第45話 変態クラスメイト
舞花は漫画を側から見ても簡単に分かるレベルで楽しんでいた。が、舞花が半分ほど漫画を読み終えたところで、パタリと本を閉じた。
昼休みはまだ終わりではない。
とすれば、どうしたのだろうか。
「姫路?」
怪訝そうに是清は疑問を投げる。
すると舞花が視線を少し上に向けて、ゆっくりと唇を開いた。
「やっぱり高坂さんにはちゃんと事情を説明しないといけませんよね……」
半ば呟く形で出た言葉に是清は反応を示す。
「事情? なんのだ?」
「私がここに来たくても来れなかった理由です」
「…………」
是清は何も言わなかった。
(来たがってはいたんだな……)
代わりに声には出さずにそんなことを思った。
「聞いて……くれますか……?」
舞花の様子からそれなりに深刻な内容の話なのだと感じられた。
しかしそれでも舞花はどこか遠慮がちに見える。
舞花の性格だ。
きっと相談するのは迷惑なんじゃないかと心配しているのだ。
「もちろんだ。最後まで聞いてやるから、全部話してみ」
だから是清は優しく舞花が気負わないように答えた。
「……ありがとうございます」
礼を述べて、舞花は何があったのか話し始めた。
「こんな感じなのですが……」
舞花の話が終わった時、是清は自分でも気づかず口をポカンと開けていた。
「は……? それ本当に……?」
「は、はい」
舞花が首肯すると、沈黙が2人を覆った。
そして少ししてそれを破ったのは、是清の長いため息だった。
「はぁぁ…………。桐生の奴、どんだけ姫路を側に置いておきたいんだよ……」
そう。舞花がしばらくセーフエリアに顔を出さなかったのはそれが原因だ。どうやら是清のクラスメイトの桐生篝が、デートの次の日以降、ずっと舞花を監視下に置いていたのだとか。理由は舞花も分からないらしいが。
10分休憩も篝の視線は舞花に集中していたらしいし、昼休みは共に昼食を取っていたらしい。
加えて舞花がトイレなどの用で席を外した時も途中までついて行ったそうだ。
そこまで行くともはや変態の域だ。
ではなぜ舞花は今日来れたのか。
理由は単純。教師に1人で職員室に来るように呼び出されたからだ。
もちろん今の篝のことだ。
職員室前までついて行くと言い出した気もするが、そこは舞花が1人で呼び出された部分を強調して納得させたらしい。
結局舞花は職員室で用事を済ませた後、こっそりとセーフエリアに向かったということだ。
篝も案外ちょろい。
「それはともあれ、とりあえず姫路は1週間はここに来れるんだな?」
「はい! そうなんです!」
どうやら教師からの呼び出しは後1週間は続くとのこと。
なのでその帰りに毎日寄ってくれるのだとか。
(てゆうか、それにしても姫路の奴、嬉しそうだな……)
非常におこがましいことを思ったというのは是清も理解している。
だがそう思わずにはいられなかった。
だって本当に舞花が嬉しそうに見えたのだから。
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