8 お互いさっきのあれは忘れましょう!

▪️


さて、やろうか…。

そう言った半透明な少女は、部屋の机の上に首だけが見えるように、自分を配置した。

お前を、驚かして、呪って…あははははっ。

ガチャ。

玄関に物音。

帰って来たか、──。

とた、とた、とた、とた。

階段を上っている。

さあ、もう少しだ。

らしさを見せるために、半透明な少女は少し気だるさを出した。

カチャ。

部屋のドアが開く。

さあ、驚け、──。

「…………」

………。

まあ、見えてないよね。

そして──は、そのまま服を脱いで着替えはじめた。

いや、待て。待て待て待て待て。いるから、私見てるから!女子の前で着替えるとかなんなの!

逆に、半透明な少女が驚かされた。

ええ、や、えええええ?

しかし、顔は背けず、しっかりとその体を見ていた。

綺麗な筋肉。へええ、結構鍛えてたんだ。

と、──はパンツにも手をかけた。

や!待って!それは、それ以上はダメ!

スっ。

ひゃあああああああああああぁぁぁ!

「うるせえ」

ああああああああぁぁぁ?…え?

「え?じゃねぇよ。うるせえ」

え?何?見えてんの?

「ん、机にハマってた時から見えてたな」

や、ハマってたわけじゃないし!驚かそうとしただけだし!

「驚かそうとするならもう少し怖くなれよ」

え?怖くなかった?


「…お前は、俺を驚かそうとするには少し、可愛すぎたな」


笑顔で──は言ってきた。

「お?幽霊ってのは照れるもんなんだな」

…もう、ばか。

半透明な少女は、涙を流して消えていった。


「俺が、そっちに行くまで待ってろよ」

あ、早くは来すぎないでね。

「成仏したんじゃないんかい」

や、もう少し遊びたいって言ったらOKもらった。

「あの世の制度ゆるゆるだな」

私は可愛いからいいの。

「さっきの感動を返せ」

お前は、俺を驚かそうとするには少し、可愛すぎたな…キラッ!

「さっきのお前の泣き顔ツイッターにあげよっかな」

お互いさっきのあれは忘れましょう!

「えー、どうしよっかなあ」


──と少女には、別れの言葉は必要なかった。




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