2 父の日ありがとう
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「ただいま」
帰宅してから、父さんの所へ真っ直ぐ向かった。
「あのさ、父さん。これ、」
「帰りが遅いぞ──。どこかで遊び歩いているのか?お前ももう受験生なんだから、あまり遅くなるな。勉強をしなさい」
父さんはいつも通り、私を束縛したがった。
遅く帰ればどこか遊び歩いていると。
テストの点数がいまいちなら勉強しなさいと。
彼氏が出来れば見定めてやると。
なんだよ、少しくらい。完璧になれだなんて、私はお前の道具じゃない。
良い点取っても、部活で活躍しても、何をしても、褒めてくれない。
それが、当たり前であるかのように…。
「…分かった」
でも、私も家族内でいざこざを起こしたくはないし、平和に過ごしたい。言うことを聞いていれば怒られもしないのだから、ここは頷いておく。
不貞腐れながらも、それを悟らせない。階段を登って、自分の部屋に入り、ベッドに向かって思い切りカバンを投げた。
「…今日、一生懸命選んだのに、渡せなかったじゃん…バカ父さん」
そのまま──は、ベッドに入り、眠りについた。
一夜明け、朝起きると、机に手紙を見つけた。
【風呂に入って、着替えてから寝なさい。風邪ひかないようにな。】
「……」
誰のせいだと思っているんだと、──は、リビングに向かった。
「…おはよう」
「おはよう」
そこにはスーツに着替えた父さんが、静かに珈琲を飲んでいた。
「娘の部屋に勝手に入んなよ」
ひとつ文句を言った顔は穏やかだった。
「…」
何も言わずに父さんは席を立った。
リビングを出て玄関に向かう。
「…素直じゃあないね、父さんも」
──は、その後姿を見送って、学校へ行く準備をした。
制服を少し直して、カバンを持った。
「ネクタイ、似合ってたじゃん。父さん」
【──、父の日ありがとう】
謝ることはないけど、お礼を言ってくれる父さんのことが、私は好きだ。
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