Diary Life
ゆゆゆ
1 誕生日おめでとう
▪️
教室の片隅に独り。
私だけの席だ。
小学生の時からの友達も、先生も、誰も私に話しかけてくれなかった。
私が席を空けても、誰も座りたがらない。
…嫌われちゃったのかな?
いつも通りに窓の外のをながめる。
あ、あそこは私の家だ。お母さん、今頃ドラマとか見てるのかな。
窓の外から色んな場所を見ることが、いつからか楽しくなっていた。
いつも、独りだから。
あーあ、誰か話しかけてくれないかなあ。
ドアの空いた音がした。
見てみると、私の大好きな人、──がいた。
あ、来てくれた!待ってたよー?
私は彼に手を振って、ここだよとアピールした。
彼は少し笑顔が下手くそだ。どこかぎこちなくて、でも、そこが可愛らしい。
彼は私の席の前に座って、話しかける。
「よお、久しぶりだな」
そうだよぉ、全然来てくれないんだから。
「元気でやってるかな?」
お前程じゃないけど、元気!
「今日はさ、報告があってね。俺さ、お前との約束通り、野球選手になれたよ。夢、叶ったよ」
凄いじゃん!練習頑張ってたもんね!
「お前も、応援してくれたからかな」
私ここから動いてないし!適当言わないの。
「それでさ、今日は謝りに来たんだ」
いいよ許す!
「あの時、ごめんな。お前を助けてやれなくて」
いいっての!
「お前が、さ、む…りしてん、のに、気が付かなくて、気が…ついて、やれなくて」
泣かないの!せっかくイケメンなのに。台無しだよ?
「練習、なんて、そんな…言い訳ばっかりして、お、前を…放ったらか、しにして」
いいよ………いいよ、大丈夫。
「…よし!泣くのはやめだ!久しぶりにお前に会いに来たんだ!俺ももう二十歳すぎてるし、ここで酒でも飲むよ。なんたって大人だからな!」
あ、ずるい!私大人になれないのに!ふんっ!いいもん!持ってきたお菓子全部食べちゃうからね!
──は、涙を流して、笑いながら、見えない誰かと一緒に四月四日を楽しんだ。
「誕生日おめでとう」
誕生日おめでとう
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