第15話 許嫁という関係

 4月26日の金曜日。

 今の是清は世間一般で言う「ぼっち」という状態で音羽坂高校に向かっている。

 その途中の坂で舞花と篝が一緒に登校しているのが見えた。


(喧嘩したって聞いたけど、もう仲直りしたのか……?)


 許嫁同士の2人は毎朝一緒に登校している。

 先日喧嘩をしたと聞いたが、今日もそれは例外ではなかった。

 美人とイケメンというシンプルで最強のコンビ。


 音羽坂高校で彼らほどお似合いな2人がはたしているのだろうか?


 そんなことを考えながら、歩を早める。

 ギリギリ彼らの会話が聞こえる位置まで行くと、歩を緩め、彼らとほとんど同じ速度で歩く。


「話は変わるけどさ、舞花」

「なんですか、篝様?」

「こないだの書道のコンクールで優秀作品に選ばれたんだってね」

「はい」

「さすがだよ。やっぱり姫路家の娘は違う」

「…………ありがとうございます」


 うつむき加減で受け答えを繰り返す舞花。

 彼らのこんな日常的な会話を聞いて、改めて2人は浅くない間柄なのだと理解する。

 彼らの後ろにいる是清はその様子を黙って眺めていた。


(姫路って結構すごいんだな……)


 やがて坂を上り切って音羽坂高校に到着した。

 無駄な寄り道はせずに、真っ直ぐ教室に向かう。

 相変わらずそこは騒がしい場所だったが、是清はといえば、こちらも相変わらずぼっちを貫いていた。

 このクラスに話せる人間はほとんどいないし、是清と話したがる人間もほとんどいないので、目立たぬよう時間を潰した。

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