第5話 安全地帯でのこと
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◇
4時限目も無事に終わり、昼休みに突入した。
昼休みになるとまずはみんな昼食を取るのだが、弁当を持って来る者、外で何か買う者と様々いる。
是清は弁当の日もあれば、外で買う日もあり、一貫性のない昼食の取り方をする。ちなみに今日は購買でパンを購入した。
昼食の準備が出来たら次はどこで食べるかだが、多くの生徒は教室か中庭のどちらかを選ぶ。
しかし是清はそのどちらも違う。
1階の廊下には直接外に出れる場所が数ヶ所あり、そのうちの1つから内履きのまま出て行く。
迷わぬ足取りで歩を進め、角を曲がると、やがて物音の少ない空間に変わる。
校則でこのような時間に学校の敷地外に出るのは禁止というものがあるが、なんとここはギリギリ敷地内なのである。
ここが是清が昼食を取る定位置となっている。
どうでもいいが、是清はここを勝手に『セーフエリア』と呼んでいる。直訳すると『安全地帯』であり、まだセーフエリアの方がかっこいい。
誰もここに人が来ることを想定していなかったのだろうか、中庭などとは違いここにはベンチの1つも置いてない。
だがそれでも構わない。
ここには座って下さいと言わんばかりの綺麗な形の岩があるので、そこに腰かける。
実はそこは案外居心地が良く、座るのはもちろん、身体を大きく伸ばして寝ることもできるし、うまく使えば良い背もたれにもなる。
(やっぱこの場所すげーな……)
改めてセーフエリアの素晴らしさを実感した。
購入したパンを開封し、腹を満たす。
それと同時に隠し持っておいた漫画本を取り出す。
ここなら生徒も先生も来ない。
なのでそれを堂々と読める。
(校則違反とはバレた時に初めて意味を成すのであって、バレなければそれはしてないのと同じだからな)
そんな言い訳を自分にしながら、昼食の最後の1口を終える。
「……ごちそうさま」
1人だろうと、これはしっかり言っておく。
これで、あとは残りがまるまる本当の意味での自由時間になる。
まずは漫画を手に取る。
漫画にしおりを挟んでおいたので、そこから先を読み進める。
だが5分くらいで、それを読み終えてしまった。
元から終盤の方まで読み進めていた上、次巻を持ってくるのを忘れたので、することがなくなってしまった。
今は教室に戻りたくはないので、結局ここで時間を潰すしかない。
となれば、太陽の光を浴びながら、横になるのが1番だ。
(陰キャは太陽が苦手なんてよく言うが、あれって本当なのか?)
是清は陰キャという自覚はあるが、日光浴の大切さを理解しているので、太陽は別段嫌いでもない。
「よっと……」
体勢を変え、腕を枕にしてそこに頭を乗せる。
そのままゆっくりと目を閉じていく。
そして完全な暗闇になるその数瞬前。
「──あれ?」
是清は自分以外の人間の声で目を開けた。
身体をスッと起こし、声のした方向を向く。
そして見たのは1人の少女の姿。
是清の口から自然と言葉が漏れる。
「あんたは……転校生……」
そこには姫路舞花が立っていた。
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