7 タイムカプセル
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小学生の時、私は──とタイムカプセルを埋めた。
二十歳になったら、このタイムカプセルを開けよう。
二人で約束をした。
そして今、そのタイムカプセルを開けようと、掘り起こしている。
「お前さ、どんだけ深く掘ったの?二時間くらい掘ってるけど出てこないよ」
当時馬鹿だった私は、そのタイムカプセルをめちゃくちゃ深く掘って埋めたのだ。
…たしか、三日くらいかけて掘った気がする。
「いや、あの時はほら、若かったというか?子供は風の子元気な子って言うじゃん?」
彼は、私のその言葉に少しふらつきながら、穴の中から出てきて休憩を所望した。
「あの時、何埋めたんだっけかな」
「え?覚えていないの?」
「十年以上前だからなあ。覚えていないよ」
「…私も何埋めたのか覚えていないんだよね」
「いいじゃん。掘り返した時、自分の黒歴史が分かるかもよ」
「私はそこまで馬鹿なことはやってません…多分」
私は小さな声で保険をかけた。
「さて、続き、やりますか」
「だね」
そう言ってまた、掘り返した一刺しに、金属音を聞いた。
「うん、あったな」
──と私は金属の箱をそこから取り出し、泥だらけなお互いの顔を見て笑った。
二人はそうして箱を開けずに、それぞれ何を入れたのか思い出した。
「開ける前にさ、俺、言いたいことあるんだよね」
──はそう言って、笑顔を作った。
「そう?私もあるよ」
そして二人は、同時に声を出す。
「「結婚しよう」」
開けられた箱の中には、手作りの、不格好な指輪が二対入っていた。
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