第4話
「ということで2組はお化け屋敷に決定しましたー」
クラスが大盛り上がりをみせる。もう既に文化祭のテンションだ。今から始まるというのに。
「んじゃ後でラインで役割一覧送っとくから希望決めといて」
アイツがそつなく回していく。ここまで決まったのもアイツのおかげと言っても過言ではない。というのも私はアイツの指示通りに黒板に書いたりするだけで、何もしていないからだ。初っ端に、げっと言ってしまったのは言い過ぎか、と心の中で詫びる。ただ、実際問題クラスの出し物決めや放課後の片づけなど面倒くさい方面へ傾いているのは事実なので前言を撤回するつもりはない。
委員会での仕事がなくてもクラスの出し物があることを完全に忘れていた。当日の仕事しかないと高を括っていた私はこの先のやることの多さにうんざりする。向こう数か月は仕事に追われるだろう。こういう時は部活に入っていればよかったと思うのだが、部活をやってたらより拘束時間が長いことを思い出して考えるのをやめる。
「準備って朝と放課後どっちやるの」
「あーどうしよっか。じゃあそれも投票にしとくからやっといて」
出来れば放課後に票が集まって欲しい。朝に弱いのでこれ以上早く学校に来るのはかなりの苦痛だ。そんな淡い期待はすぐに崩れ去った。アイツが作った投票は既に大多数の票が集まっていて、その半数が朝に仕事をするほうに入っていた。残りの人数ではひっくり返せそうもない。クラスメイトもそれを分かっているのか、どっちに入れるかではなく、どの仕事をするかの会話になっていた。
クラスが変わって一か月もたてば大体の雰囲気はつかめる。このクラスは結構行動派が多く、色んな行事に対して全力で取り組むのが良となっている
このクラスで、しかも実行委員で準備をボイコットするのは得策ではない。大勢が来るタイミングで行こうと女子のグループラインで聞く。
『皆何時にいく?』
『んー八時かな』
『私は七時半に行くよ!』
何時に来るべきなのかは皆知りたかったようですごい勢いで既読がつく。そのくせ返信は少ない。皆他の人に合わせるつもりのようだった。中心的な子達が教室で話しながら半ば決まりごとのような確認をラインで取る姿は至極滑稽だったが誰も何も気にしなかった。勝手に決めてくれた方が楽なのだ。私は彼女らの周りで適当にSNSを開きながら聞いていた。
彼女らは準備の時から楽しみにしていると思っていたが全員が全員そうではないらしく、早すぎるのは面倒くさいよねというのが半分、朝早く行くのがセイシュンっぽくて面白いよねというのが半分だった。
どちらにしても大真面目に準備をする気は毛頭ないらしい。あくまで大事なのはセイシュンっぽいことにどこまで時間をさけるかだった。早くしすぎては自分の身支度にかける時間が減ってしまう。そこの塩梅を間違えてはいけないのだ。
彼女らの会話は何時に行くべき、から身支度をどこまでやるのか、化粧はどうしているのかの話へ脱線している。自分たちが決めないと女子が何時に行くのか決まらないというのは気にも掛けない様子だ。
『そっち決まった?』
急に知らない相手からラインが届く。名前を確認するとアイツからで、そのまま友達登録をする。アイツとラインの交換をした記憶はないので、クラスラインから引っ張ってきたのだろう。
『まだ。男子は?』
『俺らは八時ちょっと前ぐらいかな』
男子は来る時間も大体の仕事も決まり暇そうにしていた。先生から与えられた50分と言う時間は思ったよりも長く、何かをやろうにも材料がないのでやることもない。やることがないから女子も急いで決めようとはせず適当な話をしているのだろうけど。
彼女らの話も面白くないし暇だったので前から気になっていたことをまた聞く。
『ねえ、あなたのセイシュンの定義って何なの?』
既読。
空白。
『今、しか出来ないことかな』
既読からの時間がとても長かったので、長文が来ると思っていた私は拍子抜けしてしまった。
返す言葉も思いつかずどうしようかと迷っていると、中心で化粧について話していた一人が男子に合わせて八時でいいのではという提案をしたのでそこに乗っかる。話が一つ進むとそこからはトントンで誰かが八時集合でもいいかと確認を取り異論がないことを確認して終わった。
すると丁度、先生が教室に戻ってきてホームルームが始まる。
八時五分前に付けばいいだろうと、その時間前後に行くと言っていた子に個別で連絡を取る。
アイツに対して既読無視の形になったことは他の人とのトークで埋もれると共に忘れてしまった。
これは青春じゃない Ley @Ley0421
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★10 エッセイ・ノンフィクション 連載中 3話
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