都々逸まとめ

四賀 詠助

一~五十

ささくれだった指先触れてかけた苦労を思い知る


主が吐き出す紫煙を吸って肺も心も犯された


たった一夜も過ごしてくれぬ義理に惚れたが仇となる


惚れてくれなど今更言わぬに会ってくれさえしないのか


嫁へ行っても達者で暮らせほんにお前が好きだった


恋する横顔惚れたが最後きっとこっちを向きゃしない


鳴かず一人で身を焦がすより君が好きだと叫びたい


ずっとこのまま変わらぬものと思っていたのは私だけ


別れ惜しんだこの交差点共に歩ける嬉しさよ


主が選んだ二連の真珠今じゃ未練が首絞める


影の長さの分だけ離れ夕陽に向かって歩く帰路


主の好意を承知の上でわたしゃあの子に恋をする


貴方去っても寂しくないわ他の誰かで埋めるもの


想いニキビと恋の妙薬鼬ごっこの肌事情


恋は思案の外方のことよ道理投げ捨て逃避行


顔で笑って心で泣いて君の嫁入り祝う今日


きっと私が誰より先に君に恋したはずだった


君の好みに合わせてたのよホントはショートが好きなのよ


たった一言好きだと言えば何も言わぬが頷いた


永遠に共にと誓った仲だ道も半ばで別れまい


共に行くなら奈落の底も蓮の上も同然よ


不意に貴方の心に触れて瞬きする間に惹かれてた


好いたお主の腕に抱かれ明かす夜長の秋の月


右手荷物で塞いでおいて彷徨う左手君のため


知らぬ存ぜぬお前の心言わにゃ機嫌も分かるまい


君に貰った確かな愛が一人寝る夜を苦しめる


きみを想って詠む都々逸の十や二十できかぬわけ


春の夜空に広がる雲は薄く波打つ凪の海


耳を離れぬあの日の言葉きみの「ごめん」がリフレイン


眠るあなたの横顔眺め幸せ過ぎると涙する


息を吐くよに流れる嘘に気付きながらも身を任す


赤い半纏二人で羽織り寒い寒いと頬染める


積もり積もった千の都々逸万に一つも届かない


恋すりゃ綺麗になるのじゃないのニキビ胃痛に不正脈


どうせ泣くならこちらへおいで縋るお前がいじらしい


返事待ちつつ夜更かししたに返ってきたのは既読だけ


肌を裂くよな北風吹けば距離は縮まり裂けぬ仲


暑い夏でも肌寄せ寝たい二人溶け合う熱帯夜


先を行く君の背中を追いかけ二年共に行きたい三年目


風の噂で恋仲知って確かめ泣いてりゃ世話もない


君に届かぬ思いの端が電子の海に流れ出す


粋な都々逸詠ってみても心に響かにゃ意味がない


お主一人で逝かせはしまい死出の旅路も道連れよ


忘れないでなあなたのために泣いた女がいたことを


髪も切ったしピアスもあけた後はどうすりゃ付き合える


君を恋しく思う心を否定しないで君だけは


黙って身を引く愛もあろうにそれでも言わずにゃおれなんだ


響く遠雷吹く青田風眠る我が子は蚊帳の中


何処かで貴方が私の名前呼んだ気がした蝉時雨


首を左右につれないあの子お熱の私を振り回す

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