第8話 恥ずかしさ

 教室に戻ってからの是清と舞花は互いに知らぬふりを続ける赤の他人状態だった。そのため、教室の誰もさっきまで2人が一緒にいたことには気がつかない。

 それもあって、是清は相変わらずぼっちを貫いていた。


(うおぉぉぉ……恥ずかしい! なんであんなこと言ったんだ俺! 陰キャの俺があんなでしゃばった真似すんなよ!!)


 さっきのことを思い出して顔を熱くする。

 心底近くに人がいなくてよかったと思う是清。

 自分でもどうしてあんなことを言ったのか分からない。

 舞花はたしかに「誰も気づいてくれなかった」という言葉を口にしていた。そのため、舞花を救えるのは自分だけだと自惚うぬぼれていたのかもしれない。


(あの感じじゃ、一緒に出かけるのは無理そうだな)


 次に考えたのはそんなことだった。

 あの時、かなり強引な誘い方をしてしまい、返事は一言として返ってこなかった。


(本当に何やってんだ……)


 自分のしたことが悔やまれる。

 きっと舞花はもうセーフエリアには来ないだろうと思い、思考を切り替える。

 それと同時にチャイムが鳴って5時限目が始まった。

 いつも授業は面倒だと思っているが、今に限ってははありがたい。

 5時限目は真面目に授業に取り組んだ。

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