第6話初めての告白

 俺がそんな宣言をすると、なぜかうちのクラスにいた麻里が俺の元へ寄ってきて肩を揺さぶり始めた。


「ねぇ悠人! あんたいきなり何言ってるの? 誰だか知らない人に急に告白なんて悠人らしくないよ!」

 

 なぜだか慌てた様子の麻里だが、俺はそんな麻里の手を払いのけるとごほんと咳払いをした。


「別に知らなくはない。むしろよく知っている。何ならお前の方がよく知ってると思うぞ」


「え……? それって」


 俺は戸惑っている麻里に、見せつけるように黒板を指差す。


「ほら、あれを見ろ。あの時の金髪の演奏者の名前だよ」


「え……うそ。本当に彼女だったの?」


「あぁ」


 どうやら麻里も佐藤リアムの名前には気づいていたらしい。麻里はまだ戸惑いを隠せていない。そんな麻里に俺は。


「まあとにかくもう決めたことだから。今日の放課後に決行する」


 そういうと、次はクラスの男子達が声をかけてきた。


「おい悠人、正気か?」


「あぁ、俺はいつでも正気だ」


「やめとけ! 釣り合わなすぎだろ。主に顔が」


「うるせえ。俺は普通の顔立ちだ」


「普通じゃ無理だろ! 悪いことは言わないからやめとけ!」


 次々と俺の告白を阻止しようとしてくる男子達に、俺は一言言ってやることにした。


「誰にも俺を止めることはできないんだよ」


 そんな少し痛いセリフを吐く。するとクラスメイトの男子達は、遠い目をして。


「こいつ……本物のおとこだな」


「あぁ、俺たちももう何も言わねえよ」


 なんて言ってきた。何なんだよ一体。別に何をしようが俺の勝手だろ。俺に彼女ができることがそんなに羨ましいの? なんてバカなやり取りをしていると。


「ほら、みんな席について。もう授業始まるからね」


 先生と佐藤が教室に戻ってきた。やべ、授業の準備とか何にもしてねぇ。

 てか高校三年生最初の登校日ぐらいは授業なしにしてくれよ! そんなことを思いながら、俺は鞄から最初の授業で使う教材を取り出した。

 それから昼休みが開けて、放課後になった。あれ? 一日って経つのが早くない?

 俺は佐藤に告白する機会をうかがっていたのだが、そんな機会は一向に訪れなかった。

 何なら男子と麻里にその機会を潰されていた。それが優しさなのか嫌がらせなのか知らないが、やめてほしい。

 しかも途中から「どうせ最初っから告白する気なんてなかったんだろ」とか言われ始めて開きられてきたし。

 何なんだそれ……。お前らが邪魔したからだろ! なんて他人のせいにするのは俺の悪い癖か。それに俺はまだ諦めていない。もう放課後になってしまったが、チャンスが来るのを待っている。

 そして今の俺は、職員室の少し離れた場所で職員室の方を観察している。佐藤は放課後になるとすぐに職員室に向かってしまった。だからそのあとならチャンスなのではと思い、今職員室から佐藤が出てくるのを待っているわけだ。俺はごくりと唾を飲み込んで佐藤が出てくるのを待っていると。


「おい変態」


「うびゃぁ」


 いきなり誰かに声をかけたれた。声のかけられた方向に顔を向けると、不機嫌そうな顔をした麻里が腕を組んで俺のことを見ていた。


「な、何だよ麻里か。いきなりおどかすなよ。あと俺は変態じゃない」


「いやいや、客観的に自分のことを見てみなさいよ。完全にストーカーよ」


 俺がストーカー? 何を行ってんだこいつ。今の俺は、好きな子に告白する機会をうかがっている思春期真っ盛りの男の子だろ。


「てか何でまだ学校にいんの? 先帰ってていいよってさっき言っただろ」


 俺は朝と同じように、しっしと麻里にどっかいけというが、麻里は嬉しそうな表情になり。


「馬鹿ね悠人。あんたが振られる様をこの目に焼き付けておくために、わざわざ残ってんのよ」


 なんてことを言ってきた。


「お前、何でそんなゴミみたいな性格しといてモテんの?」


「さぁ、可愛いからじゃない?」


 うざ。何だこいつ。何でこんなのが幼馴染なの? 幼馴染がメインヒロインの恋愛漫画とあるけど、幼馴染と恋愛とかありえないわ。


「もう頼むから帰ってくれ」


「いやよ。私がいようがいまいがどうせ振られるんだしいいでしょ!」


「決めつけるなよ。もしかしたらもしかするかもしれないだろ!」


「するわけないでしょ。そもそも悠人でオッケー出すような子なら、もうすでに彼氏ぐらいいるわよ!」


「あ、確かに」


 そういえば佐藤に彼氏がいるのかどうか知らない。あんだけ顔がいいんだ。居ても不思議じゃない。むしろ当然だ。

 やっぱやめようかな……。そんな気持ちになるが、俺は頬をパンと叩いて自分にかつを入れる。


「俺は誰に何と言われようと告白する。お前の悔しがる顔が目に浮かぶぜ」


「はぁ、どんだけポジティブなの?」


「うるさい。もうお前は帰ってくれ」


 俺はもう一度麻里を追い払おうとすると、職員室のドアが開き中から佐藤が出てきた。


「あの、ありがとうございました。それじゃあさようなら」


 佐藤は教師にぺこりと頭を下げると、職員室を後にしようとしていた。


「よし、今だ」


 この絶好のチャンスを逃すまいと、俺は佐藤の方へと歩みを進める。


「あのーちょっといい……ですか?」


 やべ、緊張して敬語になってしまった。告白なんて生まれて初めてだ。そりゃ緊張もする。声をかけられた佐藤はというと、「はい」と一つ返事だけをしてくれた。


「ちょっと聞きたいんだけど、この後時間ある?」


「え、まああるにはあるけど……」


 少し戸惑った表情の佐藤に俺は。


「じゃあちょっとついてきてもらってもいいかな?」


 そんな誘いをした。






















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