゃい!」
初対面でしかもスクールカーストの上位に食い込む相手との会話だ。是清がまともに喋れるはずはなかった。
「あっはっは! なんだコイツ? ひゃい! だってよ。てゆうか、篝、コイツと知り合い?」
突然チャラ男が話に割り込む。
それにしてもひどく馬鹿にされた気分だ。
「いや、知り合いも何も、クラスメイトだよ」
「は……? こんな奴いたっけ?」
どうやら本当にわかっていないみたいだ。
是清自身も少し感心してしまうほど、自分は目立たない存在だったらしい。
すると篝のさらに後ろにいたギャルのような見た目の女子が笑いを上げた。
「ははっ。アンタ記憶力薄すぎっしょ」
「るせっ。お前はどうなんだよ?」
「アタシ? そんなん決まってんじゃん。こんな根暗知らんし」
「だよな」
さらに笑いが場を包む。もちろんその笑いは良い意味を持っていない。ちなみに篝の方はそこまで笑っていなかった。
イマイチ篝の立ち位置が理解できない。
「それで舞花と高坂くんは何をしてたんだい?」
篝が是清と舞花を交互に見据えて問う。
「しょ、しょれは……」
「えーと、ですね……」
はたして何と言うのが正解なのだろうか。
2人で楽しく遊んでいたんだ? 駄目だ。
あんたは愛想を尽かされたんだ? 駄目だ。
篝の神経を逆撫でするのは是清にとっても舞花にとっても良くない。
「決まってるっしょ」
これといって言葉を返せない是清たちを見兼ねてか、ギャル系の彼女がそう口にした。
「舞花がそこの根暗に弱み握られてんのよ」
「──ッ……!?」
一同は驚き息を詰まらせる。
だが、すぐにみんな平然を取り戻し、それから第1に口を開いたのはチャラ男だった。
「あー、はいはいはいはい。そういうことね。やっと理解したわ」
「ったく、アンタは理解が遅いのよ」
「悪りぃ悪りぃ」
なんか話が進んでいるが、待ったをかけたいところではある。
(俺が弱みなんて握ってるはずねぇだろ……)
しかし心の中で呟いたところで誰にも伝わらない。
なんとかして誤解を解かねば。
本当は嫌だが、やらない選択肢は元よりない。
「お、おい──」
しかし、是清はその後を言葉にできなかった。
理由は単純。是清よりもずっと大きくて、綺麗な声がその空間に響き渡ったからだ。
「──高坂さんはそんな人じゃありませんッ!!」
誰の声か。考えるまでもなかった。
「姫路……」
是清は自分でも気づかぬうちに彼女の名前をこぼしていた。
その空間にいた生徒たちも一様に目を白黒させていた。
「え……? ま、舞花……?」
そして何より1番驚きが見て取れたのは桐生篝だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます