第12話 当日の予定
学校からの帰り道。
是清はにやけ顔を堂々と浮かべていた。
(これで俺もリア充の仲間入りだな。だってあんな可愛い子と休日デートの約束を取り付けたんだ)
と、そこでうかうかしてばかりもいられないことに気づく。
(……あ。どこに行くか決めてないな)
これは良くない。非常に良くない。
人生初のデート。失敗していいわけがない。
かと言って何か案があるのかと言えば、首を横に振らざるを得ない。
今日の今日まで恋愛とはほど遠い人間だったため、どうしたら良いのか分からない。
もしかしたら舞花が計画を立てているかもしれないが、それを期待するのは良くない。
是清も考えておくのが良いだろう。
(デートスポットって何があるんだ?)
まさか舞花の連れ出し方と同時並行で、そんなことも考えなければならないとは。
それに気づいてからの帰り道はずっと同じことを考えていた。
気がついた時にはすでに家の前にいて、驚きを隠せなかった。
電車に乗ったかの記憶すら曖昧だ。
どうやらデートについて考えていると、時間の進みがかなり早いらしい。
「ただいま」
その声に反応するように、母親が出迎えて来た。
「是清ちゃん。おかえり。何か良いことでもあったー?」
帰って来ていきなりこんな事を問われるなど、誰が予想できただろうか?
「なんで分かった!?」
「あ、当たった!? なんかそんな感じがしたからだよー!」
聞くだけで場の緊張感を持っていってしまうトーンで言葉が響く。
母親恐るべし。
「なになに? 彼女が出来たとか?」
「……っ」
言葉が詰まる。
だがすぐに平然を取り戻し、否定の言葉を述べる。
「違うわ」
そう。デートをするのは事実だが、彼氏彼女の関係ではないことを忘れてはならない。
なんなら向こうは許嫁という立場だ。
なので是清は嘘は言っていない。
改めて考えると変な話で、是清は別の男の許嫁の女の子と休日にデートをするのだ。
「そっか。そんな気がしたんだけど」
母親が残念そうな顔をする。
これが予想が外れたことに対してなのか、息子に彼女が出来ないことに対してなのかは定かではなかった。
とりあえず靴を脱いで、母親の横を通り、部屋に向かう。
是清の部屋は2階にあるので、階段を上るのだが、その途中で元気な母親の声が響いた。
「今日の夕飯はシチューだからね!」
「分かった」
これが実は意外と嬉しかったりする。
部屋の扉を開けて中に入ると、カバンを無雑作に投げ、制服を着崩す。
昔から長い間お世話になっている勉強机に向かい、紙にペンを走らせる。
ちなみに長い間お世話になっていると言った勉強机だが、本来の用途で使ったことは数えるほどだ。
今の是清はどこからどうみても勉強しているように見えるが、そんなことはない。
今はデートのプランを自分なりに一生懸命練っている。
完成が今から楽しみだ。
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