第46話 束の間の幸福

 それから3日が経った。

 是清は今はリア充らしく青春を謳歌おうかしていた。

 そのせいで顔が緩んでいたのか、弟の空太に「兄ちゃん、顔気持ち悪いよ」などとマジなトーンで言われる始末だ。そこは反省する。

 だが直るかどうかと言われれば、答えはノーだ。

 なぜなら──


「あっ、やりました! これで4勝です!」

「ぐぬぬ……強いな……」

「頭を使うのはわりと得意なんですよ、私」

「もう1戦だ」


 ──今日も今日とて、最高な1日だからだ。

 ちなみに今していたのはオセロ。ルールを覚えるのに1分とかからない素晴らしいゲームだ。

 こないだ舞花が、一時期ボードゲームをたしなんでいたという話をしてくれたので、今日は小さめのオセロ盤と駒を持って来た。

 是清も舞花も楽しんでいる。とは言え、今は全敗しているのでちょっと悔しかったりもする。

 そうして是清は次の負け戦に身を投じた。






「……じゃあこれで5勝です」

「勝てん……」

「高坂さんが最初から返し過ぎるからですよ。そのうちちゃんと教えてあげます」

「頼む」


 何気にまた会う約束を取り付けてしまった。


(いい! いいぞ! これぞリア充! 世の中の陰キャやぼっちには経験できないもの!)


 是清は心の中で歓喜を上げた。

 国民の何割かを敵に回した気がしたが、気のせいだろう。






 それからというもの舞花とは毎日何かをして遊んだ。

 楽しい時間はあっという間で是清自身驚きを隠せなかった。

 そして舞花と再会してから1週間。

 この日、是清は大きな選択を迫られることになる。

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