3 甘い卵焼き
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人間、誰しも気に入らないことの一つや二つくらいある。絶対にある。
そして私は今、旦那さんのことがとても気に入りません。
「…どうして、どうして」
「あの、──さん?」
そんなふるふると震えている私に、旦那さんはたじろいでいます。
そう、元凶であるこの旦那さんは、
「どうして今日の朝ごはん作っちゃったんですか!これは、私の仕事です!」
朝ごはんを作ってしまったのです。
いや、これは私が寝坊したのが悪いのですが、それでも許せません。
「だ、だって、──、昨日疲れてるって言ってたし、その…たまには、ゆっくりしてほしくて…」
なんて、嬉しいことを言ってくれていても、
「それでも、私の作った朝ごはんを、美味しく食べている旦那さんの笑顔を見るのを邪魔したのは有罪です!」
そこは譲れなかった。
「ご、ごめん」
しかし、それでも私のためを思ってくれた旦那さんを怒るのも、それは如何なものかと。
「…分かりました。それでは旦那さんには罰を与えます」
「罰?」
「旦那さんには、今日の晩御飯を一緒に作ってもらいます!」
「…へ?」
一体、どんな罰を予想していたのか、旦那さんの顔はほけっとしていた。
「そうすれば、キッチンでも一緒にいれますね!」
私の言葉に、旦那さんは柔らかい笑顔で応えた。
「…そうだね。今日は出来るだけ早く帰れるようにするよ」
身支度を整えて、旦那さんは仕事へ向かった。
──は、その姿を見送って一言。
「私より料理、上手だった」
そう言った──は、悔しくも、甘い卵焼きを忘れなかった。
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