第14話 是清の気持ち
真百合が部屋を出て行ってから、1時間と少し。
まだ修正の余地はかなりあるが、それでも大まかなデートプランは完成した。
(なんだよ、これ。考えるの大変すぎるだろ……)
椅子に完全に背中を預けて、脱力し切った是清はプランを見直す。
そこに書かれている内容は王道もいいところなのだが、それでもよく考え切ったと是清は自負している。
はたしてこれが活躍することになるのか?
もしそうなれば、それは舞花の気に入る内容になっているか?
と、数々の疑問が次々と
時刻を確認すると夕飯の時間なのが分かった。
是清は椅子から立ち上がり、部屋を出ると、1階のリビングに向かった。
リビングの扉を開けると、母親が言っていた通りシチューの匂いが漂っていた。
「あ! 是清ちゃん! ちょうど呼びに行こうと思ってたところだよー!」
シチューの味見をした彼女が「よし」と言ってそれを食卓に運ぶ。
是清も皿を運ぶのを手伝い、あっという間に食卓には夕飯が並んだ。
「いただきます」
是清と真百合と空太と母親の4人で、同時に手を合わせる。
父親は仕事の都合で遅くなることが多々あり、今日もこの場にはいない。
各々用意された食事を美味しそうに食べる。
高坂家の夕飯はいつもこんな感じだ。
「ねぇ兄ちゃん。真百合が言っていたけど、好きな子出来たって本当?」
「──ごほっ! ……なっ!?」
咳き込み、
「な、なんだそれ? そんなことは言ってないぞ」
たしかにそれらしい話を真百合としたのは事実だが、一言も是清に好きな子がいるという話はしていない。
是清が否定の言葉を述べたが、それに驚きを示したのは真百合だった。
「え? そういう話じゃなかったの、おにーちゃん。てっきり遠回しに好きな人が出来たって言ってるんだと思ったのに」
真百合は変な
「なになに!? 是清ちゃん、好きな人出来たの!?」
「違うわ!」
勢いで否定した是清だが、実際はどうなのだろうか?
「どう」というのは舞花が好きな人にあたるのかどうかということだ。
考えていなかったが、言葉にされて初めてそれが疑問として形になる。
純粋な容姿だけで答えるなら「好き」と言っても差し支えない。
しかし是清でなくても多くの人がそう答えるはずだ。
誰から見ても、それほどまでに舞花の容姿は人を惹きつける。
だが好きという感情はそれだけに限らない。
是清は舞花の内面をまったくと言っていいほど知らない。
それなのに好きだというのは少し違う気がする。
所詮は恋愛経験ゼロの人間の考えることではあるのだが。
「そっかぁ。早くおにーちゃんの彼女さんを見てみたいな」
「うんうん」
「多分高校では出来ないぞ」
「そんなことないよー。是清ちゃん普通にかっこいいから」
かっこいいというのは圭成や篝のような人間のことを言うのだ。
それから話題が切り替わり、是清もいったん舞花について考えるのを中断した。
「……ごちそうさま」
真っ先に食べ終えた是清は自分の食器を運ぶと、部屋に戻った。
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